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 関西蹴球だより 07/05/01 (火) <前へ次へindexへ>

 兵庫女子高校総体。日ノ本学園、笑顔なき優勝。
 平成19年度兵庫県高校総体・女子の部

 取材・文/ハヤシ ヒロヒサ
 ゴールデンウィークに入り、各地で公式戦が目白押しの中、兵庫県の高校女子ナンバーワン決定の瞬間を取材することにした。兵庫は、古豪・啓明学院とここ数年覇権を握っている日ノ本学園の一騎打ちが常だった。今大会も決勝もそうなるだろうと下調べをしていたが、多少様子が違って戸惑った。しかし、こちらの予想を超える個人スキルの高さに驚き、外連味の無いプレーに素直に拍手を送る事の出来る、この日の天候同様に心地よい時間を過ごせたことは確かだった。



【3位決定戦 啓明学院高校vs.有馬高校】

 多くの名手を輩出し、県内だけではなく国内でも強豪として知られる啓明学院(以下、啓明)だが、ここ数年の学校としての方針なども関係してタレントが集まりにくくなっている。その噂だけは耳にはしていたが、実際にこの試合で登録された部員の数は11人ちょうど。しかもソフトボール部から2人の手助けが入っている。大会参加も危うかったのが現状である。

 ただし、個々の技量では啓明が有馬を圧倒している事は、試合開始直後から明白であった。開始2分(35分ハーフ)で啓明のエースストライカー井上が左足でゴールを決める。井上自身は試合前、シュートを課題として挙げていたが、PA角付近の左45度から鮮やかに低弾道のボールでGKを抜いた。立て続けに5分、MF三宅のクロスを中田がワントラップして左足で決めて追加点。啓明は左右両サイドとセンターをバランス良く突いて、主導権を握り続けた。3点目も井上が中央を突破してゲット。一方的な展開も有り得るかと思わせた。

 しかし、有馬も、4−4−2でしっかり固めて反攻に出る。DFからFWまでがコンパクトさを意識し始め、心臓部で素晴らしい働きをみせるMF金尾と岡留の二枚が流れを引き戻す。決定機までは繋がらないものの、守から攻へのプロセスはよく鍛えられている。加えて、啓明が負傷者を出してしまう。ピッチをアウトするしかない状態で、交代のカードも無いため前半途中で10人となった。

 この啓明の窮地を救ったのがDF谷の独走からのゴール。前半だけで4−0のスコアにして心理的にアドバンテージを保った。ちなみに前半の啓明のシュートは5本であり、そこからの4得点は非常に効果的だった。

 後半、試合は均衡した状態が続く。ほぼ五分五分と表現して良い戦いに有馬が持ち込んだ。前半シュートの無かった有馬も、後半は8本のシュート(これは啓明と同数)を放ち、ポストを直撃するものもあった。だが、啓明はDFの宮村と谷が冷静にしっかりとタスクをこなし、守備面での技量の高さも見せた。この点がゴール数の差になったとも言える。1人少ない啓明はエース井上が中盤から前線までハードに動き、55分に自身ハットトリックとなる駄目押し点を決めてゲームにピリオドを打った。

 この試合、結果は5−0と啓明が力の差を見せたが、有馬のスタメンには1、2年生も多く早々に逆転の好機が訪れるだろう。


(啓明学院高校) (有馬高校メンバー)
GK: 山角 GK: 恒川
DF: 伊原、谷、吉野、宮村 DF: 山本→安場、足立、古東、塚本
MF: 三宅、大武、篠田、中野 MF: 梅本、岡留、金尾、砂川→村方
FW: 井上、中田 FW: 森田、安場→村方→山本
※1人が何度でも交代出来るレギュレーション


【決勝 日ノ本学園vs.三田祥雲館】

 決勝のこのカードを意外と表現することが適当でないことは理解しているつもりである。実際、新人戦でもこの2校は覇を競った。ただし新人戦は啓明が不参加だったため、三田祥雲館(以下、祥雲館)の真の力量は掴めていなかった。ただ、実際に試合を観ることが出来なかったのだが、準決勝で啓明に競り勝っており、勢力図を塗り替えに掛かっていることは確かなようである。

 勝敗に関しては、日ノ本学園(以下、日ノ本)絶対有利に違いはなかった。2月の新人戦決勝で日ノ本が二桁得点で零封勝利しているだけに、2ヶ月での力関係の逆転は想像に難かった。だからこそ、この試合に臨む両校のテーマは違ったのだろう。

 結果から言えば、日ノ本が5−0で勝った。スコアが一気に縮まっただけで力量の差も縮まったと言うつもりは皆目無い。ただし、祥雲館が成長したことは絶対的に間違いの無い事実。試合後に、祥雲館の監督やコーチ陣が、選手の健闘と成長を称え、「これからどうやって次のステップに進むか」を話されていたシーンだけでも、この2ヶ月間の努力の成果として伝わって来た。

 具体的に、良かった点を書き記しておく。個人としてのディフェンス技術と連動性を持った守備が浸透していた。圧倒的にテクニックやスピードで上回る相手に、しっかりと間合いを取り、重心を落として対応する姿勢と明確にタッチにクリアする判断が終始貫かれていた。連動性という点では、数的有利な状態で守る意識が高く、しばしばサンドしてボールを奪取していた。そして、何よりGK植村の安定感は特筆すべきものだった。これからは、いかに攻撃に繋げるかという明確な課題に取り組むことになる。

 日ノ本は、個人技も高く、アジリティーにも優れた選手がズラリと揃っていた。この試合ではサイド突破やそれに呼応した中央に構える選手の動きの工夫が問題点としては残ったが、それは監督・選手も十分に理解していた。4点目は守りを固める相手から、素早いサイドチェンジ⇒速いクロス⇒中央でダイレクトシュートと、お手本のような得点をした。菊地キャプテンにその事を触れると、試合を通してそういった試みも理解しながら進めていたそうであり、監督も同様の談。これから関西を勝ち抜き、全国で勝負する段階で、いかに生まれ変わってゆくかに注目したい。

【得点】29分小林、31分オウンゴール、36分小栗、64分小林、71分小栗


(日ノ本学園高校) (三田祥雲館高校)
GK: 鈴村 GK: 植村
DF: 菊地、横川、山縣、武田→井口 DF: 明石→赤井、松山、今安、佐園
MF: 今西、高田→玄、今中、藤田 MF: 能勢、渡邊、伊東、山本→佐野
FW: 太田→小栗、小林 FW: 古川、狭間
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