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| 福岡通信 06/03/16 (木) | <前へ|次へ|indexへ> |
| 5年ぶりのJ1を迎えた博多の森。サポーターの気合いが入る |
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「我慢と継続」、そして「謙虚さと自信」 取材・文/中倉一志 |
選手の頑張り。それを後押しするサポーターの声援。自然発生的に湧き上がった手拍子。そして最後までゴールを求めて戦った姿。3月11日の大宮戦は、ホーム開幕戦にふさわしい試合だった。ほとんど相手にチャンスを与えず、試合の大部分を制して戦った試合は、見方を変えれば勝ち点2を落とした試合とも言えるが、開幕戦に引き続き、自分たちのサッカーがJ1で通用することを示したという意味では、十分に手応えを感じられる内容だった。
オーガナイズされた守備組織をベースに戦う両チームの対戦は「我慢比べ」というのが戦前の予想だった。にらみ合いのような展開の中で、どちらがわずかな隙を素早く突けるか。そして得点機会が多くないことが予想される中で、いかにセットプレーを生かせるか。それが勝負のポイントだと思われた。ところが、試合は立ち上がりから全く予想に反した展開を見せる。出足鋭く前に出る福岡が一方的に大宮を押し込む形で試合を進めたのだ。
組織の熟成度の違いは誰の目にも明らかだった。素早いプレスと球際の強さを見せる福岡は、中盤を完全に制圧。前線ではスペースへ抜け出す田中と、巧みなポジショニングで楔のボールを受ける薮田が起点を作り、そこから両サイドへボールを配って前へ出る。ボールに寄せてくる大宮を簡単にかわすサイドチェンジも効果的だ。対する大宮はボールの出しどころを見つけられず、やむなく縦へロングボールを蹴りだすだけ。これでは一方的な展開になるのも当然だった。
そして先制点は9分。スローインのボールを受けた薮田がためを作ると、左サイドを駆け上がってきたアレックスへ。その勢いのままに相手DFを抜き去ったアレックスの左足が炸裂。次の瞬間、大宮のゴールネットが大きく揺れた。17分には田中佑昌が危険なタックルを受けて負傷退場するというアクシデントに見舞われたが、代わりに入った川島眞也が遜色ない動きを見せてペースを渡さない。流れの中からチャンスを作り出し、決定機の数は3回を数えた。惜しむらくは、この時間帯に追加点を奪えなかったことだろう。
後半に入るとメンバーを入れ替えた大宮が前へ。ディビットソン・純マーカスの豊富な運動量と、小林大吾、小林慶行、桜井直人のパスワークで左サイドから攻め込んでくる場面が増える。しかし、福岡は粘り強い守備でシュートを打たせず。そしてカウンターで追加点を狙う。71分にCKから土屋征夫に同点ゴールを決められたが、これは個の強さと高さを生かした大宮のゴール。選手たちは責められない。このヘディングシュートは大宮が放った初めてのシュートらしいシュート。それでもゴールが生まれてしまうのがサッカーなのだが・・・。
会場を待ちきれないサポーターの列。公園の入り口近くまで続いた
福岡が逞しさを見せたのはここからだった。失点にも素早く気持ちを切り替えた福岡は、再び前に出てゲームを支配した。32分には川島。34分にはアレックス。そして36分には再び川島が決定的なシュートを放つ。42分、そしてロスタイムには前がかりになったところで相手に決定機を作られたが、ここはGK水谷雄一がスーパープレーを連発、ゴールを許さない。結局試合は1−1のままで終えたが、終了直前までスタジアムが一体となって攻め続けた姿勢は生まれ変わった福岡の姿を改めて示すのに十分なものだった。
この試合でMVP級の働きを見せたのはグラウシオの代役で登場した薮田。高い位置から中盤まで精力的に動き回って攻守にわたってチームに貢献した。ひたむきにボールを追いかける姿はチームメイトに勇気を与え、サポーターをゲームに引き込んだ。もともと足元の技術の高い選手だが、それ以上に、サッカーとはボールに対する気持ちの強さが局面を打開する一番の武器であることを身をもって示した。それがあるからこそ30歳をすぎてもJリーグに生き残っていられるのだろう。
そして布部の存在も欠かせない。かつて布部は、読売ヴェルディ(元東京V)で、あり余る才能を持った同世代の仲間たちに囲まれてプロのキャリアをスタートさせた。しかし、その仲間たちはすでにJリーグにはいない。布部が生き残ってこれたのは、サッカーに対する真摯な姿勢があったからこそだ。そして福岡のピンチを救った水谷。桜井との1対1を止めたプレーは、明らかにシュートコースとタイミングを見計らって狙って止めに行っていた。24時間をサッカーのためだけに使い、あらゆる努力を続けてきた成果だった。
福岡はシーズン前のトレーニングキャンプで、調整不足であったり、主力メンバーを欠いたチームに対しては、自分たちのやりたいサッカーを存分に見せ付けて勝ちを収めてきた。果たして、その力が公式戦という本番の舞台でどこまで通用するのかが最大の関心事であったわけだが、この2試合で、その力が本番でも十分に通用すること、そして一桁の順位を狙えるだけの可能性を持ったチームであることを示した。
スタジアムの外ではストリートミュージシャンによる演奏も行われた
その反面、そんな中での2連続引き分けは、まだ越えなければならない壁があることも示している。局面だけを切り取れば、決定力不足や、セットプレー時のマークの徹底ということになるのだろうが、課題はその局面のみにあるのではない。大宮戦の同点ゴールは相手のプレーに軍配が上がるとはいえ、森田浩史が途中出場した際にマークの変更が徹底できていなかったことも遠因としてある。特定の誰かではなく、チーム全体としての課題。それをどこまで突き詰められるかが鍵だ。
おそらく、この2戦のような試合が今シーズンは続く。越えられそうで越えられない壁。ほんのわずかのように見えて、実は最後の一歩を踏み出すのに大きな力が必要な壁。しかし、乗り越えてしまえば視界は大きく広がる。その最後の壁を乗り切ることが今シーズンの最大の課題だ。それは簡単ではない。しかし、自分たちのやってきたことを信じ、謙虚な姿勢を持ってやり続ければ、必ず壁を乗り越えられる日がやってくる。
「選手の集中力や頑張りが、こういう展開を可能にしている。そういうものをベースとして戦う上で持ち続けたい。ただし、この2試合の気持ちを忘れたら全部無くなる」。大宮戦後の記者会見で、松田監督はそう語った。そして雁の巣の練習場では「今までやってきたことをやり続けるしかない。やり続けることで結果は出る」とも。「我慢と継続」「謙虚さと自信」が今シーズンの福岡のキーワードになる。
さて今週末(3月18日)、福岡はアウェイで千葉と対戦する。名将イビチャ・オシムのもとで4年目を迎えた千葉は、昨年のナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。今シーズンはリーグタイトルを狙っている。開幕戦では点の取り合いの末に敗れ、前節では10人の相手に2点のリードが守りきれずに引き分けるなど、チーム状態は良くないが、だからこそ気を引き締めて臨まなければならない相手と言える。
千葉と言えば、マンマークと他を圧倒する走力が武器。90分間を通して労を惜しまない運動量でピッチの上を走り回ることで強豪チームと伍してきた。その戦い方は福岡相手であっても変わらないだろう。そんな相手との対戦を前に「パス回しが生命線。それが出来ればマンマークの相手を思うままに動かせる」と松田監督はポイントを話す。いつものようにシンブルに、少ないタッチでボールを回せばスペースは生まれる。そこに福岡が攻め込むチャンスがある。
選手たちは、今週もいい緊張感を持って調整を進めている。前節欠場したグラウシオの回復状況は順調。薮田も変わらぬ好調を維持し、川島もトレーニングを重ねる毎にFWらしさを増している。また水曜日に行われた紅白戦の後半には久藤がレギュラー組でプレー、随所に味のあるプレーを見せた。好調を維持していた田中佑昌の戦線離脱は痛いが、それは全員の力でカバーすればいい。今の福岡にはそれだけの力がある。
それでも試合は簡単なものではない。相手との力関係云々ではなく、それがJ1という舞台。どんなチームであっても押し込む時間帯もあれば、必ず押し込まれる時間帯もある。その凌ぎ合いを制して2点目を挙げることが勝利するための条件だ。もちろん、今回も総力戦。フロント、現場スタッフ、選手、はるばるアウェイのスタジアムに足を運ぶサポーターで一丸となって戦いたい。そして記者席からも熱い心を届けたい。それが福岡のスタイルだ。全員の手で勝ち点3を取って博多の森に帰ること。それを誰もが望んでいる。
※このたびプログを始めることにしました。題して「フットボールな日々」。サッカーだけにこだわらず、日々、感じたことを思いつくままにつづっています。よろしければ、アクセスしてください。
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