topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 福岡通信 06/03/05 (日) <前へ次へindexへ>

 さあ、Jリーグ!!
 

 取材・文/中倉一志
 14年目のJリーグが開幕した。ゼロックス・スーパーカップと同一カードになったG大阪と浦和レッズのJ1開幕戦は1−1のドローに。6試合が行われたJ2では、初参加の愛媛FCが記念すべき初勝利を挙げた。また、東京Vは3−1で徳島を下したものの、神戸は草津に敗戦、柏は湘南に引き分けと、降格チームは改めてJ2の難しさを知らされることになった。どうやら、J2は今年も混戦模様の気配が漂っている。そして、われらが福岡は、3月5日にエコパで磐田相手に2006年のスタートを切る。

 ところで、最近、雁の巣レクリェーションセンターへ練習取材に行くと、「J1に昇格するとはこういうことなんだな」と、つくづく感じさせられる。今週は水曜日から地元メディアが勢ぞろい。練習場に通いつめて監督や選手たちの声を拾っていく。開幕前とはいえ、この4年間で、連日に渡って、ほとんどのメディアが通い詰めるというのは経験したことがない。やはりJ1というのはそういう場所。メディアの期待や注目度が昨年とは全く違う。

 若干の違和感を感じながらも、クラブにとっては非常に喜ばしいことには違いない。選手でも、クラブ関係者でもないのに思わず顔がほころぶ。昨年の第37節の九州ダービーが20000人を越えたことから分かるように、マスメディアの影響は非常に大きい。開幕をアウェイで迎えなければならないのは残念だが、積極的に露出してくれるマスメディアのおかげで、福岡に対する関心も高まるというもの。まだまだ発展途上のクラブにとって、市民の関心が高まることは願ってもないことだ。

 そんな中で、チームは高い緊張感を維持して準備を重ねてきた。その緊張感は、ただの一度も途切れることなく、高い集中力を伴い、そして、チームは日を追うごとに成長してきた。J1で戦う喜びと誇り。そして注目されることで選手たちは確実に大きくなった。「環境は人を育てる」とは、まさにこのことだろう。それでいて、気負いや、うぬぼれのようなものは少しも感じ取れない。あくまで謙虚に、そして真摯に。チームがいい状態にあることは間違いない。



 水曜日に行われた紅白戦では控え組は3−4−1−2の布陣。開幕戦の相手である磐田を意識してのことだ。主力組の布陣は、もちろん4−4−2。宮崎キャンプ初日から顔を連ねる不動の11人がピッチの上に散らばる。「3年間を通して、ずっとやってきたことがある。それを持って戦いたい」(松田浩監督)。もちろん、福岡の武器はディシプリンに支えられた全員守備・全員攻撃の組織サッカー。その連携は高まっているように見える。

 誤算というか、期待通りに行かなかった部分といえば、ポストプレーヤーがピッチの上からいなくなったことだろう。しかし、それでもチームは微修正を施して攻撃の形を組み立て、紅白戦でも狙いとする展開からチャンスを作り出した。鍵は3バックの外側にあるスペースを有効活用すること。まあ、このサイトを磐田関係者が見ているとは思えないが、具体的には開幕戦を見てのお楽しみということにしておこう。

 守備についても、やり方はこれまでと同じ。サイドで数的優位を保って対応することでクロスを上げさせず、高い位置からプレッシャーをかけてパスコースを限定して中盤で絡めとる。組織的な守備の完成度は攻撃のそれを上回っており、チームとしての守備はJ1の舞台でも通用しそうだ。ただし、わずかなミスをついて点を取ってくるのがJ1のチーム。特に磐田には、そういうしたたかさがある。隙を見せずに90分間メンタル面でのバランスを保つことが、ひとつの鍵になるだろう。

 キャンプ中の怪我の回復状態が心配されていた久藤は、ここへ来て急ピッチでコンディションを上げてきている。紅白戦では積極的に動き回り、味のあるラストパスを繰り出すシーンも多く見られた。本来の調子と比べれば物足りなさは残るが、磐田戦にはそれなりに仕上げてくるはずだ。好調を維持する宮崎が先発の座を獲得するのか、それとも背番号10がピッチの上に立つのかは、ギリギリまで分からない。



「開幕戦のポイントはやるべきことをやること」とは松田監督。そして続ける。「我々の敵は自分たち。必要以上にプレッシャーを感じることなく、逆にいい気になることもなく、ディシプリンを持って戦うことが大事。ディシプリンを持ってやれば十分に戦える」。そして布部も同じことを口にした。「磐田はいいチーム。けれど相手云々じゃない。自分たちのやってきたことを、しっかりとやることが一番大事。やり続けることで必ず結果がついてくる。逆に、変に色気を出したのしたら足元をすくわれる」

 また、「しっかりと準備して、自分たちがやって来たサッカーを試合で出すことが大事。それだけを考えて準備したい」とは千代反田。金曜日に行われた戦術確認のトレーニングの後には監督とDF陣で円陣を組み、積極的に意見を交わしながら3トップ気味の相手に対する守備の仕方の確認を行っていた。力が上のチームに先に失点してしまっては試合は、苦しくなるばかり。まずは無失点に抑えてチームに安定感を与えること。その役割は去年までと変わらない。

 そして、開幕戦を前にしても選手たちの平常心は変わっていない。誰もが「開幕戦が楽しみ」と口にするように、特別な思いがあることは間違いない。しかし、試合に対する準備は今までと何も変わらない。「いつもと同じ開幕。きちんと準備しなくてはいけないことを、いつものように準備している」(松田監督)。程よい緊張感と、リラックスした雰囲気と、新しい舞台にチャレンジする意気込みが上手くミックスされているようだ。

 それでもJ1の舞台を勝ち抜くことは容易なことではない。年間50億とも言われる運営費をつぎ込んでチーム強化を図るビッグクラブ。多くの日本代表選手を有するクラブ。そして数々のタイトルを獲得したクラブ。強敵は多く、簡単に倒せる相手など、どこを見渡してもいない。しかし、だからといって手も足も出ない相手もいない。新たな気持ちで、全てをぶつけてチャレンジできれば活路は見出せるはずだ。



 さて、正直に言えば、J1昇格が決まった瞬間は喜びよりも安堵感の方が大きく、同時にJ1で戦うことの厳しさに不安も感じていた。現在も、抱えている課題の全てが解決したわけではない。福岡はシーズン中も走りながら解決していかなければいけないことも多い。しかし、足りないものを数えて不安がっていても解決にはつながらない。いまできることに精一杯取り組むことが進むべき道。どんなときにも前を向いて誇りを持って戦いたい。選手たちの姿を見ていて、いつの間にかそう感じる自分がいた。

 チームは戦いを続けていく中で様々な経験を積んでいく。同じように、アウェイで、ホームで、他のクラブの応援に触れることで、サポーターはいろんなことを感じるはずだ。そして自分自身も、一流のメディアが揃うJ1の舞台で取材を続けることで、力不足を思い知らされることだろう。そんなひとつ、ひとつの経験を真正面から受け止めて自分も変わらなくちゃいけない。そう考えたら「厳しい、厳しい」とばかり言っている暇がないことに気がついた。

 いつも言うように、チームの力は、フロント、サポーター、メディア、そして福岡にかかわる全ての人たちの力の総和。レベルアップを図らなければいけないのはチームだけではなく、私たち自身も同じことが求められている。自分の行動を通して自分に足りない何かを見つけ、それを自分に出来る方法で解決していくこと。それが福岡というクラブがJ1で戦うにふさわしいクラブになることへとつながっていく。まずは40試合、全力を挙げてチームを追いかけようと思う。

「福岡の代表として恥じない戦いをして、勝って福岡に帰って来たいと思う」。開幕戦への意気込みを問われて、田中佑昌はそう答えた。バスツアーで、飛行機でエコパに乗り込むサポーターも同じ気持ちで声を上げるだろう。自分自信も福岡のメディアの一員として、同じ気持ちで取材をしたいと思う。そして、堂々とみんなと一緒に福岡へ戻りたい。3月5日14:00。5年前に止まっていた福岡の時計が動き出す。それは、我々自身にとっても新たなチャレンジのスタートになる。
<前へ次へindexへ>
topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink