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 福岡通信 06/04/08 (土) <前へ次へindexへ>

 博多の森に迎える大一番。恐れるものは何もない
 

 取材・文/中倉一志
「我慢と継続」。その言葉を自らに言い聞かせる日々が続いている。想定外とも言える多いけが人。それにもめげずにバランスの取れた組織サッカーで試合の主導権を握っても、結果が付いてこない。次節はアレックスの出場停止に加え、開幕以来、CBのポジションを守ってきた金古に疲れが見え始めた。一体、サッカーの神様はどこまで試練を与えるつもりなのだろうと愚痴がこぼれそうにもなる。しかし、これも乗り越えなければならない壁。現状を受け止めて自らの力で跳ね返すしかない。

 チーム状況は悪くはない。「けが人に関してはしょうがない。出ている選手と、出られるチャンスを得た選手たちで勝っていかなければいけない」(千代反田充)。選手たちの前向きな姿勢は変わらず、トレーニングにはキャンプ中からの程よい緊張感が維持されている。ここまで6試合、結果が出ない中でも精一杯のパフォーマンスが発揮できているのは、そうした日々の積み重ねがあるからこそだろう。

 しかし、にも拘らず結果が出ないというのは何かが足りないということだ。「ただ続けていくだけじゃ駄目。突き詰めて、気持ちを持ってしっかりとやること」(千代反田)。自分たちのサッカーはほぼ出来ている。足りないのはほんの少しの勇気と、ほんの少しの注意深さ。それは、サッカーにより真摯に向き合うことで手に入れることが出来る。サッカーの神様から足りないと言われているのなら手に入れるだけのことだ。

 そのためには、それぞれの人が、それぞれの立場でやれることを精一杯突き詰めるしかない。フロントは選手たちが力を最大限に発揮できるような舞台を整えること。強化部門はチームが最大の結果を得られるように常に戦う材料を揃えること。サポーターはありったけの思いをチームに伝え、メディアは総力をあげてチームの成長を後押しすること。いつも言っていることだが、それが一丸となるということ。言い換えれば、福岡にかかわる人たちが本当の意味で一丸となれるかどうかが、いま問われている。



 さて第7節、福岡は博多の森に浦和レッズを迎える。浦和は、2003年にチーム史上初タイトルとなるナビスコカップを獲得して以来、全ての大会でベスト4以上の結果を残し、常に優勝争いを演じている言わずと知れた強豪チームだ。昨年は天皇杯を制し、今年は2年連続で2位に甘んじたリーグ戦のタイトル獲得に照準を合わせている。メンバーの大部分が代表、あるいは五輪代表経験者という豪華な顔ぶれは他に類を見ない。おそらく、現時点では最も強いチームだろう。

「強いけれども肝心なところで取りこぼす」。失礼を承知で言えば、去年までの浦和にはそんなイメージがあった。しかし、フェイエノールトから小野を復帰させ、東京V1969からワシントンを獲得した布陣は迫力を増し、過去のイメージを払拭しつつあるように見える。小野伸二、ポンテ、長谷部誠らが縦のポジションチェンジを頻繁に行って攻撃を組み立て、左右からは、山田暢久、三都主が積極的にオーバーラップを仕掛けてくる。その攻撃は迫力満点だ。

 攻撃的なタレントが多いことから攻撃面が注目を集めているが、守備の安定度も高い。ここまでの失点4はリーグ1位。高い位置からの厳しいマンマークで相手の自由を奪い、中盤の底では、鈴木啓太がいぶし銀のプレーで相手のチャンスの芽を摘み取っていく。スピードのある坪井慶介、熱いプレーが信条の田中マルクス闘莉王、昨年からレギュラーに定着した堀之内聖の3人で守る最終ラインにも大きな穴はない。

 総合力という観点から見れば浦和に軍配が上がる。しかし、サッカーはそれで勝負が決まるわけではない。どんな対戦であっても、結局は局面での勝負で上回ったチーム、相手よりも速く、多く動いたチーム、そして勝利への欲求が上回ったチームが勝ち点3を掴む。福岡は押し込まれる時間帯が多くなることが予想されるが、自ら守勢に回れば、そのまま倒される。たとえ押し込まれても前へ出る勇気を持ち続けることが勝利を手繰り寄せる鍵だ。



 そんな浦和との対戦を控えて、今週のトレーニングでは、福岡はメンバーと布陣を変えて勝利の道を探っている。浦和対策というよりは、現在の戦力を最も効果的に生かす方法を模索してのことだが、狙いは得点力アップにある。水曜日に行われた紅白戦では、攻め上がりが非常にスムーズに、かつ攻撃が厚くなった印象を受けた。詳細については敢えて秘すが、田中佑昌のスピード、薮田光教の経験、そして、本来の力を取り戻しつつある久藤清一が最も生きるための布陣と言えるだろう。

 浦和対策というよりは、勝利への鍵は自分たちのサッカーを、より高いレベルで発揮できるかどうかということになるだろう。「緩みのないディシプリンで、きちんとした守備が出来るかがポイント。1対1にさせず、ボールに対応する守備をして、1人に対して複数で行く形を作って、そこからカウンターを狙いたい」(松田浩監督)。個の強さの勝負に持ち込まれたら勝ち目はない。しかし、組織サッカーを展開すれば十分に勝機はある。

「一番強いチームとの対戦。技術はもちろん、体力的にも強いチーム。誰というわけではなく、どこも注意しなければいけない相手。難しい試合になるが、その中にもチャンスはある。しっかりとやりたい」とは千代反田。そして続ける。「ここで結果が出ればいい流れが来る。そういうチャンス。我慢することも多くなるが、我慢するところは我慢して、みんなで頑張りたい」。難しい相手との戦いも、逆を言えば最大のチャンス。衰えぬチャレンジ精神でぶつかりたい。

 そして、けが人の代わりにチャンスが回ってきた選手たちにも奮起を期待したい。林祐征の起用はチームの勢いを止めないための起用ではなく、チームに勢いをつけるための起用。ここのところ調子を上げている有光亮太の投入は得点を奪うための投入。ピッチに立つ以上、彼らの役割は代役ではなく純粋な戦力として計算されてのものだ。そして結果を残すことは、自らのレギュラー獲得とチームの勝利につながる。いまやらなければ、やるときはない。



 この原稿を書いている時点で、totoの「福岡勝利」への投票率は僅かに4.77%。浦和への投票率が高いのは予想通りとはいえ、あまりにも低い数字だ。また、あるメディアでは、あたかも福岡がファール覚悟のダーティな試合をしていることを連想させるような記事を掲載している。全てはここまでの結果や、5年前のイメージによって作られたものだろうが、そのイメージを変えるには自らの手で結果を出すしかない。

 また、試合当日は埼玉から大挙してやってくる浦和サポーターによって、ゴール裏、そしてアウェイ側スタンドが赤く染まる。そして、あの野太い声援を博多の森に響かせることだろう。しかし、博多の森は福岡の庭。あの激しい応援に敬意は表するが、だからといって負けるわけにはいかない。福岡はいつものように、いつもの場所で熱い声援が送られるはずだが、その輪を広げてスタンド全体で浦和を迎え撃ちたい。それもこの試合に勝利するポイントのひとつだ。

 そして全てをかけて、この試合を闘いたい。J2に降格し、更に断崖絶壁に立たされてから、福岡は目の前の試合だけに集中して戦うというスタイルでJ1の舞台に帰ってきた。スーパーな選手はいない。サポーターの数は他のJ1のチームに比べれば決して多くはない。フロントの力も強くはない。しかし、紆余曲折を経ながら、全ての力を合わせることで厳しい戦いを勝ち抜いてきた。それはJ1の舞台で結果を出すためのもの。だからこそ、この試合も変わらぬスタイルを貫きたい。

 難しい試合は90分間が終わるまで決着は付かない。福岡の思ったような試合展開にならないことがあっても、それも想定内の出来事だ。いずれにせよ、サッカーは試合終了の笛が鳴るまで何が起こるかわからない。最後まで気を緩めることなく、最後まで諦めることなく闘いたい。「首位の浦和相手。恐れるものは何もない。全力でぶち当たって勝ちたい」(松田監督)。満員の博多の森で勝利の雄叫びを上げられることを信じて。
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