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| 福岡通信 06/05/06 (金) | <前へ|次へ|indexへ> |
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一丸になって戦うということ 取材・文/中倉一志 |
博多の森で迎えた第11節の川崎F戦。自滅のような形で敗れた前節の鹿島戦の嫌な流れを払拭し、中断前のホーム最後のリーグ戦を勝利で飾るべく、福岡は気持ちを切り替えて臨んだずだった。その思いの通りに積極的に前に出る福岡は、6分にはグラウシオが相手DFのボールを奪って決定的なシーンを演出し、続く9分にはアレックスが鋭いミドルシュートを放つ。「今日こそは」。そんな選手たちの気持ちが博多の森を包んでいた。
しかし、有利に進めているようで福岡に落ち着きが感じられない。ボール扱いが雑で、守備もどこか安定感に欠けている。開幕当初に見せたディシプリンのある、組織化されたチームという印象がない。そして21分、我那覇に頭で押し込まれて失点を喫するとリズムが徐々に失われていく。そして33分には、アレックスと水谷雄一のまさかの連携ミスから2点目を奪われた。川崎Fは堅守を誇るチーム。この時点で勝敗はほぼ決した。
後半は川崎Fが守備に重点を置いたために攻め込むシーンが増えたが、中を割ろうとしてはタイミングが合わず、サイドを突破してもクロスボールの精度に欠いてチャンスが作れない。84分に金古の今季初ゴールで1点差に追いついたものの反撃もここまで。安定感を失わない川崎Fの前に1−2で敗れた。「やることをきちんとやらなければいけない、やってはいけないことをやってはいけない、ということが改めて浮き彫りにされた」。松田監督は試合を振り返った。
直接的な敗因はミスだが、それよりもチームのディシプリンが乱れていることが大きな問題。それがミスや連携の悪さを引き起こしており、前節の鹿島戦も同様のパターンで敗れた。この傾向は第8節のC大阪戦あたりから見え始めたものだが、シーズン開幕と同時にフルパワーで戦ってきたことや、いい内容の試合をしながらも勝てないという事実が、選手たちの中に精神的な疲労を蓄積させ、それは予想以上に大きいようだ。
「我慢と継続」。それが今シーズンを乗り切る上でのキーワード。もともとクラブとしての総合力に不足している福岡がJ1で生き残っていくのは簡単なことではない。思うように進むことよりも、苦しい時期を過ごすことのほうが多いことは覚悟の上。現実を真摯に受け止め、苦しいときを我慢し、目指す方向へ向かって粘り強く進んでいくことが求められている。「メンタルで切れたら、この1年が終わってしまう。いろんなことに左右されずに、できることを出すしかない」(千代反田充)。いまは我慢のときだ。
そして、もう一度、一丸となって戦うということがどういうことかも見つめなおす必要がある。チームの力とは監督、コーチ、選手たちだけの力ではない。フロント、サポーター、メディア、そして福岡市民の力の総和がクラブの力。チームにかかわる全ての人が、自分の置かれた立場で、自分の責任を果たすことに全精力をささげることが一丸となるということ。互いに誰かの責任にするのではなく、問題の所在を自らの仕事の中に求め、それぞれが解決すること。求められているのはそういうことだ。
例えば強化部。チームが勝てない最大の原因がFWの力不足にあることは明らかなこと。この問題を解決しなければチームを見殺しにすることになりかねない。運営予算を含め、様々な制約があることは誰もが知っている。その中での補強が難しいことも、みな理解していることだ。しかし、クラブがJ1残留というノルマをチームに課した以上、それを実現可能なチーム編成をやりきることが強化部の仕事。やり方はいくらでもあるはずだ。
先日、福岡市天神地区で行われたトークショーで、松田監督の移籍に関する発言が独り歩きをしているようだが、勝負の世界では現状維持は停滞を意味する。チームがどういう状況にあれ、常に候補者をリストアップし、そして新たな候補者を発掘し続けることは当たり前のこと。それは浦和も福岡も変わりはない。育成型クラブといえども、全てのポジションを育て上げることは不可能なわけで、若手の発掘に加え、チームに足りない戦力を常に補充できる体制を整えることは欠かせない。
例えばフロント。クラブが進むべき方向を示すことはもちろん、チームが持てる力を最大限に発揮できるように環境を整えることも業務の中の大きな柱。そのためには、運営費の拡大はもちろんだが、戦いの舞台となる博多の森に多くの観客を集めることは欠かせない。とりわけ、まだまだ力不足のチームにとって、ホームゲームでの観客の後押しは大きな武器。その武器を用意することはフロントとしてチームに対する最大のバックアップになる。
現在のホームゲームの平均入場者数は12388人。ただし、ホームゲームを2万人の観客で埋めるという目標にははるかに及ばない。それどころか、特殊要因とも言える浦和戦を除けば、その平均は10098人にしか過ぎず、昨年の平均入場者数の10786人と変わらない。ここまではJ1昇格という追い風を利用できていないのが現状だ。その現状と向き合い、原因を分析し、今後どうしていくのかを検討、実行すること。それこそが重要になる。
そしてチーム。どんな状況に置かれようと、現状の中で目標を達成するのがチームとしての責務。FWの力不足という現実を突きつけられようと、その中で勝利を手にする方法を模索し、結果を出すのが現場の仕事と言える。そんな中で、築き上げた堅固な守備に支えられた組織サッカーは最大限の武器。しかも、そのレベルはJ1で互角に戦えるものにまで引き上げられている。あとは結果を出すことで自分たちのサッカーが正しいことを証明しなければならない。
「いいサッカーをしているのに勝てない」という現実は、「自分たちのサッカーの突き詰め方が足りない」とサッカーの神様に言われているということ。ならば、更に突き詰めるしかない。どんなチームでも、90分間をただの一度も隙を見せずに戦うことは困難が伴う。しかし、「個の力」の差を補うためには、他のチーム以上の集中力を発揮し、他のチーム以上にアラートさを高める以外にない。ここまでの戦いを振り返れば、説明のしようのない流れも働いている。しかし、その流れは自分たちの手で変えるしかない。
サポーターも、メディアにも同じことが言える。熱い声援で知られる博多の森も、スタンドの一体感という意味ではまだまだ物足りない。サポーターの数もJ1の他のクラブと比較しても決して多いほうではない。どうやってこれを変えていくか。そのためにはサポーターの協力が必要だし、メディアの積極的な情報発信も欠かせない。10年を越える歴史を持つクラブも、実質的には4年前に新生・アビスパとしてスタートした若いクラブ。回りからのサポートはクラブにとっては欠かせないものだ。
勝てないチームにイライラも募るだろう。不満や不安が生まれるのも当然かもしれない。しかし、一番苦しいときに支えてこそのサポーター。そして、多大な影響力を持つメディアの活動は、まだ力不足のチームを育てるための大きな力になる。クラブとサポーター、クラブとメディアの間には区分があるが、私たちが住むまちにあるクラブに対する愛情という糸で間違いなく結びついている。私たちも「我慢と継続」。その先に必ず道が開ける。
全ての面において福岡はまだ力が足りない。しかし、それは恥ずかしいことでもなんでもない。大事なことはサッカーに対する情熱と、クラブに対する愛情、そして強い意思だ。それぞれの立場で、それぞれのやり方で、それぞれが情熱を持って足りないものを積み重ねていけばいい。それが一丸となるということ。それが福岡のスタイルだ。恥ずかしいのは足りないことではなく、やらないこと。もし、やっていないことがあるのなら、今すぐに取り組めばいい。いまならまだ間に合う。
今日行われる広島との対戦が終われば、リーグ戦は約2ヶ月半に渡って中断する。すべての面において、この2ヵ月半の過ごし方が、その後のリーグ戦に大きな影響を与えることは間違いない。この大切な期間に、それぞれの立場で自分を見つめなおし、行動を起し、足りないものを積み重ねたい。それはJ1定着という今シーズンの目標を果たすことにつながり、未来に向かっての確かな土台を作ることにもなる。やることはたくさんある。まだまだこれからだ。
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