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| 福岡通信 06/07/26 (水) | <前へ|次へ|indexへ> |
| 博多の森に姿を現した選手たちに熱い視線が送られた。 |
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覚悟を忘れずに 取材・文/中倉一志 |
19日に博多の森に帰ってきた福岡の姿を見て、多くの方が福岡の変身ぶりを実感したことだと思う。一言で言えば、「凌いで守ってカウンターを仕掛けるサッカー」から、「自ら仕掛けてゴールを奪いに行くサッカー」への転身。言葉で書けばそれだけのことだが、体に染み付いた習慣や意識を変えるのは簡単なことではない。しかも、川勝良一監督が合流してから実質3週間しか経っていないことを考えると、改めてチームの頑張りが分かる。
それを可能にしたのにはいくつかのポイントがあるのだが、そのひとつにチームが持っている性格がある。「チームワークが成立しやすい。いろんな動機付けもあるし、勘違いしているスター選手もいない」(川勝監督)。強烈なリーダーシップを持つ選手ががいない、おとなしいといわれるチームだが、反面、松田浩前監督がチームに植えつけたディシプリンは大きな財産。シーズン途中での監督交代という難しい状況にも、動揺を最小限に抑え、前向きにチーム改革にチャレンジした。
そして、川勝監督の妥協を許さない姿勢。大声で叱責するわけでも、練習を強要するような態度を見せるわけでもない。しかし、トレーニングの目的や、意識を変えることに対してのこだわりは譲らず。その姿勢を選手たちにも徹底した。また、練習メニューは集中力を欠いては付いて来れないように工夫され、やり抜いたものだけがプロとして生き残れるというメッセージを明確に示した。「いい加減なことをしたら相手にされない」。選手たちはそんな気持ちを抱いたはずだ。
もちろん、選手たちの変わろうとする強い意識が最大の理由であることはいうまでもない。特に、レギュラー選手と新しく加入したバロン、佐伯、飯尾の集中力と緊張感は非常に高く、日に日にチームが変わっていくのが手に取るように感じられた。唯一の不安は、プレッシャーのかかる公式戦の舞台で取り組んできたことを見せられるかどうかだけだったが、それは要らぬ心配だったようだ。勝利という結果は得られなかったが、その内容は、これからの戦いへの可能性を示すものだった。
だからと言って、この変化ですべてが解決するほどサッカーは甘くない。監督交代とチームが生まれ変わったことで全てが変わったように見えるかも知れないが、チームの置かれている状況に変化があったわけではない。バロン、飯尾、佐伯の獲得は新しくなったチーム戦術上、必要かつ大事なことではあったが、チームの戦力、ポテンシャルはほぼ横ばい。意識を変えることで、かなりの部分をカバーできたが、足りないものはまだ残されている。
雨にもかかわらず、博多の森には12000人を越えるサポーターが。
そんな状況においては、手に入れた戦える武器と手応えをフル活用して足りないものを補い、最後の壁である「結果」が出るまでやり続けること。それが本当の意味でチームが変わることにつながっていく。シーズン開幕前に覚悟した「我慢と継続」こそ、チームが結果を残す最大のポイントだ。「自分の能力を信じることで殻を破れる」(川勝監督)。今までのやり方をベースに、いくつかのものを加えて、明らかにチームはバージョンアップした。それを信じてチャレンジを続けるだけだ。
川勝監督は言う。「点が取れることに関して、偶然ではなく必然に変わっている。主役になるのを選ぶか、その他大勢に回るのか。逃げたり諦めたら簡単にその他大勢に回ってしまうし、J2に落ちたら、今みたいに緊張感の中でサッカーをすることがなくなってしまうかもしれない。主役を張るということは大きな責任を負うことになるが、その分、喜びは大きい。いまは主役に回れるチャンス。自分から逃げないで挑戦する、続ける、そういうタフな方をみんなで選ぼう」
FC東京戦を終えた後の21日、ミーティングの後の練習はみっちり2時間半。攻撃の戦術練習に始まって、後はさまざまなパターンのシュート練習をただひたすらこなした。それは、とにかく攻めろという監督の意思表示。横浜FMに対するシミュレーションをしなかったのは、相手に関係なく自分たちのサッカーを続けろという無言の指示だった。「最大パワーでまとまって、局面では自信を持って果敢にチャレンジすることが必要」。川勝監督は、そう言って雁の巣競技場を後にした。
そして迎えた23日。日産スタジアムに乗り込んだ福岡は横浜FMと対戦。しかし、この日は福岡の良さが出なかった。横浜FMの布陣は4−2−3−1。久保を中央に置いて、トップ下には清水。右に吉田、左にマルケスを張らせた。「相手にうちのサイドをケアされ、中途半端な位置取りのマルケスに戸惑った。相手がうちに対してやってきたことに対して対応できなかった」(川勝監督)。立ち上がりから、試合の主導権を横浜FMに握られた。
2試合連続スコアレスドロー。しかし、まだこれからだ。
相手を押し返す力を出せずに下がってしまった福岡。これでは、高い位置でボールを奪い、そのまま人数をかけて攻めを仕掛けるサッカーは機能しない。横浜FMがピリッとしないことと、水谷がファインセーブを見せてゴールを死守したことで失点は免れたが、試合の流れは横浜FM。福岡はほとんどチャンスを作れなかった。「自分たちの形を出して行け」(川勝監督)。思うようなサッカーができない選手たちに檄を飛ばして後半のピッチに送り出す。
しかし、後半もリズムは横浜FM。布陣をオーソドックスな4−4−2に変更すると、両SBの後方にあるスペースにボールを送り込んで福岡陣内に攻め込んだ。対応に追われる福岡はラインを上げられず守りに追われる時間が続く。それでも、隙をついて鋭くサイド攻撃を仕掛ける場面もみせたが、「いつもよりトップの位置が5メートルから10メートル低かった」(川勝監督)ため、仕掛けるポイントも低くなった。そのため、常に横浜FMの守備陣形が整ったところへ攻めざるを得なかった。
残念ながら、この試合もスコアレスドロー。攻撃面での収穫は少なかった。むしろ目立っていたのは、両サイドのカバーも含めてゴール前に壁を作った千代反田充、金古聖司、川島眞也らのCBと、要所でファインセーブを見せてゴールを守り抜いた水谷雄一。言い方を変えれば、守備の力で引き分けた試合だった。だが、福岡が目指すのは自分たちから仕掛けてゴールを奪うサッカー。「チームは変わっては来ているけれど勝ち点3じゃない。修正して次の試合に臨む」(川勝監督)。福岡のチャレンジは続く。
監督が変わり、チームが変わったことで、再開後の早い段階で勝利を積み重ねる姿を期待していた方も多いかもしれない。しかし、前述したように、チーム全体としての戦力は中断前と大きな変わりはなく、他のチームとの力関係に変化はない。そんな中で福岡は意識と戦い方を変えることで勝ち点3をもぎ取るサッカーへの転身を図り、順調に変身を遂げているのだが、それを結果に結びつけるためには、もう少し時間が必要だ。1ヶ月程度の準備期間はさすがに短すぎる。
日産スタジアムに訪れた20000人越える観衆の前で勝利を手にしたかったが・・・
その反面、中断前に勝ち点を8しか積み上げられなかった福岡に必要なのは勝利。今すぐにでも勝ち点3が欲しい。時間が足りないなどと言っている状況でないことも確かだ。だが、過去の借金の全てを一瞬のうちに精算出来る都合のいい方法はない。それを解決するには、自分たちが引き起こした事態を真正面から捉え、必要な手間をかけて精算するしかない。それが責任の取り方。そこから目をそむけてはいけない。
少なくなる残り試合と、思うように伸びない勝ち点に、J2降格が現実味を帯びてくるように感じられることがあるかもしれない。しかし、その恐怖から逃れたいばかりに対処療法に頼れば、当面の痛みを消すことは出来ても病巣は根治しない。そして、それはかつて福岡が歩んだ道だ。苦しいからこそ覚悟を決めて、福岡にかかわる全ての人が一丸となって地道に進んでいくしかない。遠いように見えて、それが最も早く効果的な解決方法だ。
自分を信じる気持ちとJ2降格の恐怖との戦い。残された時間との競争。それは厳しく苦しい。その戦いに打ち勝つためには、今まで以上のタフな精神力が必要だ。だが、J1残留を望むならやるしかない。自分たちのやり方を信じて目の前の試合に全力でぶつかるしかない。どんな結果になろうとも、それを続けていくしかない。覚悟を決めて、仲間と自分達を信じて前を向いて歩こう。それが出来れば必ずゴールは見えてくる。
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