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 光の向こうに 〜ブラインドサッカー 07/08/24 (金) <前へ次へindexへ>

 課題と収穫
 

 取材・文/杵川希(キネカワ イツカ)
 気温8℃、乾燥したブラジル。ブラインドサッカー日本代表は南米で、結果ではなくプロセスに微笑んだ。

 7月28日〜8月8日、サンパウロでの第3回IBSA World Championships and Gamesに出場した日本代表は、参加したスペイン、アルゼンチン、ブラジルと戦い最下位に終わったものの、スペインからは歴史的初勝利をあげ、残りの2試合でも国際大会に対する堂々たる気概を見せた。1勝3敗(PK戦敗北含む)、1得点6失点の最下位。とはいえ、ねぎらいの言葉が最も似合う帰国となった。

 初戦となった開催国ブラジル戦。昨年11月の世界選手権では0−7と完膚なきまでに叩きのめされた相手との一戦。前半、冷静に気負わず戦った日本は強国相手に1失点に抑えた。田中智成選手がファーストシュートを放ち、山口修一選手を中心に粘り強く守った。世界選手権でMVPに輝いた超逸材リカルドの逞しさを増した肉体と、天井知らずのテクニックにも後半半ばまで十分に対応した。結局0−4の黒星だったが、日本代表の、さらに言えばブラインドサッカー選手の修正力と記憶力には、いまさらながら舌を巻く。

 得点力不足は依然解消されてはいないし、守備から攻撃への構築力もまだまだ。代表として過ごした時間も決して多くなく、明確な指針を提示して取り組む姿勢もさほど感じることがなかった。率直に言えば、あの頃とほとんど変わっていない。0−7からわずか9ヶ月。ブラジル代表相手に、なぜここまで日本代表は張り合えたのか。



 ひとつは、2年ぶりに代表復帰となった守護神・田中重雄選手や、強靭な体躯でボールを置くことのできる天川選手らが加わったこと。これまでの代表合宿に漂っていた、緊張感のない、いつ怪我をしてもおかしくないような緩い空気を彼らは戒めた。厳しい姿勢で代表と自分に向き合った彼らの一声で、代表の糸がピンと張った。

 もうひとつは、強豪国と戦うイメージを、ほとんどの選手が持っていたこと。
「去年のワールドカップは、全く白紙のまま(アルゼンチンへ)乗り込んでいった。相手の力量も、僕らがどれくらいのレベルなのかもわからなかったから、いろんな局面での1人ひとりの対応がその場しのぎで、でも結局は手遅れで、だから難しかった。でも今回は、その時の経験があった。0−7で大敗したブラジルとの対戦で、相手がどんなプレーをして、自分達がどう対応すればいいのかを勉強した。とにかくイメージができていた」
 今大会で日本代表唯一の得点を挙げた落合選手は振り返る。

 チームとしての修正力やポテンシャルかといわれれば、そうではない。個々人が同じレベルの緊張感や修正力を持っていて、同じ場面でそれを実行し発揮できたということなのだろう。

 2戦目のスペイン戦(1−0)も、さらなる自信を胸に、冷静に戦い、そして勝利した。3戦目のアルゼンチン戦(0−2)でも、世界選手権決勝戦で決勝点を挙げた相手のエースFWシルビオ・ヴェロ選手にほとんど仕事をさせなかった。攻めてもシュートがポストを直撃する好機もあった。ゴールにならなければ、勝たなければ、それはただの負け犬の遠吠えにすぎないのだろうが、直近の経験をすぐさま還元できた迅速な対応力という点で、日本人選手は勤勉さを証明したのかもしれない。



 その勤勉な日本代表を仕切る風祭監督の気持ちも、新たなステップに進んだようだ。以前から口をすっぱくして唱えていた、監督のスタンスとでも言うべき、「まず守備をしっかり。今のところ攻撃は二の次。とにかく負けないサッカーを」という言葉が、劇的に変化した。しかし、大会終了後、選手達に告げた新たなスタンスは、これまでと180度違うものだった。

「点を取る。ゴールが決まったらやっぱり楽しい。徐々に攻撃に比重を持っていく」
 目標をころころ変えるのは得策ではない。だが見方を変えれば、守備はOK、次のステップを踏む時だ、と納得できる。

 ボールの位置を把握する能力の鍛錬。
 トラップの正確性と寄せの速さ。
 ボールを足下に納める技術と相手の足下から奪う技術の向上。

 全ては課題から。
 これまでと同じ課題を、これからは違った感度で、以前よりも多角的に取り組んでいく。
 全ては悦びのため。
 2ヵ月後に迫った、アジア杯優勝のため。そして、来年の北京パラリンピックのため。
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