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| 福岡通信 06/09/23 (土) | <前へ|次へ|indexへ> |
| スタジアムに広げられた無数の横断幕。絶対にJ1に生き残る。 |
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今こそ試されるとき 取材・文/中倉一志 |
1999年に生まれ故郷の福岡に戻ってきてから8年目。その間、福岡を見続けてきたが、これほどまでに複雑な思いを抱きながらシーズンを過ごすことは初めてだ。まだ1勝しか挙げられていないという現実もさることながら、次から次へと起こるあり得ない出来事に何度頭を抱えたことか。どう冷静に考えてみても尋常な状態ではない。予想されうる最悪の事態が全て起こっているだけではなく、予想の範疇を超えた出来事さえも起こっている。
しかし、これが試されるということなのかもしれない。苦境に陥ったり、解決困難な問題に直面したとき、人は本当の姿を現す。その場所から逃げていく者。責任転嫁する者。現実を見ようとしない者。自分は頑張っているんだと言い訳する者。そして、懸命に現実と向かい合おうとする者。果たして我々がどんな行動を取るのか。サッカーの神様は徹底して我々を試し、ふるいにかけているように見える。まるで、それがJ1残留の最終試験であるかのように。
そんな中、博多の森でひとつのムーブメントが起こっている。きっかけは、いくつかの場所で行われたファンミーティングや、サポーターミーティングだった。元々は、勝てないチームの現状に怒りや、不満をぶつけるものだったのかもしれない。しかし、自分の口で思いを伝え、相手の意見を真正面から聞くことで、ひとつの結論に辿り着いた。それは「自分に何が出来るのかを考えて、自分自身が出来ることを、1人、1人が行動を起す」ということ。そして様々な行動が始まった。
サポーターの呼びかけによって始まった「手作り応援ボード企画」。それぞれが材料を持ち寄って、コンコースで子ども達と一緒に応援ボードを作り、選手入場に合わせて高くかざす。多くのサポーターが集結するバックスタンド自由席ではなく、一般客を応援に巻き込むためにゴール裏で応援するグループも現れた。そして、スタジアムのネイビー度は試合毎に深く、広がり続けている。決して逃げない。厳しい現状に真っ向からぶつかることで、まだ見えないトンネルの出口を見つけるつもりだ。
そして選手も変わり始めている。監督交代による戦術変更は、結果としてチームのバランスを崩すことにつながった。誰もが必死でプレーしている。不慣れながら求められた1対1の対応にも取り組んだ。しかし、約束事のなくなったチームは、それぞれが懸命にプレーしても、ひとつの糸で結べない。監督交代後も11試合勝ち星のない状況は、いつ不平不満が爆発してもおかしくなく、チームが崩壊しても仕方のない状況に追い込まれた。
試合前に手作りボードを作るサポーター。
しかし、選手たちは勝てないことから目をそらさずに、その責任を自分たちの中に求めた。自分たちの問題点はどこにあるのか。自分たちのやれることは何なのか。選手たちは自主的に集まって何度となくミーティングを繰り返した。出した結論は、組織的な守備から素早く攻撃に転じるサッカー。ボールを追い込む方向、ボールを奪う位置、ゾーンの高さ、動き出しのタイミング等々、戦い方と、その方法を自分たちで見つけ出し、そして監督に伝えた。
おそらく、水曜日から行われた3日間の非公開練習では、選手たちの意向を優先したトレーニングが行われたはずだ。ブルーシートで覆われたフェンスの向こう側からは、これまでにない大きなコーチングの声と、仲間を盛り上げる声が聞こえてくる。そして、一定間隔で静寂の時間が訪れる。「練習前に話して、練習中でもおかしかったらプレーを止めて話して、練習が終わってからも話す」(千代反田充)。それを実践していることが窺えた。
3日間のトレーニングで全てが解決したわけではないだろう。抱えている問題と比較すれば時間も足りなかったはずだ。それでもほとんどの選手たちが、これまでとは違ったすっきりとした表情を見せていたのは、自分たちが納得のいくトレーニングが出来たからに他ならない。少なくとも戦い方の意思統一は出来たはず。意図的にボールを奪いに行くというスタイルを互いに理解したはずだ。後は迷うことなく試合にぶつけるだけ。前半を無失点で抑えられれば勝機はある。
その一方で、クラブの動きは鈍いと言わざるを得ない。ここへ来て天神での街頭キャンペーンを行い、サポーターとの意見交換会の実施を発表したが(その方法論には大きな違和感を感じているが)、タイミングも遅ければ、打つ手としても少なすぎる。チームの成績はクラブの姿勢を反映したもの。いまの状況はクラブが引き起こしたことであり、クラブがリーダーシップを取って行動を起さなければ根本的な解決は見えてこない。
天神で行われた街頭キャンペーン。残り試合全てでキャンペーンを行って欲しいものだ
試合では、どうすればいいのか迷ったまま選手はもがいている。練習場では、普通の状態ではない中で選手は必死の努力を続けている。スタジアムでは、サポーターはできる限りの活動を行っている。その姿を見てクラブは何を思うのか。様々な事情はあるだろう。しかし、今はなりふりかまわず行動しなければいけない時。出来ない理由や、やれなかった理由を語るのではなく、変化をもたらすために目に見える行動をいくつも起すときだ。
横浜F・マリノス戦の後にメインスタンドで起こった抗議行動は、そんな現在のクラブの姿勢に対して起こったもの。クラブ側から「選手を信じて欲しい」という発言もあったが、選手たちが一生懸命なのはサポーターが一番知っている。サポーターの抗議は、運営ビジョンと行動が一致していないこと、現実を見つめようとしないこと、問題を座して見ていること等、クラブの姿勢に対するものだ。そして、それはクラブを大事に思うからこその行動でもある。「一部サポーターの暴走」程度に受け止めていると大きな間違いを犯すことになる。
クラブには現実を正面から見つめて欲しい。少なくとも、今の状況は監督交代前よりも悪い。良かれと思って行ったであろう補強も、結果としてはチーム力を上げられていない。そして現在の順位と勝ち点は、J1残留を果たすためのギリギリの限界だ。「残り試合を全て勝つ」という気持ちは大切だが、その実現がどれだけの可能性があるかということも冷静に受け止めて欲しい。どんなことでもいい。風を吹かすことでもいい。残留への最大のポイントは、クラブが残留に向けての強い意思を行動で示すことと知って欲しい。
さて福岡は23日、今シーズンで最も大切と思われる試合を戦う。勝つことで状況が一変するわけではないが、J1残留をかけたサバイバルゲームに生き残るためには勝ち点3を積み重ねなければならない。しかし敗れればJ1残留争いから脱落することになる。「この試合に賭けている。それは相手も同じ。ここで負けないように冷静さを持って激しく戦いたい」とは千代反田。そして選手全員で高い意識を持って試合に臨む。
サポーターグループが用意した残留ボード。何があっても残る。
C大阪はゼ・カルロス、前田和哉が出場停止。前節、フォアリベロの位置で攻守にわたって起点となっていたブルーノ・クアドロスも「第3腰椎(ようつい)横突起骨折」で欠場は確実で、けがで調整中の柳本啓成の出場も微妙だ。それだけを見れば福岡に有利なようにも思えるが、サッカーは何が起こるか分からないスポーツ。心の緩みは敗戦につながる。相手の状況にかかわらず自分たちのサッカーを展開すること。それだけに集中したい。
注意すべきは、やはり前線のタレントだろう。西澤明訓、大久保嘉人、森島寛晃、名波浩ら代表経験者をずらりとそろえた布陣は、福岡にとっては脅威だ。しかし、その反面、中盤からのビルドアップに苦労し、最終ラインはスペースと裏側に出るボールの対処に難があるなど、課題も併せ持っている。西澤にボールを入れさせないこと、そして、いかに守から攻への切り替えを早くするかがポイント。先制点が大きな意味を持つことは言うまでもない。
福岡にとっては、今日から始まる残り11試合は、いずれも決勝戦のようなもの。ホームだろうがアウェーだろうが、相手が強かろうが弱かろうが、とにかく勝ち点3を重ねていかなければならない。そのためには粘り強く、辛抱強く戦わなければならない。選手たちだけでは力が足りないときもある。苦しい状況に追い込まれるときもある。そんなときこそ、我々が試されるとき。少しでも多くの力を選手たちに送りたい。まずは今日の1戦。全員で勝ち点3を取りに行こう。
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