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| 福岡通信 07/03/14 (水) | <前へ|次へ|indexへ> |
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進化する福岡 取材・文/中倉一志 |
自転車、JR、地下鉄、そしてバスを乗り継いで博多の森球技場へ向かう。福岡へ戻ってきた99年から8年間通い続けた同じ道。けれど、何度通っても、ホーム開幕戦だけは特別だ。見慣れたはずの風景もどこか新鮮で、新たなシーズンが始まる喜びに包まれているように見える。はたして、今シーズンの福岡はどんな顔を見せてくれるのだろうか。その姿を自分はきちんと伝えられるのだろうか。3月10日。今年も同じような思いを描いてスタジアムへ向かう。
リトバルスキー監督に対する期待もあるのだろう。開幕戦となった九州ダービーを、これ以上ない内容と結果で勝利したこともあるのだろう。スタジアムに集まってくるサポーターの表情は例年以上に明るい。久しぶりに再会する仲間たちが交わす言葉も前向きだ。J2が厳しいリーグであることは承知している。勝負の世界を勝ち抜くことが難しいことも知っている。けれど、新しく生まれ変わった福岡への期待が不安な気持ちを上回る。
さて、そんな中で始まった山形との試合。結論から言えば、ピッチの上で繰り広げられる展開は、期待していた内容とは違うものだった。最終ラインを高く保ったコンパクトなゾーンで待ち受ける山形に対し、福岡はパスを回すスペースを確保できずに相手のプレスにさらされ、布部陽功が上がった後ろにできるスペースを何度も突かれてペースを握られた。失点は29分。クリアを財前宣之に拾われて、最後は豊田陽平にゴールネットを揺らされた。
相手の両SBの後ろにボールを送り込むという選択肢もあったが、福岡はそれをせずに山形の術中にはまり込んだ。54分には林祐征が相手に肘打ちを浴びせたと判定されて一発レッド。この時点までは典型的な負けパターンだった。しかし、ここから福岡は執念を見せる。ボールに喰らいついて主導権を奪い返し、とにかくゴールを目指した。そして最後は徹底したパワープレーからPKを奪って同点に。苦しい戦いを引き分けに持ち込んだ。
鮮やかなパスサッカーで驚きを感じさせてくれた開幕戦。パスをつなげずに閉塞感を感じさせられた第2節。福岡は全く別な顔を見せた。しかし、そのどちらも、完成度で言えば70%程度の福岡が持っている両側面。長所を余すことなく発揮したのが開幕戦なら、欠点ばかりが目立ってしまったのが山形戦。どちらの試合も、ある意味では想定の範囲内の試合だったと言える。山形戦に限って言えば、相手が徹底的に福岡を研究してきたことも大きく影響した。
福岡が目指すサッカーは、長短織り交ぜたパスを回して相手の陣形に決定的なスペースをつくり、そこを素早く突いてサイドアタックを仕掛けるのが基本。崩せなければ、もう一度戻して一からビルドアップを繰り返す。例えて言うなら詰め将棋のようなサッカー。ロングボールを蹴って相手とフィフティボールを競り合うことを避け、ボールを保持する時間を増やすことで、攻守にわたって自分たちから仕掛けることを狙いとしている。
基本システムは4−3−3(4−1−4−1と言ったほうが分かりやすいかもしれないが)。DFラインが高い位置を維持することでコンパクトなゾーンを形成し、中盤ではワンボランチの布部が攻守のつなぎ役とゲームメイクを担当。その前の4人のMFがポジションチェンジを繰り返してボールを回す。そして、最前線では林祐征が攻撃の起点を作るほか、相手をひきつけることで2列目から飛び出せるスペースを作る役割を担う。
最大の肝になるのが中盤の連動性だ。自由自在にポジションチェンジを繰り返すことで、中盤にスペースが生まれてパスが流れるようにつながる。そして、連動して布部の周りをカバーすることで、バイタルエリアのスペースを巧みに埋めていく。ところが、山形戦では中盤の連動性を消された。その結果、足元につないではプレスをかけられ、バイタルエリアを自由に使われることになった。中盤が機能しなければSBの押し上げも難しかっただろう。
コンパクトなゾーンを敷く相手にパスワークを封じられてバイタルエリアを使われるのも、引いた相手を流動的なパス回しで崩すのも、キャンプ中から続く傾向。この落差を少なくしていくことが現時点での課題と言えるだろう。しかし、全てにおいて完璧な戦術などはあり得ない。それぞれのやり方に、それぞれのリスクが必ず存在する。リスクをカバーしつつも、長所をより強く出すことで欠点を補うことが必要だろう。
その一方で、25分、そして49分に福岡が見せた流れるような攻撃は圧巻。結果的には両方ともオフサイドになったが、悪い流れの中でも完璧に相手を崩してみせた。そのほかにも、35分、71分にもサイドから決定機を作り出しているが、いずれも練習で取り組んでいる形そのまま。自分たちの形に持ち込めば意図的に崩せることを証明するプレーだった。長い間、決定力不足に悩まされてきた福岡だが、点を取る形は固まりつつあると言える。
パワープレーで強引に点を取りに行けるようになりつつあるのも収穫の一つだろう。守備意識の高いJ2では、この日の山形のように相手の特徴を消しにくる試合は多く、強引にゴールを奪いに行かなければならないシーンは少なくない。厳しい昇格レースを勝ち抜くために心強いオプションになるはずだ。それにしても、川島眞也の存在感は日を追う毎に大きくなる。すでにベテランの域に達しているが、大ブレークの予感さえ漂わせている。
そして、この試合で見せた最大の収穫は勝利への執念だ。「プレーする以上は、しっかりと動いて、ファイティングスピリットを持って戦わなければいけない」(リトバルスキー監督)。きれいなサッカーも、見ていて面白いサッカーも、最後まで勝利を追い求める執念があってこそ。決してきれいな形ではなかったが、スタンドの観衆がピッチに目を釘付けにされたのは、そんな姿勢があったからこそだ。その気持ちが終了間際の同点ゴールを呼んだと言える。
さて、福岡は1勝1分で1試合のブレイクに入った。振り返れば勝ち点2を失った悔しさは残るが、できなかったことをネガティブに捕らえるのではなく、いくつか見えた収穫をポジティブに捕らえたい。新たなスタイルの確立に向けてトレーニングに励む福岡は、まだ発展途上のチーム。課題があるのは当然のことで、その課題を戦いながら整理していけばいい。実際、福岡は確実に昨年までとは違う姿を見せている。この流れを断ち切ることなく進めばいい。
それにしても、昨年と比較して、それほどメンバーが変わっていないにもかかわらず、確実に変化していくことに驚きは隠せない。戦う場所がJ2になったことや、昨年の悔しい思いが影響していることは間違いない。しかし、それだけではない何かがある。雁の巣球技場で取材する報道陣からも、そして練習を見学するサポーターからも、「そんなにメンバーは変わってないんだよなあ」という言葉が聞こえてくる。
もちろん、様々な要因があるだろう。しかし、最も大きな影響を与えているのは、プロとして当たり前のことを当たり前にやり、細かい部分に徹底してこだわるリトバルスキー監督の姿勢のように思う。そして、スタッフ・選手のことを常に考え、尊重し、ファン、サポーター、メディアに対してさえ同じ姿勢を崩さない。何より言葉に嘘がない。ごまかさない。それだけに妥協は許さない。それが選手たちに一体感と責任感を植えつけているように思う。
雁の巣球技場では、今日もリトバルスキー監督の日本語が大きく響き、選手たちは集中しきった表情でボールを追い、ミニゲームや戦術練習では激しく競り合う。「私は31人のレギュラー選手を抱えている」。そのリトバルスキー監督の言葉どおり、誰もが、いつでも、ピッチに立てるように準備を欠かさない。その姿勢が新たな競争を呼び、互いに切磋琢磨を繰り返している。次のゲームは3月21日の仙台戦。博多の森に現れる福岡は、また違った姿を見せてくれそうだ。もちろん、さらに進化した姿を。
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