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| 札幌からのメール 07/09/13 (木) | <前へ|次へ|indexへ> |
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総力戦 文/笹田啓子 |
選手達が試合で相手チームと戦い、チーム内でポジションを得るために仲間とも戦い、自分自身とも戦って暮らしていくのと同じように、自分達の町にある、あるいは自分達の心の中に住む「愛するチーム」を持つファンもまた、様々なものと戦わずに日々を過ごしていくことは出来ない。上位であれ下位であれ、それぞれの立場でそれぞれの問題と、みんな戦っている。
私達札幌もまた、これまで色々なものと戦ってきた。
2002年に降格して以降、ここまで自分達が戦ってきた相手は、いずれ劣らぬ難敵揃いだった。
自分達のチームが何をしようとしているのか判らない、暗闇の中で手探りするような毎日だったり、長く続く連敗、そしてJ2最下位という結果だったり、試合に関わらないところで発生したクラブの不祥事という苦しさだったり。つい最近でもメインスポンサーに事件があって不安な日々を過ごしたばかりだ。
ざっと挙げただけでもこのぐらいたくさんのことと戦ってきて、だけどそれは何かを勝ち取るための戦いじゃなかった。崩れ落ちてしまわぬように支えている、「負けてしまわない」ために必死で戦ってきただけだった。04年と06年の天皇杯を除いては、それがここ数年の札幌の戦いだった、と思う。
そんな自分達がいま立っているのは、ネガティヴなものとばかり戦ってきた数年間と、間違いなく違う場所。2007年9月、今週末からJ2は最後の一周、第4クールが始まる。
8月の上旬まで快進撃を続けていたチームは、中旬に入ってその足を僅かに止める。8月の16日から9月5日まで、約3週間の間に6試合。そのうちホームゲームで使われる会場は室蘭と函館で、地元札幌で行われる試合はなかった。全ての試合に移動が伴う。しかも本当はこの期間5試合だったのが、台風の影響で延期になった7月の徳島戦が連戦の最後に組まれた。すべて移動ありの4連戦になり、中2日、札幌開催なし、という過酷な日程が待ち構えた。
この6試合の中で札幌が得た勝ち点は7。アウェイで京都に勝ち、ホームで湘南に敗れ、4連戦の最初の山形では勝ち、移動して中3日で迎えた水戸には約1年ぶりのホーム勝利を彼等に与え、中2日の函館で愛媛には引き分け。そこでは選手の疲労感が目に見えて判るほどの苦しさで、移動に伴う疲労も去ることながら、昇格というものに対する有形無形のプレッシャーがチームにのしかかっていることを十二分に感じさせた。それでも容赦なく次の試合はやってくる、さらにそこから中2日で徳島。なんとか乗り切ってほしいと思ったけれど、待ち構えていた徳島は高いモチベーションで札幌を圧倒することになった。今季初の3点差負けを喫し、徳島はJで対札幌初勝利を得ることになった。
自動昇格圏内の2位以内を確保するのに、3位との差は二桁ある。あるとはいえ、このまま楽に第4クールを乗り切れるわけがない。蓄積疲労などでパフォーマンスの落ちてきているレギュラー組、それでもチームの力を落とさないためには、ここまで出場機会に恵まれていないサブ組の奮起が重要になる。そこでもしも試合に出られないからと、腐ってしまわれていたら、第4クールの戦いは相当に暗雲が立ち込める。
ここまで誰か一人、スーパーな選手が活躍して勝ってきたわけじゃない。誰か一人に頼って勝ってこれたわけじゃない。そこにいる選手達の総力戦で勝ってこれた。最後のクールは、公式戦のピッチの上にいなくても、チームに関わる全ての人間達の総力戦で戦わねばならない。それが出来る素地は、あるのか。
9月9日、J2のほかのチームは第3クール最終ゲームを戦う日に自分達は1回休み。ジェフ千葉とのサテライトゲームが組まれていた。サテライトの会場は宮の沢、隣に「白い恋人」の工場が立つ。工場から漂う甘いバニラの匂いに包まれて試合や練習を見るのがそれまで当たり前だったのに、その日は何の匂いもなく。いつもたくさんの観光客を乗せたバスが止まっている駐車場に人影もなく、中庭の花は誰に見られることもなく咲いている。
いろんなことを思う。
報道ではまるで金の亡者のような扱われ方をしていた石水前社長は、しかし私達にとっては気さくな存在だった。チームが出来てまだ年浅いころ、インターネット黎明期の僅かな数のファンサイトに自らやってきて、時々チャットに参加してくるような、そんな「普通に熱心なサポーター」だった。「しゃちょー」と気軽に声をかけられた、サポーター仲間のひとり、のような感覚。
悪いことをした、それは私達に庇えるものではないし、庇うものでもないだろう。けれどもそれとは別のところで、「仲間」がいなくなっている寂しさを感じている。いつかまたみんなで笑える日が、甘い匂いに包まれながら練習を見る日が来るのを、静かに待っている。
札幌ではしばらく試合がなかったこともあって、サテライトゲームでも観客は大勢集まってくる。ジェフの選手はユースの子が半分ぐらいの構成。相手がJ1といえど、力関係ではこちらのほうが上か。そういう相手に選手達はどういうモチベーションで臨むか…。自分自身しばらくぶりに見る選手もいる。
結論から言うとモチベーションに関する部分は杞憂だった。
課題点をいまだ抱える選手も勿論いる。いるけれども、課題はあるにせよ、それでもトップの試合に出たい。チャンスが欲しい。そういう乾き、飢えを感じさせる選手のプレーもまた、いくつもあった。ユースの選手相手にがむしゃらに向かっていく姿を何度も見る。このままでこの一年を終わりたくなんてない。そういう意思が感じ取れた。試合も、先制こそ許したものの、その後相手DFの退場もあって後半はほぼ攻撃練習と化し、5−1で試合を勝って終える。第4クールの総力戦、選手達は戦えそうだと確認する。
だけどそれでも苦しい時は来るだろう。「総力戦」というのは何も選手達だけの話ではない。チームに関わる全ての人達の総力戦、でもある。自分達サポーターも、寄せられる力のどんな僅かでも、チームに寄せたい。応援の打ち合わせをしてたらファミレスに4時間も居座ってしまった、と若手サポが笑う。よりたくさんのお客さんに来てほしいから、と友人知人を誘って動員を増やす動きもある。みんながそれぞれの場所で、それぞれのやりかたで、勝ち取る為に戦っている。
そう、いま自分達は、負けない為に戦っているのじゃない。なくさないために戦っているのじゃない。過去数年のあいだそうしてきたのとは今は違う。勝つために、望む未来を勝ち取るために戦っている。
負けない為に必死にやってた自分達が、勝ち取るために戦えている、この現実を踏みしめて向かうは第4クール。そこにあるものは間違いなく楽な戦いではない。どこのチームもみんな、それぞれの戦いの意思を抱いて向かってくる。自分達と同じように勝ち取るためにやってくるチーム、失わないためにやってくるチーム、プライドを賭けてくるチーム、それらすべてに挑んでゆく。けれど挑んでいかなければならないのは選手達だけではない。選手達だけで戦わせなど、絶対にしない。「総力戦」は、文字通り札幌の総力戦であれ。
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