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| 福岡通信 06/03/25 (土) | <前へ|次へ|indexへ> |
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博多の男なら気持ちを見せろ 取材・文/中倉一志 |
第4節の名古屋戦、キックオフのホイッスルが鳴ってすぐに「いつもと違うな」と記者席でつぶやいた。それぐらい、福岡の状態は悪かった。中2日で試合をしなければいけない影響からなのか、怪我のために主力メンバーの多くが欠けていたからなのか、明らかに動き出しが悪い。いつもの素早い出足のブレスは見られず、連携も不十分。平凡なパスミスを繰り返す。ロングボールを多用する名古屋に対し、セカンドボールは拾うのだが、そこから簡単に蹴りだしてボールを不用意に失うシーンが目立つ。
対する名古屋も出来は良くない。福岡の中盤でのプレッシャーを避けるために、ロングボールを放り込むサッカーに徹しているが、セカンドボールを拾えず、パスミスを繰り返し、互いの連携もなく、こちらもゲームが作れない。互いに低調なパフォーマンスで進む試合は大きな見せ場もないままに時間だけが進んでいく。劇的な変化が訪れない限り、ゴールは生まれそうになかった。
この試合の最初で最後のゴールが生まれたのは35分。福岡のペナルティエリア内に送られた浮き球のパスを追いかけた千代反田充と豊田陽平がもつれるように倒れると、後方から走ってきた主審がホイッスルを鳴らしてペナルティスポットを指差した。「相手には触っていない」。相手よりも先に体を入れてボールを支配下に収めた千代反田にとっては納得出来るはずもない。しかし、たとえどんな判定であっても主審が下した決定は覆らない。
1点をリードした名古屋は8人で守ってカウンターを狙う形に変更。そして福岡は強引に攻めに出る。45分に山形に代えて吉村を投入してアレックスを最前線へ。63分、宮本に代えて林。3トップ気味の布陣に変更する。75分には宮崎を下げて松下。最終ラインを千代反田、金古、松下の3人にして全員で攻撃に出た。しかし守りに徹した相手を崩すのは簡単なことではない。前半と比較すればボールは動くようになり、一方的に攻め込んだが、結局、最後までゴールネットを揺らせず。福岡は今シーズン初黒星を喫した。
過去3試合、J1のチームと堂々と渡り合っただけではなく、十分に戦えることを示していた福岡だったが、この日はまるで別のチーム。「ディシプリンの全く感じられない試合」(松田浩監督・福岡)。チームの最大にして唯一の武器である「ディシプリン」に裏打ちされた組織サッカーを披露することなく敗れた。福岡は個の強い選手を持たないチーム。チームのベースである組織力を失ったら戦えないことを改めて示した試合だった。
過去の3試合についても同じような傾向があったとも言える。確かに90分間を通せば主導権を握る時間は相手を上回り、その結果、いずれも先制点を奪った。しかし、どの試合も判を押したように危険な時間帯にセットプレーから失点を喫して引き分けた。サッカーとはたった一つのプレーで勝敗が左右されてしまうスポーツだが、同じことが3回続いたということは、それはサッカーの神様の気まぐれではない。修正すべき問題点が内包されていることを示している。
ここまでの試合を見る限り、対戦相手はどのチームも組織という点では未完成のチームだった。それでも、少ないチャンスを得点に結びつける強さのようなものがあった。ある意味では、それがJ1とも言える。どのチームも最後は個の強さの勝負。そこが、過去4年間、福岡が戦ってきたJ2とは大きく異なる点だ。そんな舞台に「組織」という武器で戦いを挑む福岡。結果を残すためには、その完成度を上げ、組織で個を封じ込むしかない。
目指す方向も、やっていることも間違っていないことはここまでの試合でも明らかだ。しかし、90分間を通してみれば、ディシプリンに欠く時間帯やプレーがあり、失点はそういうところが起因となって生まれている。過去3試合と、名古屋戦は違ったように見えても、それは曖昧な時間が多いか少ないかの違いでしかないのかもしれない。4試合で払った授業料は、そういうことを改めて我々に教えてくれるために必要だったのだろう。ならば、次の試合でその教訓を生かしたい。
そして、チームにかかわる全ての人たちが自分自身を振り返って、「一丸となる」という意味を再確認したい。チームというものは現場スタッフと選手たちだけで力が決まるわけではない。チームにかかわる全ての人たちの、それぞれが担う責任の達成度合いによって力が決まる。自分自身の責任は何か。その責任を果たせているのか。今やらなければいけないことは何か。それぞれの人が、それぞれのレベルで見つめなおすことが必要だ。
例えばチーム。ベテラン勢の加入と競争の激化でトップチームは緊張感のあるチームに仕上がったが、サテライトとの間に温度差があることは否定できない。福岡がJ1に定着するためには総力戦が大前提。いつ出場機会が回って来てもいいように、誰もが高い緊張感の中でトレーニングを積むことが求められている。全員が先発メンバーと同じ気持ちで準備をし、同じ気持ちで試合当日を迎えること。それが一丸となることだ。
例えばフロント。今シーズンのホームゲームの入場者数は、ほぼ昨年と同じ。ここまではJ1昇格効果を全く生かせていない。今年の目標は全試合を2万人の観衆で埋めること。その観衆の後押しを受けて「ホームでは負けない」という物語を作ることだ。フロントレベルで掲げた目標を必ず成し遂げること。それも現場と一丸となって戦うということだ。加えて、現場と協力しながらチーム状態を万全にすることもフロントの仕事のひとつだ。
例えばサポーター。ピッチの上の選手たちと、それを後押しするサポーターとが一体化することで、チームは大きな力を発揮する。スタンド全体から湧き上がる選手たちを後押しする声援ほど、ホームチームの力になるものはなく、アウェイチームにとって脅威になるものはない。そのために自分に何が出来るのか。それぞれが、それぞれの方法で取り組むことが必要だ。そのひとつ、ひとつが積み重なってチームに大きな力を与えるはずだ。
さて第5節、福岡は小瀬スポーツ公園陸上競技上で甲府と対戦する。J2時代のライバルとして、ともに戦い、ともに昇格した相手の後塵を拝するわけにはいかない。これまでの試合同様、厳しい戦いになることが予想されるが、相手の時間帯をしのぎ、自分たちの時間帯を確実にものにすることで勝利を手にしたい。それは単なる勝ち点3ではなく、これからのリーグ戦にも勢いを与えてくれるはずだ。
お互いに手の内は知り尽くしている。それでも甲府は、J2時代と同様に自分たちの攻撃サッカーを全面に押し出して戦うはずだ。こちらも臆することなく真正面からぶつかりたい。ややリトリートした体制で守備組織を整え、鋭いプレッシャーで相手の自由を奪い、切り替えの早いカウンターを仕掛けてゴールを目指す。そして苦しい時間帯は、全員の力を合わせて甲府の攻撃を跳ね返す。そんな自分たちのサッカーが出来れば、結果はおのずと付いてくる。
福岡にも、甲府にもけが人が多く、互いにベストメンバーは組めない状況にある。そんな中で、リアクションではなく、自分たちのサッカーを能動的に行うこと。それがこの試合の大きなポイントになるだろう。どんなときでもそうだが、敵は相手ではなく自分たちの中にいる。それを再認識させられた名古屋戦の教訓を生かしたい。そして、遠い福岡で待つサポーターのためにも、勝ち点3をお土産にして博多の森に帰りたい。
「このチームはJ1で十分に戦えるチーム。けれど、勝ち抜くためには我慢が必要。サッカーは何が起こるかわからない。苦しいときに我慢して、全員が一丸となって戦うことが大切」。シーズン前、布部陽功が常に口にしていた言葉だ。その言葉通り、苦しい状況に直面しているいまこそ、一丸となって前へ歩いて行く時だ。「博多の男なら気持ちを見せろ。恐れるものはない。さあ行こうぜ」。そう歌いながら前へ進もう。そして勝ち点3を手に入れよう。
※このたびプログを始めることにしました。題して「フットボールな日々」。サッカーだけにこだわらず、日々、感じたことを思いつくままにつづっています。よろしければ、アクセスしてください。
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