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 光の向こうに 〜ブラインドサッカー 08/01/22 (火) <前へ次へindexへ>

 清々しい敗北
 第6回ブラインドサッカー日本選手権

 取材・文/杵川希(キネカワ イツカ)
 1年前に乗せた肩の荷が下りた。そんな歓喜だった。
 兵庫サムライスターズGK田中重雄選手が、凛とした姿勢で悔しさを噛み殺す視線の先で、アヴァンツァーレの面々は抱き合った。グループリーグ2試合で1勝1分け。兵庫と勝ち点、得失点で並び、順位決定の延長PK戦でなんとか勝ち、首位通過をきめた。

 優勝候補最右翼と評価されながら、しかし、うれしい辛勝となった。PKに泣かされてきた過去を払拭することができた。昨年準決勝。たまハッサーズとの一戦もPK戦だった。残酷な敗北だった。大会規定として延長PK戦が正式に定められておらず、己の拳によるPK戦となり、敗れた。ジャンケンで敗北を味わった。



 悪夢を払拭して勝ちあがった準決勝。再びたまハッサーズとの対戦が待っていた。それでも、抗いきれない運命はしぶとかった。だが、残り香は心地よいものだった。

 モハメド・オマル・アブディン選手にCKから同じようなゴールを2度許し、前半0−2。雲が消えた青い冬空と同じ、青色のユニフォームを身にまとったアヴァンツァーレは、後半爆発した。

 前半と同じく田村竹晃選手を軸に守り、田村友一選手を軸に攻めた後半、打てども敗れなかったハッサーズゴールを攻略した。2点のリードで若干甘さが出たハッサーズ守備陣の中央で友一選手がボールを受ける。相手ゴールと相手選手を背中に背負い、左足をすばやく引いて反転。右足にミートしたボールが、音を立てる暇もなく風を切ってネットに突き刺さった。

 ひとつガッツポーズを見せた友一選手が自陣へそそくさと戻る。残り時間はわずか。たとえ去年の涙と同じ運命だとしても、追いつくことの意味はアヴァンツァーレの希望となった。

 そして終了間際。友一選手が猛然とドリブルでゴール中央へ攻め込む。3人がかりで止めに入ったハッサーズ守備陣の足が伸びてくる。なぎ払うように猛進し、あと一振りのところでボールが止まる。ゴールまで2m弱。ボールに当たる足が答えを導き出す。ハッサーズの足か、アヴァンツァーレの足か。ボールを探すハッサーズ守備陣。その間隙を突いて友一選手が確信に満ちた右足を振りぬく。

「あれは、もう経験でしかないと思う」
 ワールドカップ、アジア杯で日本人初の国際大会第1号ゴールを決めてきた友一選手の土壇場のゴールで、アヴァンツァーレは追いついた。



 ブラインドサッカーにおいて、3人制PKを全員が決めるということはかなり難しい。コースを狙ったシュートもゴールが小さければGKは守りやすい。パワーショットを打とうにも、止まったボールを蹴るのにさほどの助走もつけられない。
 アヴァンツァーレ1人目の渡辺選手が失敗。田村兄弟が2本決めるも、後攻ハッサーズ3人目の田中智成選手がゴール左下に決めた。

 涙はなかった。
「またPK・・・」
 その言葉に嘆きはなかった。もちろん悔しさはある。

「また、またもや優勝できなかった」
 友一選手が言う。二年連続準決勝PK負け。それでも、今大会のベストゲームを演じたアヴァンツァーレは、3位決定戦Twings戦を6−1で制し、有終の美を飾った。

 大会随一の大所帯、アヴァンツァーレの敗北は清々しく、それがさらなる広報的意味を持って存在価値を高めることだろう。次は3度目。乗り越える壁が何かも、乗り越える術も、はっきりしている。
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