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| 福岡通信 06/02/28 (火) | <前へ|次へ|indexへ> |
| 開幕を待つ博多の森球技場。福岡は5年ぶりにJ1の舞台で戦う |
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新たな心と変わらぬ思い 取材・文/中倉一志 |
サッカーというスポーツを追いかけている者に、シーズンオフなどという言葉は無縁だ。Jリーグが終われば天皇杯、全日本女子、高校選手権、大学選手権と各カテゴリーのチャンピオンを決定する大会が目白押し。1月中旬になって、ようやくお雑煮にありつけたかと思ったら、各クラブが自主トレ、一次キャンプと活動を開始する。そして2月は本格的なキャンプ。気がついたら、あっという間に2月も下旬。そして今週末には、いよいよ2006年シーズンが始まる。
慌てて航空会社と旅行代理店のウェブサイトを睨めながら、試合スケジュールに沿って遠征の手配を進めていく。「早く、安く、便利」が取材旅行の条件。あちこちネットサーフィンしながら、条件に合う行程を探し出す。ただ行って帰ってくるだけではもったいない。前後の日程や、他のカテゴリーのスケジュールを確認しながら、一度のフライトで複数の試合が見られるルートを探していく。これが結構面倒くさい。しかし、サッカー好きにはたまらない作業でもある。
ひと通り手配を終えたら、今度は部屋の片付けが待っている。福岡のJ1昇格記念本や、イヤーブックの作成のために積み上げられた資料や、昨年の公式記録、そしてパソコンに保管されているインタビューや記者会見の音声データを整理する。試合毎に見れば、それほど多くの資料はないのだが、それも1年も重なればそれなりの量になる。どうにも捨てるのがもったいないような気がしてくるのだが、心を鬼にして必要なもの以外はゴミ箱へ放り込む。
そして最後はデーバックの中身の整理。試合開場では意外といろんなものが必要になる。ティッシュペーパーだったり、ビニール袋だったり。埃まみれの記者席を拭くための雑巾も、冬場を凌ぐ簡易カイロも必要だ。それらが入ったデーバックの中身を改めて確認し、季節に必要なものだけを詰め替える。元来ものぐさに私は、とにかく何でもデーバックに詰め込んでしまう。その結果、私のバックは「何でも入っている」と言われるのだが、裏を返せば雑然としているということ。きれいに整頓することで新たな気持ちが沸いてくる。
さて、ひと通り準備が出来たところで、今シーズンへのいろんな思いが浮かんでくる。やれるという自信。そしてまだ見ぬ相手への不安。それぞれの思いが胸の中に浮かんでは消える。それを繰り返すうちに、もともと楽観的な性格をしている私は、なんだかやれるような気分になってくる。勝利の喜びに浸る選手にインタビューしている自分の姿や、TVで福岡の健闘を語るアナウンサーの姿が頭に浮かぶ。何事もイメージトレーニングが肝要。成功をイメージすることは悪いことじゃない。
宮崎キャンプを取材する報道陣。関心も高まりつつある。
しかし、それにしても全てが上手く行くわけじゃない。まして最高峰のステージは誰にとっても厳しい舞台。たとえ、一流の選手と呼ばれていようと、わずかな隙を見せれば平凡な選手に成り下がる。常に向上心を持って臨むものだけが生きていける世界がJ1だ。ひとつのことが出来れば、その上を。それが出来れば更に上を目指すのが勝負の世界。たとえ今の出来が良くても、それは単なる途中経過。それが何かを保障してくれるわけではない。
何事においてもそうだが、神様というのは実に平等なものだ。自分が積み重ねたきたものに応じた結果を必ずプレゼントしてくれる。それは自分の力以下でも、以上でもない。運が悪く見える結果は自分の積み重ねが足りなかったことによるもの。運が良く見える結果も、それは人知れず努力を積み重ねてきた証だ。精一杯の準備をしてきたのなら、不安やおごりを捨てて、ただ自分の力の全てを発揮することだけに集中すればいい。後はサッカーの神様の審判を待つだけだ。
そう考えれば、必要以上の期待も、いらぬ不安も消えていく。「相手にかかわらず、ひとつの試合を取れば勝つこともあれば負けることもある。サッカーとはそういうことが起こるスポーツ。次の試合がどういう結果になっても、それで全てが決まるわけではない。しかし、1年間を通せば正直な結果が出る」。昨年、松田監督がよく口にした言葉だ。「結果は決まっている」とも。それは運命に委ねるということではなく、結果を出すだけの努力を積み重ねてきたからこそ言える言葉だ。
さて、肝心な福岡の仕上がり具合だが、キャンプからここまで順調に推移していると見ていいだろう。ディシプリンに基づいた組織的なサッカーは健在。昨年の終盤に見せた集大成のサッカーが、いつでも発揮できるチームになっている。サポーターにとっては、J1でどこまで通用するかが一番の関心ごとだろうが、J2上位だったチームは、トレーニングを通してJ1のチームに様変わりしている。「別のチームといってもいいくらい」(千代反田充)。選手たちもその手応えを感じている。
C大阪とのTMにやって来た福岡サポ。当日は福岡からのツアーバス2台で乗り付けた。
それは2月18日に行われた名古屋とのトレーニングマッチでも明らかだった。主力を欠く名古屋に対して90分間に渡ってゲームを支配。前半の終盤は相手に合わせてしまう時間帯もあったが、ハーフタイムに「今のチーム力の差をつけるゲームをしろ」との松田浩監督の檄を受けたイレブンは再び高い位置からプレッシャーをかけてゲームの支配権を掌握。51分に先制点を挙げると、着々とゴールを重ねて4−1で名古屋を一蹴した。
チームが志向している全員守備・全員攻撃のサッカーがJ1でも通用する手応えが得られた試合だった。しかし、「これくらいの相手なら、このくらいのゲームをしなければおかしい」と松田監督は冷静に試合を振り返る。本番の舞台での戦いはトレーニングマッチとは別物。各クラブはスピードと個の力を前面に打ち出すサッカーで押し込んでくるからだ。そんなサッカーに慌てずに対処すること。1試合でも早くスピードに慣れること。これが序盤戦の鍵になるだろう。
ところで、ここまでチームが成長したのは意識の変化によるところが大きい。新戦力として加わったベテラン選手の経験。激しくなったポジション争い。そして、J1戦士になったという自覚。これらが有機的に作用してチームがひと回り大きくなった。特に布部陽功の存在は大きい。技術・戦術面での貢献はもちろん、サッカーに対する真摯な姿勢はいたるところで選手たちの模範になっている。
その布部は次のように話す。「福岡はJ1で必ず戦えるチーム。ただチームはいいときもあれば、悪いときもある。悪くなったときこそ、我慢してチームが一丸となることが大事。何が起こるか分からないが、とにかく自分たちがやっていることを続けること。そしてとにかく負けないこと。そういう試合を続けていければ、それが自信になって結果もついてくる」。福岡が新たな一歩を踏み出すJ1のステージは簡単にはいかない。しかし、臆することなく、我慢を続ければ必ず結果はついてくる。
トヨタスポーツセンターに集まった名古屋サポ。福岡のサッカーは、どのように移ったのだろうか
現段階では、潤沢な資金を使って豊富な戦力を抱えるビッグクラブと比較すれば、個々の選手の間に力の差があることは否定できない。しかし、戦い方はある。「基本的には、相手に考えるスペースと時間を与えないこと。サッカーは1人では出来ない。ディシプリンをアドバンテージにしたい」(松田監督)。足りない部分は総力戦でカバーする。それは選手たちだけではない。フロント、サポーター、メディア、福岡にかかわる全ての人たちが一丸となることで強豪と伍して戦うことが出来る。
簡単な戦いではない。昨年までのようにゲームを支配して進めることは少なくなる。ストレスがたまる試合も増えることだろう。しかし、目標を見失わずに戦いたい。チームの目標はJ1定着。そして3年後、5年後に優勝を狙えるチーム作りをすることだ。目の前の試合に勝利することは最優先。しかし、一喜一憂せずに結果を受け止めて、そして次の試合も全力で戦うことを1年間続けたい。それが出来たチームだけがリーグ戦で結果を得る。
布部が語るように、今年のキーワードは「我慢」と「一丸となって戦うこと」。福岡にかかわる全ての人が、このキーワードの元に戦うことが出来るかどうかで福岡の将来が決まる。新たな気持ちと、どんなときでも一丸となる変わらぬ心。それを持ってリーグ戦に臨むことが求められている。サッカーの神様に福岡にかかわる全ての人が試される1年間。それも望むところ。熱い気持ちで新たなステージにチャレンジしよう。
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