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 福岡通信 07/05/13 (日) <前へ次へindexへ>

 戦いはこれから
 

 取材・文/中倉一志
 ゴールデンウイークの後半から10日間、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごした。実際には、第2節の山形戦の後も10日間のインターバルがあったのだが、そのとき以上に長い時間が過ぎているように感じるのは、それだけ自分がリーグ戦に集中していたからだろうか。途中経過とはいえ、ひとつの区切りを首位で終えられたという事実が心にゆとりを与えてくれていることも影響しているのだろう。勝負の世界では結果に勝る薬はないことを改めて強く感じている。

 第1クールの順位を眺めてみると、福岡を筆頭に山形、札幌、仙台と、組織で戦い、ハードワークするチームが上位を占めた。その一方で、個の強さを武器に戦う京都は5位。大型補強を行って選手の能力の高さでは一番と言われていた東京Vは7連敗を喫して9位に沈んだ。J2のレベルが2年前と比較して上がっていることを感じていたが、もはやJ2は、個の強さや過去の実績で勝てるリーグではなくなったということなのだろう。

 しかし、途中経過は単なる傾向を示すだけのもので、何かを保障してくれるものではない。また、過去、第1クールを首位で折り返したチームがすべてJ1昇格を果たしているというデータも何の保険にもならない。少しでも油断があれば、あっという間に奈落の底に突き落され、逆に勝利に対する強い意欲があれば、現状から脱する手段はいくらでも講じられる。強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いのが勝負の世界の鉄則。まだまだ先のことは分からない。

「福岡は0の状態からスタートして、非常にいい状態にまで成長したといえる。しかし、我々と同じように他のチームもいろんなことを学んでいる。これから先、ずっとトップにい続けるためには現状維持では足りない。山形、札幌、仙台も非常にいいチーム。それらのチームよりも、さらにいい状態に持っていかなければいけない」(リトバルスキー監督)。謙虚に、相手をリスペクトし、しかし自信を持って戦うこと。常に高いレベルを追い求めてトレーニングを積むこと。変わらぬスタイルで戦うことが何よりも大切だ。



 さて第1クールを振り返ると、福岡の変化は攻撃面で顕著に表れている。シュート数自体は1試合平均10本強と昨年と比較して大きく変わるものではないが、無得点だったのはスコアレスドローに終わった第6節の札幌戦のみ。引いて守りを固める相手にも確実にゴールを奪えるようになった。1試合平均で1.92点はJ2では仙台に次ぐ2番目の数字。過去、得点力不足に悩み続けたチームの姿は完全に払拭されたとみていい。

 その要因はボールを回せるようになったことに尽きる。福岡のパス回しの特徴は、南米サッカーのようなダイレクトパスで相手を翻弄するものでもなければ、目の覚めるようなスルーパスを連発するものでもない。丁寧に前後左右にボールを散らして隙を窺い、チャンスが作れなければ、また戻して律儀なまでに同じことを繰り返す。その繰り返しの中でいくつもの伏線を打ち、小さな穴をじわじわと広げていく。それは理詰めのパスワークとも呼べるものだ。

 そしてボールをポゼッションすることで、攻撃の準備が整える時間が確保できるようになり、それがゴール前に飛び込む人数が増えることにつながっている。クロスボールに対してもニア、センター、ファーサイドで待ち受けることができるようになり、分厚い攻撃が可能になった。いくつもの伏線を打って相手の穴を広げ、そこへ人数をかけてバランスよく攻め込めば得点に結びつくのも道理。きれいに崩してからのゴールが多いのは、そういう理由からだ。

 いくつかの試合で、負けに等しい試合を引き分け、引き分けでやむなしと思われた試合を勝利に結びつけたのも、チームが得点のイメージを持っているからだろう。狙いどおりの形から得点を取れるという事実が、自分たちのサッカーに対する自信につながっている。もちろん改善点もある。「試合ごとに波がある。フィニィッシュ、ラストパスの精度を上げる必要がある」とはリトバルスキー監督。ここまでは及第点だが、まだまだチャレンジすることは多い。



 一方、第1クールの総失点9は札幌の8に次ぐ2位。シーズン当初は完封試合が少なかったが、第7節の東京V戦以降で失ったゴールは3つ。そのうち東京V戦はオウンゴールから失ったもので、相手に崩されてからの失点はC大阪戦での2失点に過ぎない。サッカーにおいて攻撃と守備は表裏一体。ポゼッションサッカーの完成度が高まるにつれて守備の安定感が増したのは当然のこと。守るというよりも、ボールをポゼッションすることで相手の攻撃の時間を短くするサッカーの結果と言える。

 だが、こちらは数字ほどの安定感は感じられない。リスクを背負って攻撃に出ていることを差し引いても、GKとの1対1の場面を作られたり、ポストに救われたシーンがあったりと、ピンチの場面は思った以上に多かった。リトバルスキー監督も「相手にゴールチャンスを与える機会が多すぎた。神山のファインセーブなどで防いだ場面も多く、ラッキーな面もあった。ラッキーに救われていてはダメ。改善の必要がある」と振り返る。

 4−3−3のフォーメーションから、布部陽功、久藤清一を中盤の底に置く4−5−1のフォーメーションに変更したことでバイタルエリアのカバーは問題なくなったが、引き分けに終わったC大阪戦に象徴されるように、高い位置からボールを追われた時に、全体のバランスが崩れる傾向は解消されていない。その原因を「自分たちのサッカーをしようとしすぎて、無理につなごうとしている」と久藤は話す。

 また、「自分たちのサッカーをすることは必要だが相手があるのがサッカー。流れを読んで、相手の出方を読んで対処しなければいけない」と、布部も同じ感想を口にする。苦しくなってフィフティボールを蹴り返すのは論外だが、ロングボールを蹴ること自体は、必ずしもポゼッションサッカーに反するものではない。自分たちの特長を生かすために相手のプレッシャーを避け、相手が下がったところにプレスを仕掛けるのは必要なプレー。状況に応じてプレーの選択の幅広げることが必要だ。



 第1クールを総評すれば、福岡はJ1復帰に向けて順調な歩みを進めている。だが、冒頭にも述べたように、それはこれからを保障するものではない。リトバルスキー監督は、山形、札幌、仙台を警戒すべきチームとして挙げているが、戦いを重ねる中でチームの成熟度が上がっていくのは組織で戦うチームの特徴。福岡に伸びしろがあるのと同様に、彼らの成熟度も上がっていく。京都、湘南も難敵。立場が微妙になった東京Vも、フッキの存在が厄介であることに変わりはない。

 そんなJ2を駆け抜けるためには攻守にわたる課題を修正してチームの成熟度を上げることはもちろんだが、それ以上に、チームの総合力を上げられるかがポイント。福岡の好調は、布部、久藤、久永辰徳らベテラン勢がチームを支えていることが大きな要因になっているが、累積警告や疲労の蓄積により、第2クール以降は出場できないケースが増えてくることが予想され、その中で変わらぬチーム力を発揮することが求められている。

 ただ穴を埋めるだけでは物足りない。現在のレギュラー陣と変わらぬ力を発揮してポジションを奪い取るくらいの活躍が必要だ。そのために、いつでも最高のプレーができる準備をしている選手がどれだけいるか。出場機会が与えられないことに腐らずにチームのために準備できる選手がどれだけいるか。トレーニング中から自分の限界まで力を出しきれる選手がどれだけいるか。それが、これからの福岡の位置を決めることになる。

 いずれにせよ、J1昇格争いは依然として混沌としている。幸いにして、福岡は下位チームに取りこぼすことはなかったが、不本意な戦いを続ける水戸、徳島、愛媛が上位チームに完勝するケースがあったように、互いの間にある力の差は、少しの油断で立場が逆転してしまう程度のものでしかない。気が抜ける試合はこれからもひとつもない。そんな中で迎える第2クール。首位で折り返した喜びを封印し、再び新たな気持で戦いの場へと向かいたい。
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