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 サッカーのある風景 07/04/18 (水) <前へ次へindexへ>
雨に煙る西が丘サッカー場。JRを利用するなら赤羽駅下車でバス利用。10〜15分間隔で運行しており、10分程度で突く。あるいは地下鉄三田線「本蓮沼」下車、出口A-1を出て右へ徒歩約10分。

 心の中にある二つの故郷
 アウェーゲームを追いかけてpart3 J2第8節 コンサドーレ札幌vs.アビスパ福岡

 文/中倉一志
 私が福岡と札幌の対戦を強い関心を抱いて見た初めての試合は、98年12月5日に室蘭で行われたJ1参入決定戦の最終試合だった。もっとも、この試合の結果がもたらすことの重要性は、私に限らず日本中の多くのサッカーファンの強い関心を集めていた。ただ、私にとっては試合の意味はもちろん、それ以外にも強い関心を寄せざるを得ない事情があった。思えば、この時ほど自分の故郷の意味を強く意識したことはなかったかもしれない。

 当時、私は東京でサラリーマンをしながら、サッカーサイトの取材・編集の手伝いをしていたが、福岡は、東区香椎御幸町で生まれて9歳までを過ごした私のルーツ。中学校から大学を卒業するまで過ごした札幌は、私を子どもから大人に育ててくれた町。福岡と札幌は私にとっては、いわば生みの親と育ての親の関係に当たる。自分の人生に強い影響を与えた二つの故郷が対戦する試合。何とも表現のしようがない気持でTV画面を見つめていたことを覚えている。

 とにかく、どちらにも落ちてほしくなかった。どっちのチャンスになっても喜べない。ゴールが決まっても、うれしいような気持と、同時に悲しいような気持がこみ上げてくる。試合の展開には、ハラハラ、ドキドキする。しかしプレーの結果について、喜んでいいのか、悔しがっていいのか、自分で判断ががつかない。こんな気持ちで試合を見たのは、あとにも先にも、この試合だけだ。福岡の地に骨をうずめる覚悟を決めてからは、私の優先順位は生みの親に傾いているが、今でも両チームの対戦には複雑な思いは消しきれない。



札幌から遠く離れた東京で行われた札幌のホームゲーム。しかも激しい雨が降るあいにくの天気。それでも熱心な札幌サポーターがゴール裏を埋め尽くした。
 両方の町に強く影響を受けている私に言わせれば、福岡の気質と札幌の気質は非常によく似ている。おおらかで人にやさしく、つまらない世間体を気にしない。垣根が低く、初めて訪れた人でもすぐに町に溶け込める。単身赴任者に最も人気がある町が福岡と札幌というのは、両方の町を知る私にとっては十二分に納得がいく。新しいものを受け入れながら自分たちの文化を作り上げてきた九州と、何もない北の大地を切り開いてきた北海道。何かを作り出してきた歴史が、互いの気質に共通点を作っているのかもしれない。

 ところが、似たもの同士の町をホームタウンに置きながら、今シーズンの福岡と札幌は対照的な顔を見せる。リスクを恐れずにボールをポゼッションして勝ち切るサッカーを目指す福岡と、徹底的にリスクを排除して負けないサッカーを志向する札幌。どちらが強いとか、弱いとか、あるいは正しいとかの話ではなく、J1復帰という同じ目標に対して、全く違うアプローチで臨む両チームが、どのような軌跡を描いてJ1の扉を開けるのかを考えると非常に興味深い。しつこいようだが複雑な気持ちはあるのだが・・・。



 そんな両チームの対戦は互いに自分の特徴をぶつけあう試合になった。最初の主導権は札幌。ボールを回そうとする福岡の最終ラインに中山元気がしつこくプレッシャーをかけてパスコースを限定し、雨に滑るピッチに苦しむ福岡のミスを誘って攻撃を仕掛ける。奪ったボールは両サイドか、前線へ。決して中央のエリアを使わないサッカーは、徹底してリスクを避けるという三浦俊也監督の強い意志が感じられる。ここまで3失点の理由がよく分かる。

 福岡の反撃は30分を過ぎてから。山形恭平とアレックスが前後のポジションチェンジを繰り返し、流動的にボールをつないでゴールを目指す。この日の福岡は、リンコン、林祐征をベンチスタートさせて4−6−0とも言える布陣で臨んだが、それはハイボールの競り合いからこぼれ球を拾いあうというサッカーを避けたかったから。スリッピーなピッチコンディションにもかかわらず、あくまでもボールを回して相手を崩そうとする姿に、自分たちのスタイルにこだわるリトバルスキー監督の意志を感じた。

 そして、いくつかのチャンスを福岡が逃すと、残り15分となってからは再び札幌が主導権を握る。攻撃のポイントを作ったのはスピード豊かにサイドを駆け上がる藤田征也。そして、交代出場の砂川誠が危険な香りを漂わす。前にボールを蹴り返すことしか出来なくなった福岡に勝ち目はなかった。ただ、一方的に攻めながらも札幌にも相手を崩し切るだけの力がなかった。激しい雨の中で行われた試合は、スコアレスドローで試合終了のホイッスルを聞いた。



福岡からも約100名ほどのサポーターが駆けつけた。数では負けたが熱い気持ちは少しも劣らず。90分間、選手たちの背中を後押しし続けた。
 矛盾するようで申し訳ないが、対照的だと書いた両チームにも実は共通点は多い。ひとつは、特定の個の力に頼らず組織で戦うことをベースにしていること。J1昇格を争うライバルチームを見ると、どのチームも攻撃的なポジションに1人で打開できる力を持った選手がいるが、この両チームに関しては、そこまで強い個を持った選手はいない。攻撃的か、守備的かの違いはあるが、両チームとも11人の高い連動性を戦うベースに置いている。

 そして、志向する戦術が正反対とも言えるほど対称的でありながら、両監督は何よりも大事なものにハードワークを挙げる。リトバルスキー監督の理論の基礎がドイツサッカーにあることは言わずもがなだが、三浦俊也監督もケルン大学でサッカー指導者としての教育を受けた監督。最後まで走り切る。限界までプレーする。とにかくハードワークに徹する。それは、ドイツサッカーの基本と言えるのかも知れない。それがゲルマン魂という言葉で象徴される数々のプレーを生んでいるのだろう。

 さて、率直に試合の感想を言えば、雨じゃないときにやりたかった。それは福岡に有利になるということではなく、外的な要因を極力排した中で互いのサッカーがぶつかり合う試合が見たいという純粋な気持ちからだ。全く違う特徴を持つチームが、自分たちの特長を生かすために、相手の特長を消す。そういうサッカーは、いたるところに駆け引きや伏線が存在し、90分間、目が離せない展開になることは間違いない。これほど面白いサッカーはないと思うからだ。ただし11年前の思いはしたくない。そんな思いをしないで済む方法はひとつしかないのだが、それを望んでいる自分がいる。
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