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| 福岡通信 06/10/15 (日) | <前へ|次へ|indexへ> |
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我慢の先に勝利が見える 取材・文/中倉一志 |
「1人、1人が100%出していかないといけない。C大阪にいたときに経験したけれど、1点の重みというのがこの辺から来る。勝ち点1、得失点差、ワンプレー、ワンプレーが本当にしびれてくる。それを思い出しながら自分でやっている。結局は1人、1人の責任感、覚悟、自分自身だと思う」。清水戦を終えての最初のトレーニングの日、練習取材に訪れたメディアに囲まれて布部陽功は話した。そして迎えた鹿島戦。福岡イレブンは見事にそれを実践して見せた。
コンパクトに形成されたゾーン。バランスよく配置された3つのライン。相手にボールを持たせておいて、中へ入ってくるところをすばやく囲んでボールを奪う。そして、鹿島の2バックの両側に広がる大きなスペースへ。そこへ布部陽功、飯尾一慶、古賀誠史が走りこむ。狙い通りのサッカーで立ち上がりから主導権を握った福岡は5分、早くも先制ゴールを奪う。左サイドを突破した古賀がゴール前へ折り返すと、スピードを生かしてゴール前に飛び込んできた飯尾が右足アウトサイドで合わせた。
思い通りのサッカーを展開する福岡の追加点は15分。相手のクリアボールを奪った久藤から飯尾へ。そして飯尾がファーサイドへクロスボールを送る。そこで待っていたのはフリーになっていた布部。全ての思いをぶつけるようなヘディングシュートがゴールネットを揺らした。その後もペースは福岡。狙い通りに展開するサッカーはほぼ完璧。青木剛(鹿島)も「戦い方にはまってしまった」と試合を振り返った。
だが後半は苦しい戦いを強いられた。大事を取ったためなのか福岡のラインが明らかに下がった。そして51分、野沢拓也にゴールを決められると、ここからはハーフコートゲームに。ゴール前に押し込まれる時間帯が続く。しかし、福岡は驚異的な粘りを発揮。ハイボールに対しては川島眞也が制空権を渡さず、宮本亨は的確なカバーリングを見せ、そして局面では全員が体を張って鹿島の攻撃を跳ね返した。試合はこのまま2−1。この日のヒーローは全員だった。
試合後のミックスゾーンで選手たちは明るい表情を見せた。勝利はもちろん、自分たちの狙い通りのサッカーを展開できたこと、全員で戦えたことに対する満足感からだろう。しかし、喜びを爆発させる者はいない。勝利も敗戦も終わってしまえば過去のもの。まして、混沌とした残留争いの状況が変わらない中で一喜一憂は無意味だからだ。大切なのは次の試合。「清水戦の二の舞はできない」。誰もがその言葉を口にした。
そして今日、福岡はアウェーで浦和と対戦する。浦和は14勝4分4敗、勝ち点58で首位。ホームゲームでは11勝1分と抜群の強さを誇っている。現役日本代表に加え、多くの代表経験選手をそろえる布陣は豪華そのもの。しかも、代表経験者というだけではポジションが約束されない選手層は贅沢とも言えるほどだ。そして、常に真っ赤に染まるスタジアムは相手にとっては完全アウェー状態。福岡にとって厳しい戦いになることは間違いない。
浦和はポンテの出場停止に加え、闘莉王、小野、坪井、黒部とけが人が続出。11日のアジアカップ予選のインド戦のメンバーである鈴木啓太、三都主アレサンドロ、長谷部誠、山岸範宏らの疲労が心配される等、チームコンディションは決して良いとは言えない。そういう意味では、福岡にいくらかのアドバンテージがあると言えるだろう。だが、どんな状態であれ結果を出すのが強いチーム。だからこそ浦和は首位にいる。
前線からのプレッシングに支えられた堅固な守備と、攻守の切り替えの速い攻撃。チーム戦術を支えている「個の強さ」はJリーグ随一と言える。かつては安定感にかけるイメージもあったが、2004年にギド・ブッフバルト監督が就任して以降は、リーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯と、あらゆる大会で優勝争いをしており、チームの安定度は高い。今は初のリーグ制覇に向けての最後の壁といえる時期。それを乗り越えるモチベーションも高いだろう。
しかし、だからといって福岡に恐れる必要は何もない。いまの福岡にとって、相手の実力や状態は関係ない。相手との比較で自分たちの位置を計るのではなく、自分たちのサッカーを発揮することにだけ全てをかけることが、いまの福岡に求められていることだ。相手の実力を認め、謙虚に、しかし、自分たちのサッカーに自信を持ってアグレッシブに戦うこと。そうすることで勝利を手に入れることができる。直近の試合では、浦和は中途半端な攻めから相手に逆襲を受ける傾向も見られ、福岡にも勝機はある。
試合後の回復トレーニングと、ごく一般的なトレーニング以外に取材が許されない現状の中では、福岡がどのような取り組みをしているかは不明だ。しかし、ポイントが組織的な守備を実行できるかどうかであることは間違いない。ラインを下げずにコンパクトなゾーンを形成し、ブロックを作って入ってくるところを複数で捕まえる。鹿島戦の前半で見せた戦いができるかどうかが鍵。1対1の勝負は避けなければならない。
浦和戦ではアレックス、ホベルト、中村北斗の3人が出場停止だが、おそらく佐伯直哉と城後寿をボランチとして起用し、その他は鹿島戦同様の布陣で臨むことになるだろう。チームの要となるダブルボランチが初コンビという不安はなくもないが、雁の巣球技場のブルーシートの向こうからは元気な声が聞こえてくるなど、チームの雰囲気はいい。2試合ぶりの先発となる佐伯は自ら守備練習を志願するなど、調整に余念はないようだ。
勝利への条件は無失点で試合を進めていくこと。その上で少ないチャンスを生かす戦い方がベストだろう。守備意識を強めるあまりに下がってしまうことや、マンマークで守ることは避けなければならない。先制点を奪われるようなことがあっても、ムキになって反撃に出ることも逆効果。どんな状況になっても勇気を出して自分たちのスタイルを貫くこと。我慢を強いられることになるだろうが、それは望むところ。我慢の先に勝利がある。
さて、浦和戦の結果にかかわらず、混沌とした厳しい戦いは終わらない。福岡を含めた3チームは既に直接対決を終えており、また実力的には甲乙つけがたいのが現状で、残留争いは最後の最後までもつれることになりそうだ。互いに相手を突き放す決め手はない。最終的には、ひとつの試合、ひとつの得点、そしてひとつのプレーを、より多く大事にしたチームが生き残ることになる。
残り試合は浦和戦を含めて8試合。布部が言うようにしびれる戦いが続く。昨日行われた試合では、残留争いのライバルである京都、C大阪が、引き分けたことでプレッシャーもかかるが、それを跳ね除けなければ結果は得られない。足りないものがあるのは承知の上。それを全員の力で補うのが福岡のスタイル。ピッチの上の11人だけではなく、ベンチ入りメンバー、サテライトのメンバー、そしてサポーターの力を合わせて戦いに臨みたい。
シーズン前に思い描いたものとは異なった展開になった2006年。それはクラブの総合力不足がもたらしたこと。望んだ形ではないが、これも必然だったのかもしれない。そして残された2ヶ月間でも、まだいろんなことが起こるかもしれない。しかし、たとえ何が起きようとも、自分たちの覚悟だけは揺るがさずに戦いたい。それがJ1残留の決め手。そしてJ1に残留することこそが福岡の未来につながると信じるからだ。
いまサポーターの間では様々なムーブメントが起こり、チームを支える思いは必死にピッチに送り、そして選手たちはその思いを受け止めながら戦っている。みんなでもがき、苦しみながら戦うシーズンは、正直に言えば苦しい思いに襲われることもある。しかし、強い気持ちこそが最も求められていること。「我慢と継続」「福岡にかかわる全ての人が試されるシーズン」。開幕前に胸に刻んだ言葉をいまこそ大事にしたい。
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