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| 福岡通信 07/04/21 (土) | <前へ|次へ|indexへ> |
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とにかく一歩ずつ 取材・文/中倉一志 |
公式戦の取材を終え、その日の仕事を片づけると疲れがドッと襲ってくる。自分がプレーしているわけでもないのに、まるで90分間を走り続けたような脱力感。ライターの仕事をするようになってから10年目を迎えるが、こんな気分になるのは初めてのことだ。まあ、体力を気にしなければならない年齢になったせいなのだろうが(汗)、それだけではない。試合中の自分の緊張感と集中力が、今までとは比べられないほど高いことが原因のようだ。
ハラハラ、ドキドキしているわけではない。むしろ、今シーズンは勝敗に関係なく比較的静かに試合を見ていられる。私が福岡を追いかけるようになってから、今シーズンが一番チームに落ち着きのようなものを感じるからだ。思うようにならない試合もある。押し込まれる試合もある。4勝2分2敗という成績は決して順調と言い切れる数字でもない。それでも、とんでもないことにはならない確信のようなものがある。
では、なぜ緊張するのか。いろいろと考えてみたが、どうも選手たちの緊張感が自分に伝染しているからのように思える。J1復帰のプレッシャーではなく、精神を張り詰めて目の前のプレーに自分の力のすべてを発揮しようとする緊張感。それが強く伝わってくる。楽勝に見える試合も、それは目の前のプレーを最大限の緊張感を持ってプレーし続けた結果。勝敗や内容に関係なく、これまでの8試合は非常に緊張感の高いゲームだったと言える。
選手の緊張感が高い試合は、こちらも緊張感を緩めるわけにはいかない。ピッチ上で起こるすべてのことを見逃さぬように目配りし、感じたこと、見たことを余さずにノートに記していく。得点シーンは赤字。決定機は青字。みるみるノートが埋まり、試合が終わるとへとへとになっている自分がいる。もちろん勝ったときは喜びを伴い、そうでないときは悔しさを伴って。しかし、消化した試合はまだ8試合。この高い緊張感を維持したまま、あと40試合も戦わなければならないのだから、J2を戦うのは本当に大変だ。
さて、少々遅くなったが第9節の試合を振り返ってみたい。この日のポイントは下位に低迷する愛媛に対して早い時間帯でゴールを挙げること。そしてリズムを掴んで地力の差を結果に表すことだった。布陣は布部陽功を中盤の底に置いた4−3−3。そして前がかりになって立ち上がりからゴールを目指した。福岡のリズムは前から仕掛けることで生まれる。入り方としては悪くはなかったはずだった。ところが、ゴールに向かう姿勢が強すぎたことが裏目に出た。
福岡の4−3−3が機能するポイントは中盤の流動性にある。布部を軸にして、その左右に位置する2人のMFと、左右の高い位置に張り出した2人のMFがポジションチェンジを繰り返しながらスペースを使い、カバーすることが肝になる。さらには、両SBが自分の前にできるスペースを有効活用することが求められる。ところが、この日は中盤の流動性に欠いた。前へ出るプレーを意識するあまり、時には前線に5人が並ぶシーンさえ見られた。
立ち上がりからチャンスを作ったとはいえ、急ぎすぎは否めない。中盤のポジションチェンジはなく、ビルドアップもなく、手順を省いたような攻めには落ち着きが感じられない。やがて1人で中盤の守備に追われる布部の両側にできるスペースを愛媛に使われる。山形との対戦と同じパターン。やがて主導権は愛媛に移り、福岡は防戦一方に。いつゴールを奪われてもおかしくない展開になった。敗れていたとしてもしかたない流れだった。
リンコン、久藤清一の投入で幾分落ち着きを取り戻した福岡は、80分に久藤のクロスからチャンスを作り、最後はリンコンが押し込んで1−0で勝利を手にしたが、地力を示したというよりは、勝ちを拾ったというゲームだった。もちろん、福岡のバランスが悪かったことだけが苦戦の要因ではない。愛媛の選手たちが高い位置からボールにプレッシャーをかけ続け、最後までボールを追いかけたことが福岡を苦しめたことも要因の一つだった。
さて、東京Vに勝ったのも福岡の実力なら、この日愛媛に苦戦したのも福岡の実力。どちらもやっているサッカーに違いはない。そして、その方向性にも間違いはないと言える。そのサッカーがこうも違う内容になるのは、ひとえにバランスの問題と言える。攻撃的という言葉だけにとらわれて前に出れば、4−3−3の布陣では中盤にスペースができて、かえって守備に追われることになる。攻撃的なサッカーを標榜するからこそ、守備に注意を払わなければいけない場面もある。
「攻撃的」というキーワードから連想されるひとつのことを追い求めるのではなく、その実現のための要素をかみ砕いて、複合的にプレーを組み立てること。それが選手たちに求められている。「体も使うけれど、頭も使います。とにかく考えないといけないんで疲れますよ」。キャンプ中、笑顔を交えながら布部は語っていたが、まさにそういうことなのだろう。その最終形がポゼッションサッカー。ボールを失わなず、攻守にわたって主導権を握るサッカーということになるのだろう。
同じ局面が2度とないサッカーというスポーツでは、細かな決まり事を作ってマニュアルに沿って物事を解決していく方法はナンセンス。それぞれの場面で、それぞれの選手たちがチームにとって最良の選択をすることが求められる。もちろん、ある程度は細分化できるだろう。しかし、すべては不可能。教えられたことを教えられたとおりにやっているだけでは、リトバルスキー監督が求めるサッカーは実現しない。
久永辰徳は言う。「リトバルスキー監督の指導方法は、以前のように細かいことまでは教えてくれる方法ではない。自分たちが様々なことに対応していかなければいけないし、それが出来るようになることでリトバルスキー監督が来た意味がある。今は大人になるとき。得られるものはいくらでもある。教えられることよりも、学ぶことをやっていくこと。ひとつ言われたら、2つ、3つと考えること。そうすれば答えが見つかるし、同じミスは繰り返さない」。
冒頭に書いた選手たちの緊張感とは、そういう行動を求められ、そして実行しようとしているところから生まれてくるものなのだろう。そして、私が感じるチームの落ち着きとは、それを追い求めればチームが強くなるという信念のようなものが選手たちから感じられるからだろう。その実現度は、まだ決して高いとは言えない。そして、簡単に手に入れられるものでもない。だが、確実にその方向へ向かって歩んでいることは間違いと見る。
現状ではチームが変わっていることを実感している人は多い。その反面、変わったと胸を張れるほどではない成績に物足りなさを感じてもいることも事実だろう。そして選手たちもまた、現時点での勝ち点数は少ないと感じている。だが、変化しながら戦うチームという意味では、今の順位は決して悪くはない。マラソンに例えれば10キロ地点。先頭集団にしっかりと身を置き、30キロ地点から一気にスパートをかけるために力を蓄えているといったところか。
一気に駆け抜けたい。誰もが思う気持ちは同じだ。しかし、近年になくJ2のレベルが上がり、昇格争いを繰り広げるであろうライバルチームが多いシーズンを、先頭をぶっちぎって駆け抜けることは簡単ではない。実際、仙台はいまだに無敗を続けているが、その勝ち点は19。消化試合が1試合少ない福岡との差は5でしかない。勝負がかかってくる第3、第4クールで自分たちのサッカーを余すことなく発揮できるように準備を重ねておくことこそが何よりも大切だ。
抜け出せそうで抜け出せない。離されそうで離されない。一気に喜びを爆発させられるわけでもなく、悲しみにくれるわけでもなく、それでいて集中力だけは欠かせない。いまは我慢を強いられる難しい展開であると言える。しかし、それを我慢しぬいてこそのJ2優勝。そしてJ1復帰だ。目先の結果にかかわらず、辛抱強く勝ち点を重ねられるか。辛抱強くチームとともに戦えるか。結局のところ、今年も我慢と継続。それがJ1復帰への最大のポイントになりそうだ。
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