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| 光の向こうに 〜ブラインドサッカー 08/01/22 (火) | <前へ|次へ|indexへ> |
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潮流 第6回ブラインドサッカー日本選手権 取材・文/杵川希(キネカワ イツカ) |
異論はないだろう。どこよりも勝負強く、なによりも団結力があり、誰よりも冷静で、しかし、それよりも熱い想いを持ったチームが優勝したのだから。
調布市・アミノバイタルフィールドで開催された第6回ブラインドサッカー日本選手権は、冬の冷たい雨と風の中、たまハッサーズが前人未到の連覇を遂げて幕を閉じた。
「腰が痛いよ。今朝(1月13日・大会二日目)2時間も鍼打ってたよ」
開会式で司会を務めた、たまハッサーズのスダン人FWモハメド・オマル・アブディン選手は、今大会の主役だった。打てば入る、そんな高いシュート成功率を誇り、抜きん出た存在感を放った彼の言葉からは報いの味がした。
昨年の同大会決勝。主審の判定に不満を募らせ、溜まりに溜まったフラストレーションが暴走した。サイドラインを覆うフェンスを蹴りつけ、それによって彼は退場処分を受けた。チームは優勝したものの、喜びきれなかった。さらに、去年は腰痛にも悩まされ、満足な練習もあまりできなかった。
「大会で最低限の仕事ができてよかった」
「全員で戦う」をスローガンに掲げてきたチームにおいて、出遅れたアブディン選手は、MVP級の活躍を見せ報いた。
「腰を治してくれた先生、先生を紹介してくれた親友に感謝している。ほんとうにほんとうにありがとう」
とはいえ、戦いは楽なものではなかった。
今大会の比類なきベストゲームとして語り継がれるであろう準決勝・アヴァンツァーレ戦。前半CKの流れからアブディン選手が鋭い反転と強烈な腰のひねりで二アサイドをぶち抜き2−0とハッサーズがリードする。
しかし後半、アヴァンツァーレの稀代のエースFW田村友一選手が激しく抵抗する。友一選手の弟・竹晃選手が後方でアブディンを抑えると、クリアボールをすかさず拾い反撃。どこからでもどんな体勢からでもゴールを狙う友一選手の柔軟性と執着心にアヴァンツァーレがリズムを掴む。そして後半半ば、ゴール中央でボールを受けた友一選手が、すばやい反転からゴールを決め2−1。
そして終了間際。ゴール前の混戦で不意にボールが止まる。ボールの音が消える。ハッサーズ選手がピンチを察知した瞬間、友一選手の右足がボールをネットに叩き込んだ。2−2。
もはや苦笑いさえ浮かばない。ハッサーズ対アヴァンツァーレの一戦は、2年連続準決勝の舞台でPK戦にまでもつれ込んだ。アブディンのストライドの大きな懐の深いドリブルも、田中智成選手の攻守ともにスピードで他を凌駕する俊敏性も、堅実で優れたゲーム構築力を持つ菅野選手も、負けん気の強い最後の番人DF新開選手も、皆、己の武器を証明し、最後の一蹴りに命運を託す。
先攻アヴァンツァーレの渡辺選手が失敗。後攻ハッサーズは新開選手が左下に決める。竹晃、友一の田村兄弟もきっちり決める。そしてアブディン選手もGKの左手を弾き飛ばしながらゴールを揺らす。そして最後の3人目、田中智成選手が、規則正しい呼吸とともに蹴りだしたボールが左下に突き刺さった。結末も、去年と同じだった。
FCハットトリックとの決勝戦。事実上の決勝戦を制したハッサーズは、のびのびとプレーした。前半こそ1−0と最少リードだったが、後半3ゴールをあげ4−0。開会式から閉会式まで、ハッサーズは一人ひとりが紛れもなく主役だった。
短期決戦では勢いが大切とよく言われるが、ハッサーズはまったくそのとおりだった。グループリーグ初戦の仙台ZUNDAクラブ戦。堅実で慎重なスタートだったものの、先制点を奪ってからは攻撃陣が火を噴いた。後半の追い込みもあり6−0の大勝スタートを切ると、2戦目の大阪ダイバンズ戦、残り時間1分、緊迫のスコアレスを打ち破ったアブディンの9mミドルで勝ちきり、グループ全勝で首位通過を決めた。
決勝トーナメントに入った2日目も勢いは持続され、準決勝・決勝を駆け抜けた。
「うちは全員で戦うチーム。自分の調子が悪くても誰かがやってくれる。そういう強い信頼が僕らにはある。だからどんなときでも気が楽でしたよ」
初の連覇というプレッシャーに打ち勝ったアブディン選手が振り返る。
今大会、ブラインドサッカーというスポーツに一つの潮流が生まれたように見えた。どの選手も、どのチームにも理想はある。しかし、行き着く先、或いは通過するポイントの一つに「パスサッカー」という言葉が出てくる。目は使わず、耳だけで繋ぐ音の生命線は、頭の中にゆるぎないイメージの血流を作る。フェンスからフェンスへ。パスが通るたびにため息が出るリズミカルなハッサーズスタイル。
理想的なバランスと感覚が創造するそのスタイルは、これから日本ブラインドサッカー界が追求すべき方向性となりそうだ。ハッサーズは連覇をもってワンマンになりがちなブラインドサッカーに一石を投じたといえる。
その証拠としての決勝戦だった。奪った4ゴールはすべて違う選手によるものだった。
【大会結果】 【大会表彰】 優勝 たまハッサーズ 7位 ラッキーストライカーズ福岡 MVP たまハッサーズ 田中智成選手 準優勝 F.C.ハットトリック 8位 ビヴァンツァーレ FC東京賞 アヴァンツァーレ 鳥居健人選手 3位 アヴァンツァーレ 9位 ウォーリアーズ 4位 Twings 10位 新潟コシヒカリーズ 5位 大阪ダイバンズ 11位 京都プリティウェル 6位 兵庫サムライスターズ 12位 仙台ZUNDAクラブ
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