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 福岡通信 06/07/03 (月) <前へ次へindexへ>
降り注ぐ強い日差しの中でアビスパ福岡は再スタートを切った。

 変化の兆し
 

 取材・文/中倉一志
 ほんの数分じっとしているだけで肌がジリジリと焼けていくのが分かるほど強い日差しが降り注ぐ。市の職員の方は「マイアミビーチとほぼ同緯度にあって、どんなに暑くても34度を越えることはありません」と涼しげに言うが、それだけでも十分に暑い。確かに、ほとんど湿気を感じさせない気候は、日差しさえ遮断してしまえば暑さは苦にならないが、それでもピッチの上の体感温度は40度近くまで上がる。そんな常夏の島・石垣島で、アビスパは新たなスタートを切った。

 川勝良一監督が就任する前から計画されていた石垣島キャンプの目的は大きく2つ。ひとつは、夏場の連戦に加え、プレッシャーが強くなっていく後半戦を乗り切るためのフィジカルの強化。そして、もうひとつが川勝監督就任に伴って、チームの方向性とチームを作っていく上でのベースを短期間で徹底させることだ。戦術練習は雁の巣に入ってから。まずは「意識を変えること」に重点を置き、戦える戦力を見極めるためのキャンプになった。

 21日から始まったキャンプは、まずはフィジカル強化のメニューに取り組んだ後、川勝監督が合流した23日からはボールを使った技術系のトレーニングと、意識改革を目的としたトレーニングへと移行した。全体を通して感じたことは、とにかくメニューがハードだということ。トレーニングメニューの合間に水を取る以外に息をつく暇もない。「疲れている中でどれだけできるか」(川勝監督)。否が応でも選手たちを集中せざるを得ない状況に追い込んでいる。

 また、練習メニューは攻撃に特化したものばかり。「目的はパスとかポゼッションじゃなくて最後のところが重要。ゴール前に運ぶことだけで満足している。それでは何も生まれない」(川勝監督)。まずはゴールに対する意識を変えることに重点が置かれた。監督自らが球出しを行うペナルティエリア内でのシュート練習では休むことなくシュートを打たせ、ミニゲームでも、とにかくゴールを意識することを求めた。

 攻撃のパターンで徹底させていたのはふたつ。中盤が作れないときに裏へボールを蹴って、そこへFWが飛び出していくことと、サイドから攻め込んだ時に、反対サイドのMFとボランチがゴール前へ詰めて中央を厚くすること。「それをやっても中々点が来ない。サッカーとはそういうスポーツ。それを理解して、だからこそ何度も繰り返して続けることが大事」(川勝監督)。キャンプ終盤は、何度も何度も、このパターンを繰り返した。



練習見学に訪れた石垣島のサッカー少年たち。彼らの目にプロらしさをアピールできたか
 そして、何より重点が置かれたのがサッカーに対する姿勢を変えることだった。

「2時間の練習をとりあえず体を動かして上がるというのなら意味がない。リアリティがなく、考えてない選手には出て行ってもらう、話もしないということ。そういう姿勢を理解してもらわないと。それが普通だと。その普通のことが基準になることが必要。サポーターも、それを期待しているはず。現状でいいなら将来性はない。2段も、3段も上のものを要求して、それをやろうとするのが普通」

「強さや、貪欲さを誰にアピールするかといったら、まずはチームメイト。『あいつがいるから』という輪が広がる選手になって欲しい。試合で結果を出すことで信頼が得られる。まずは力関係でポジションを確保して欲しい。何もしない選手が90分間でることはない」

「普段のトレーニングに取り組む姿勢が大事。進化しながらレベルを上げていくベースは普段のトレーニングにしかない。グラウンドの上で戦術、意図、目的を理解して集中してトレーニングをする。そういう練習の仕方をする」

 そして、その考えはキャンプを通して選手たちに十分に伝わったようだ。大声で怒鳴るわけでも、激しく叱責するわけでもない。しかし、決して妥協せず、信賞必罰を徹底する川勝監督の姿勢に、選手たちの態度は大きな変化を見せている。理解しないものは確実に置いていかれ、理解し行動に移した者には必ずチャンスが与えられる。そんな中で行われるトレーニングはピリピリした緊張感に溢れていた。



浦項スティーラーズとのトレーニングマッチには、700人近い観客が訪れた。これも新チームへの期待の現われ
 そんな石垣島キャンプを過ごして、チームの意識レベルでは確実に変化があったように見える。「いい時間が過ごせた。少ない言葉の中にいろんな要素が詰まっていた。それを感じられない、あるいは感じても実行しなかったら、その時点で戦えない。伝わってきたことをきちんと練習でやらなければいけないが、それは出来たんじゃないか。プロということをすごく自覚させてくれた。結果が出そうな雰囲気がある」と千代反田充も手応えを口にする。

 そしてホベルトは次のようにキャンプを振り返った。「我々にとっては監督を知る機会、そして監督も選手の特徴を見る機会。選手にとってはアピールの場になった。そんな中で、1勝しかしていない今の状況を覆したいという気持ち、勝利の喜びをみんなが感じられるように刺激を与えてくれた。監督は明確にどうしたら良いかを伝えてくれたので、あとは我々がそれに応えるだけ。新たな流れを作り上げて、いい再スタートを切りたい」

 もちろん、川勝監督も選手同様に手応えを口にする。「選手の特徴、キャラクターも分かってきた。自分で考えて、スピーディに行動するサッカーをベースにするのが鍵だが、言われていることの意図、目的を理解して取り組んでくれたのが大多数だった。あとは普段のトレーニングへの取り組みが大事」。そして、石垣島キャンプに帯同したメディアの多くもチームの変化を実感した。総評すれば、非常に有意義なキャンプだったと言えるだろう。

 ただし、石垣島キャンプで行ったことは、これから戦う上でのベースになる意識の部分について変化をもたらしたに過ぎず、技術・戦術面についてはキャンプ明けから始まる雁の巣球技場で行われる練習で仕上げることになる。勝利という結果を手にするためには、むしろ、これからの2週間あまりが勝負。石垣島での収穫を土台にして、更に大きなものを積み上げられるよう、一層の集中力と危機感が求められている。

 仕上げの最終段階に入った福岡は、2日に行われた浦項スティーラーズとの練習試合(6−3で勝利。この様子は別にレポートの予定)を皮切りに、西南大学、鹿屋体育大学、サンフレッチェ広島(非公開)、九州産業大学とのトレーニングマッチを通して、チームを仕上げていく予定だ。これらの実戦の中でどこまでやれるか、どういう問題点が発生するのか、それを確認しながら修正する作業を繰り返して、7月19日に備えることになる。



石垣島の空高く飛び立つ飛行機のように、福岡もより高く上昇したい
 さて、浦項スティーラーズとの試合では、まずは順調にチームの調整が進んでいることを窺わせた福岡だが、だからこそ、敢えて苦言を呈したい。リーグ戦とはチームとチームの戦いではなく、クラブ同士の力のぶつかり合い。最終的にはクラブの総合力に勝るものが勝利を手にする。現場であるチームは変化の兆しを強く感じさせているが、ではクラブのあり方に変化が見られるのかと問われれば、残念ながら、それを予兆させるものはない。

 かつて福岡は、2000年シーズンに観客動員数でJ1上位に位置し、2ndステージでは優勝争いに加わるという成績を残した。ところが、その結果がクラブ改革につながらなかったのはクラブの運営姿勢に問題があったといわざるを得ない。今シーズン途中での監督交代も同様の問題が原因のひとつになっているのだが、その問題にメスを入れることなく、過去同様、現場に極度に依存する運営体制を取るのなら、変わりつつあるチームの力を十分に発揮させることは難しい。

 チームは必死になって自らの改革に乗り出している。サポーターも様々な思いを封印して新しいチームを力の限り支えていくだろう。そして、表立った活動はしていなくても、福岡にかかわる多くの人たちも、厳しい状況に陥っている福岡を後押しする構えを見せている。そんな思いのひとつ、ひとつを無駄にしないことがクラブとしての責任。チームが意識を変えたように、クラブのあり方を根本から見直して、企業として当たり前のことを当たり前にやるという意識に変わってくれることを強くお願いしたい。
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