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| 福岡通信 06/04/14 (金) | <前へ|次へ|indexへ> |
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悔しさは勝利で晴らせ 取材・文/中倉一志 |
それぞれの人に心に残る1戦というものがある。古くはJFL時代にJリーグ昇格を決めた試合。J1参入決定戦での試合の数々。J1残留のために敢えて敗戦を選んだ試合。涙の万博記念公園陸上競技場。雨の中の入れ替え戦。J1復帰を決めた試合。5年ぶりに博多の森にJ1のリーグ戦を迎えた日。それぞれの思い入れとともに、その記憶は鮮明に、いつまでも色あせずに心の中にある。そして4月9日に行われた浦和との激闘も、間違いなく心に残る1戦となった。
1999年4月に生まれ故郷の福岡に戻り、それ以降、福岡の試合を見てきた私にとっては、これまでの中で最も強烈な印象を残す試合になった。そして、その印象は実に複雑だ。力の限り勝利を求めて戦った選手たちへの賞賛。J1で十分に戦っていけるという確信。見事なまでの組織サッカーへの驚き。反面、敗れた悔しさ。力でねじ伏せられたことによる憤りにも似た気持ち。あれでも勝てなかったかという無念さ。試合後にあった、ある出来事も複雑な感情に拍車をかけた。
その複雑な感情は中々整理しきれないのだが、この試合から導き出される答だけはハッキリしている。勝負の世界にいる以上は、勝つことでしか何も報われないということ。この複雑な思いを晴らす唯一無二の方法は勝利を手に入れることしかないということだ。結果さえ良ければ全てがいいということでは断じてないが、自分たちが追い求めるものが正しいと証明する手段は「勝利」しかない。その当たり前のことが改めて心に強く突き刺さった一戦でもあった。
同じような感情を、かつて鳥栖の選手から聞いたことがある。2000年シーズンのJ2最終節で浦和と対戦した鳥栖は互角の試合を展開。最終的には延長戦の末、1−2で敗れたが、十分に勝機のあった試合だった。この試合で浦和はJ1復帰を果したが、鳥栖が引き分け以上なら、浦和ではなく大分のJ1昇格が決まっていた。この試合はBSで全国放送され、ある選手に「いいアピールになったんじゃないか」と声をかけると、こんな答えが返ってきた。「善戦をどんなに褒められようと時間が経てば忘れられる。存在を示すには勝つしかなかった」
「勝てなかったことが全て。いい試合と言われても、勝てなければいい試合にならない。我々としては引き続き勝てる方法を模索して取り組んでいくだけ」とは松田浩監督。どんな現状に置かれようとも、現場が取り組むことはただひとつ。その原因を自分たちの中に求め、そしてピッチの上でボールを追うことで解決策を探すこと。思うような結果が出ないこと我慢し、目指しているサッカーを更に突き詰めることを継続するしかない。
それでもチームに足りないものを求めるとするならば、やはり「ゴールを取りきる力」ということなのだろう。失点9はリーグ4位。しかしながら得点ではワースト2位という数字が、そのまま成績に反映している。もちろん、無失点試合を達成することで敗戦を食いとどめることは出来るが、それでも勝利に手は届かない。また、ゴールを奪えなければ、守備にも少なからず影響は出る。一瞬を突かれての1失点だけを責めることはできない。
もちろん、浦和との1失点も責められるものではないだろう。過去6戦の失点は、少しの甘さや隙を見せたことが要因となっていたが、浦和戦のゴールは闘莉王らしいゴール。試合に対する印象と同じく、説明も、言いようもないゴールだが、これもサッカー。敗戦の原因は終了間際のゴールよりも、狙い通りに試合を進め、狙い通りに流れを掴み、そして狙い通りにチャンスを作りながらゴールを奪えなかったことだろう。81分の平島の決定的なシュートが防がれたのが悔やまれるが、それもサッカーだ。
ただ、試合後に選手たちが見せた険しい表情は負け犬のそれではない。「我々はチャレンジャーなんかじゃなく、同じ土俵で戦っていかなければならないということ。選手たちは相当悔しがっている。互いにもっと細かい要求が出てくるだろうし、勝つために激しく言い合ってもいい。それが当たり前」(松田監督)。言いようのない悔しさは勝つことで晴らす。そう言わんばかりの選手たちは、その思いを次の試合で形にしてくれるはずだ。
さて、15日(土)にはC大阪との大一番が待っている。C大阪は開幕から4連敗し、現在は1勝6敗の最下位。昨年、最終戦まで優勝を争った面影はない。昨年はリーグ3位の堅守を誇った守備が崩壊し、第7節を終えての失点21はリーグ・ワースト1位。既に昨シーズンの半分を超えている。久藤清一とファビーニョが抜けた中盤の穴を埋めきれないで入るのが原因だ。2人とも要のポジション。ここでバランスが崩れれば失点が多いのもうなづける。
システムは西澤を1トップに置く3−4−2−1。西澤に楔のボールを入れて、2列目に構える古橋、森嶋が裏へ飛び出してくる。左サイドからのWBゼ・カルロスのオーバーラップも武器のひとつだ。前述のように、苦労しているのは移籍でチームを離れた選手の穴。ほとんどのポジションは開幕以来固定されているのだが、右WBとボランチの一角だけがメンバーを固定できない。ここまでピンゴ、山田卓也、河村崇大、酒本憲幸の4人がプレーしているが、C大阪にとっては、誰を起用するかが鍵になるだろう。
ただし、決して侮れる相手ではない。大敗を喫したのは、G大阪、横浜FM、浦和ら優勝候補に挙げられる強豪チーム。中堅どころとの試合でも1勝3敗と負け越してはいるものの、敗れた試合は全て1点差。最下位という順位に惑わされると足元をすくわれかねない。しかも、開幕以降、監督交代の可能性が報道されている中で、選手たちの危機感は強いはず。順位や、ここまでの戦い方にかかわらず、激しい試合になることは覚悟しておく必要がある。
福岡の布陣はグラウシオの体調次第だが、プレーの目途が立つようなら田中とグラウシオを2トップに置いた4−4−2。厳しいようなら浦和戦で見せた4−2−3−1の布陣で臨むはずだ。しかし、いずれの布陣を使うにしても戦い方は変わらない。高い位置からのプレッシャーと、連動して追い込む守備。そして攻守の切り替えを素早くして3バックの両側のスペースを突く。トップ下に2枚を置くC大阪のシステムは浦和と同じ。その対策は実戦で十分に済ませている。
ここまでのJリーグを見る限り、戦力分布は大きく2分されているように思える。上位5チームの力がやや抜けており、それ以下はほとんど差が感じられない。そういう状況にあっては、福岡も、C大阪も、まだまだ中位以上を狙える可能性は残している。しかし、ここでの対戦に敗れるようなことがあれば、そのまま下位に低迷する危険性は高い。互いに譲れない一戦。どちらも総力戦で臨むことになるだろう。
明るい材料があるのは福岡だ。けが人のために出場機会が回ってきた城後寿がスケールの大きさを感じさせるプレーを見せれば、第7節でJ1初先発を果たした長野聡も十分に通用するパフォーマンスを披露。怪我から復帰した田中佑昌がブランクを感じさせないスピードと切れのあるプレーで前線を駆け回っている。グラウシオ、川島眞也がけがから復帰したのも頼もしい。
ただ、大概の場合、大一番というものは技術、戦術以上に気持ちが大きく左右するもの。特に力の差がほとんどないチーム同士の対戦では、その傾向が顕著だ。球際の戦いで負けないこと。ルーズボールの対応に一歩早く動き出すこと。そして勝利に対するより強い意欲を持つこと。そうしたことが勝敗を分ける鍵になる。それはこの対戦でも同じこと。立ち上がりから積極的に仕掛け、福岡のサッカーを90分間貫き通すことだけを考えて戦えば、結果は自ずと付いてくる。
「必要でないことは何もない。全ては自分たちに必要だから起こっていること」。これは松田監督が良く口にする言葉だが、現在の状況も福岡にとって必要だから起こっていることだとすれば、今までの教訓を生かすのはC大阪戦しかない。長居へ駆けつける大勢のサポーターも、福岡から大阪へ思いを送るサポーターも、ともに力を合わせて選手たちを後押ししたい。そして、自分たちのサッカーの証明とも言える勝ち点3を福岡に持ち帰ろう。
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