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 光の向こうに 〜ブラインドサッカー 07/06/30 (土) <前へ次へindexへ>

 ムード
 

 文/杵川希(キネカワ イツカ)
 4月に開幕した今季のブラインドサッカー・西日本フレンドリーカップ。開幕戦で京都プリティウェルに0−0のドローに押さえ込まれ、いかんともしがたい得点力不足と慢性的な選手不足による、選択の余地のない試合運びに悩んでいた王者大阪ダイバンズ。6月24日、いくつかの問題を抱えたまま、2節目の戦場へ向かった。

 むっとする重たい湿気た空気に出迎えられ、ダイバンズの選手達は会場となる福岡フットボールセンターの芝を踏んだ。綺麗な人工芝ではあるが、弱冠長めの芝は、彼らにいささか不安を与えた。一見すると優雅でやりやすそうなピッチだが、果たして人工芝がボールの音を十分に反射するのかどうか。不安はそれだけでなく、日々のコンビネーションや得点パターン、守備陣形、個人の確固たる役目がはっきりせず、それが最たる不安要素といえた。



 リーグ2節目、地元ラッキーストライカーズ福岡との1戦。ダイバンズは終始試合を支配し、圧倒的攻勢で試合を進めた。元来パスで崩すチームではない。守備者である主将山口選手のクリアや、GKのスローから一気に前線の選手が一人で持ち込んでゴールを狙うという形を貫いたダイバンズは、30本以上のシュートを放ちながらスコアを動かすことが出来なかった。

 0−0で迎えた後半終盤、相手DF二人に囲まれたダイバンズ10番落合選手が、ゴール右手前から左へ平行にドリブルで動く。対応に遅れたDFを一気にかわし、ポッカリと開いたゴール前フリーのチャンスに左足を一閃。ジャストミートで蹴りだされたボールが、唸りをあげてゴールへ向かう。好守を連発していた相手GKの右腕を越え、刹那、やきもきしていたダイバンズの、歓喜を溜め込んだ袋は、乾いた冷酷非情な音に握りつぶされた。クロスバーの鈍い金属音と共にゴール真下に落下したボールは、ラインをまたぐことなく、ピッチに跳ね返った。

 入らない。どうやってもゴールが遠かった。ホイッスルが鳴ってもスコアは0−0のまま。これでダイバンズは、福岡と共に2戦2引き分けとなり、京都に1−0で勝利した兵庫サムライスターズが勝点4で首位に立った。

 しかし、ダイバンズに悲観ムードはまるでなかった。2試合で得点0は王者にとって許しがたい結果である。だが選手は笑顔だった。エース井上選手の体調が依然回復せず、この日も欠場した頼れる男の姿がピッチから消えて以降、ダイバンズは明らかに停滞していた。閉塞感さえ感じるほどだった。だが、福岡のじめじめとした空に、そのモヤモヤを放り投げるような笑顔を見せた。



 キッカケさえあれば本当に強いチームは息を吹き返す。
 勝てなかったものの、ダイバンズ持ち前の陽気な連帯感を呼び覚ましたのは、会場の雰囲気だった。福岡大学サッカー部やアビスパ福岡ジュニアユースの選手達がボランティアとして大会をサポートしたが、その忠実な姿勢がダイバンズだけでなく、大会そのものを優しく包んだ。

 ボランティアという仕事に対して忠実であった、という側面はおおいにあるにしても、最初から最後まで、試合中のどよめきや拍手のボルテージが下がることはなかった。巧いプレーにも、ミスプレーにも、驚きと激励の感嘆符で、試合に参加した。

 変わらない空気に馴染んだのか、公式戦後に行ったエキシヴィジョンマッチの京都戦でのダイバンズは、かつての輝きを取り戻した。翌日に誕生日を控えた福本選手が、前半に10mほどのロングシュートを豪快に突き刺し、自らバースデイ"イヴ"ゴールを祝うと、攻撃参加した山口選手の絶妙なお膳立てから二点目、さらに後半にも右サイドから持ち込みハットトリックとなる三点目を決めた。負けじと落合選手も終、盤立て続けに2ゴールをあげ、ダイバンズは5−0で大勝した。



 失点の気配はないものの、ゴールが遠い。できるはずなのに出来ない。これまでのダイバンズなら癇癪を起こして空中分解の新たな火種を作ってもおかしくない試合であった。だがこの日だけは冷静だった。選手同士慰めることも、言い争うこともなく、緩やかに、穏やかに、かいた汗をふきふき、

 「次は絶対勝とうな!」。福岡戦で右小指の靭帯を断裂し、右足に肉離れを起こしながらも走り続けた落合選手をはじめ、皆、笑顔だった。

 「今日は、なんかおもろかった」。福本選手もつぶやいた。

 優勝は確かに遠のいた。しかし、梅雨時期の重たい空を吹き飛ばす爽快感で、彼らはいつもより、饒舌だった。


 2節目結果
 福岡0−0大阪
 京都0−1兵庫 (得点者:天川)
 エキシヴィジョンマッチ
 兵庫1−4福岡 (得点者:天川/森3、三原)
 大阪5−0京都 (得点者:福本3、落合2)

 2節終了時順位
 1位・兵庫(1勝1分け 勝点4)
 2位・大阪(2分け 勝点2)
 2位・福岡(2分け 勝点2)
 4位・京都(1分1敗 勝点1)
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