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 サッカーのある風景 06/03/13 (月) <前へ次へindexへ>

 サッカーのある風景:ここから、はじめよう。


 文/竹井義彦
 雨が降りしきる中、私は横浜スタジアムのグラウンドに立っていた。
 傘は差しているもののベンチコートはぐっしょりと濡れていた。バインダーをベンチに置いておくわけにもいかず、脇に抱え、選手を交代するときには交代票を立ったまま書き、子どもに渡した。試合は押し気味に進んでいた。が、ちょっとしたミスを突かれて前後半それぞれ 1 点ずつ失ってしまった。

 ゴール前に迫るチャンスは何度もあったし、それこそボールに触れることさえできたらゴールを割っていただろうというシーンもあった。けれど結局、無得点のまま試合は終わってしまった。



 第31回横浜少年サッカー大会市長杯の準々決勝はこうして終わった。0−2 。ミスから失点するとここから先、勝ち上がっていくことはできないし、絶好のチャンスに得点を入れることができなければ、やはり勝つことはできない。それは小学5年生対象のこの大会でもいえることだった。

 今年になっても私は相変わらずで、子どもたちとサッカーをする時間がほとんど持てず、それでも子どもたちはここまで勝ち上がってきてくれた。その頑張りには、ただ頭が下がるだけ。私がコーチをしている子どもたちは5年生の公式戦を終え、4月になれば小学生としては最年長の6年生になる。子どもたちにとってはジュニアサッカー最後の年である。

 それぞれの子によって、もちろん目標は違うかもしれないが、最終学年として満足のいく1年にしてあげなければいけない。この日、雨に濡れながら私はそういう思いを新たにした。とはいえ、やはり忙しいことには変わりなく、さりとて子どもたちとの時間を削るわけにもいかず、頭を悩ませながらの1年になるのかもしれない。

 Jリーグが始まった。ドタバタが相変わらず続いている私にしてみれば、いつの間にか始まってしまった感じである。J2の結果を見ると、ヴェルディやレイソル、ヴィッセルといったいままで対戦することのなかったチーム名が並んでいる。よくよく考えてみれば、それまでJ1だった3チームがごっそりと降格、J2の上位3チームが昇格してしまったことになる。J1 と J2 の差が縮まった結果ならこんなに嬉しいことはない。本当に縮まったのか、それともたまたまこういう結果になったのか、今年1年その試合をじっくり見なければ答えは出ないのかもしれない。

 そういう意味でも、今年はJリーグの試合をきちんと見ていきたいと思う。去年は、まったくといっていいほど気にも留める余裕はなかったから。



 個人的なことで申し訳ないが、実は去年の6月からかなり責任の重い仕事を任されている。そのせいもあって自由に時間を使うことができなくなってしまったのだが、おまけに勉強する必要にも迫られ自分の時間をなかなか持つことができなくなっている。勉強といってもたいしたことをしているわけではない。いろいろなジャンルの本を読むことがそのほとんどだから、それはそれで楽しいといえる。そんな本の中に、ブラジルで驚異的な成長を遂げている企業の経営者が書いた本があった。リカルド・セムラーの書いた「奇跡の経営」だ。

 内容を詳しく紹介することがこのコラムの趣旨ではないので、簡単にまとめると、企業をマネージメントするのに、彼はいっさい管理をしないで成長させてきたというのだ。常識のある大人が働いているのだから、あれこれうるさくいう必要はない。当人に任せれば十分に働き、急成長という結果が出るという。

 どちらかというとすぐに影響を受けてしまう私は、この本を読みながらただただ感心するだけだったが、読み終わってしばらくしてから変なことに気がついてしまったのだ。同じブラジル人で、当人に任せっきりにしている責任者が、そういえばサッカー界にもいることを。

 そうなのだ。いや、そんなところが同じでも関係ないのかもしれない。企業のマネージメントと日本代表チームのマネージメントが同じ方法でできるはずはないかもしれない。が、その手法は不思議と一致している。実は、このことに気がついた私はかなり混乱してしまった。というか、いまだに混乱している。もしかしたら、日本代表の監督はとてもすごい方法でチームを導いているのかもしれない。そんな思いが浮かんでからというもの混乱したままでいるのだ。

 日本代表の試合が、相変わらず判で押したような試合であっても、やっていることはもちろん、その失点の仕方だったり、試合の展開だったり、なんとか最後の最後ロスタイムに追いついてしまうところまで、いつかどこかで見た光景であっても、もしかすると、ワールドカップの本大会ではとんでもない結果を出してくれるんじゃないのか、という思いが心のどこかに芽生えてしまったのだ。



 そのおかげで私はとても混乱している。
 実は、雨の中の横浜スタジアムでも、Jリーグの試合をテレビで見ているときも、混乱したままだったのだ。

 子どもたちとの接し方はもしかしたら別のアプローチの方がいいのかもしれない。プロの試合を見るときには、いままでとは別の角度から見る必要があるかもしれない。代表の試合はともかく本大会での戦いぶりを見るしかないのかもしれない。いままで、思ったこともない考えが頭の中で渦巻き、そのせいでとても混乱している。

 子どもたちのサッカーも、Jリーグのサッカーも、そして日本代表の試合も、まずはその中身をじっくりと見直すことからはじめる。この混乱を納めるために、そんな一年になりそうな気がしている。そしてこの一年が終われば、きちんとした回答が得られるかもしれない。もっともその前に、もっとサッカーと向き合う時間を作ることが私にとっては最重要課題であることに変わりはないんだが。
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