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 光の向こうに 〜ブラインドサッカー 07/10/17 (水) <前へ次へindexへ>

 闇に馳せる想い
 

 取材・文/杵川希(キネカワ イツカ)
 秋が深まり、すでに冬の足音が聞こえてきそうなほどひんやりとした空気の中、大阪ダイバンズの日本代表2選手、山口、落合の2選手が、最後となる月曜日の練習で汗を流した。大阪城公園の木々を揺らすこともなく、ただじっと腰を下ろした冷気の中、彼らは来週から始まる大一番を前に軽めの調整に従事した。

「もう、グダグダ言ってても仕方がない。とにかく戦って、勝ち取ってくるだけ」
 山口選手の言葉通り、練習は終始落ち着いた、和やかな雰囲気だった。来週21日の日曜日に日本を経ち、27日まで開催されるブラインドサッカーアジア大会へ向けた、最後の大阪城公園での練習。真っ暗闇の中、彼らはゆっくりと、そしてしっかりと2時間、汗を流した。

 アジア杯に優勝すれば、来年開催される北京パラリンピックの出場権を獲得することができる。彼らの狙いはそこにしかない。300回のボールタッチからはじまり、攻守に分かれた練習へと移行していく。昼とはわけが違い、ボールがほとんど見えない中で右往左往する晴眼者をよそに、彼らは淡々と調整に勤しむ。もはや当然のようにさえ感じるスムースなトラップとドリブル。澄んだ夜の空に響くボールの音とヴォイの声、そして笑い声。確実に近づくその日を前に、いかにも彼らは明るかった。



 2人の代表選手は、ブラインドサッカーを始めて今年で6年目。あらゆる国際試合での代表経験を持っている。それゆえの落ち着きか、百戦錬磨の体と心に隙がない。

 結局、代表のための練習、チームのための練習は皆無だった。練習のための練習ではなく、試合のための練習でもない。大事な日が迫った今でも、彼らには焦りも気負いもない。あるのはただひとつ。未来永劫、ブラインドサッカーが好きで、そこに立つ自分は常に上手くありたい、と願う気持ちだけ。黙々、の中に、ひしひし、を感じる最後の練習だった。

「優勝しかない。絶対(パラリンピックの切符を)掴んで帰ってくる」
 前回のアジア大会で優勝した日本はしかし、大会で日本のゴールを挙げた唯一の男、田村友一選手(FC.AVANZARE)が、クラブでの活動に専念したい、と今春代表引退を表明した。ゆえに浮上した決定力不足。選手の口からも、それは改善されたとは聞こえてこない。

 それでも、今月13日に行われた「東京FMブラインドサッカースペシャルマッチ」では、同じく日本代表FW田中智成選手が4ゴールを挙げる活躍を見せた。今はまだ、ゴールを決められる選手がゴールを狙い、ゴールを守れる選手がゴールを守るというレベルであるのは否めない。それもまた、ブラインドサッカーの魅力のひとつでもあるが、今はただ、勝ち取るという実績がすべて。

 彼らにしかできない、夜の闇の中の明るい練習。冬の足音が近づく、キンと張った平日の夜の空気。「勝つ」。それだけしかない、澄み切った闇の中の練習が終わった。


【アジア大会日本代表メンバー】
 FP天川 敬史(あまかわ けいじ)  兵庫サムライスターズ
 FP落合 啓士(おちあい ひろし)  大阪ダイバンズ
 FP加藤 健人(かとう けんと)  T.Wings
 FP佐々木 康裕(ささき やすひろ)  ハットトリック
 FP田中 智成(たなか ともなり)  たまハッサーズ
 FP鳥居 健人(とりい けんと)  F.C. Avanzare
 FP三原 健朗(みはら けんろう)  ラッキーストライカーズ福岡
 FP山口 修一(やまぐち しゅういち)  大阪ダイバンズ
 GK 浅間 光一(あさま こういち)  F.C. Avanzare
 GK 田中 重雄(たなか しげお)  兵庫サムライスターズ
 (FP=フィールドプレーヤー、GK=ゴールキーパー)
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