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 頑張れ!女子サッカー 06/06/10 (土) <前へ次へindexへ>
INACレオネッサ、新ステージに挑む。

 兎と亀の1stラウンド。
 

 取材・文/西森彰
mocなでしこリーグ・ディビジョン1 第3節 INACレオネッサvsスペランツァF.C.高槻
2006年6月4日(日)14:00キックオフ アスパ五色 観衆:283人 天候:晴
試合結果/INACレオネッサ1−2スペランツァF.C.高槻(前0−1、後1−1)
試合経過/[高槻]相澤(12分)、藤川(62分)、[INAC]米津(74分)


 2節を消化してまだ白星がないINACレオネッサとスペランツァF.C.高槻。残留を当面の目標とするチーム同士の直接対決。序盤ながら、双方にとってビッグゲームであることは間違いない。

 ホームのINACレオネッサは、昨シーズンに二部で優勝し、昇格してきたニューフェースだ。昇格が見えてきた頃から一部の各チームとトレーニングマッチを行ってきたが、結果は芳しくなかった。残留の計算を立てるためには、補強をする必要があった。伊賀FCくノ一から原歩、藤村智美、そして韓国代表の李珍和と実力者の補強に成功。4-3-3で、攻撃サッカーをコンセプトにして上位進出を狙う。

 一方、スペランツァF.C.高槻はINACと対照的に、ほとんど昨年と変わらないメンバー構成。この日のイレブンを見ても2トップの一角に伊丹絵美が入ったくらいで、今年も4-4-2で戦う。現・なでしこジャパンこそいないものの、年代別候補で国際試合を経験している選手も多く、関西エリアの有力選手を輩出してきたクラブ。厳しい環境下で長い間、一緒にサッカーをやることで生まれる団結力は強い。



 現状のチーム完成度では上回る高槻が、先手をとるべく仕掛けていった。「今日は大事なゲーム。ここ2試合、上位と当たって、そこで良いゲームができていたので、いけると思っていた」(細田真砂智監督・高槻)。INACもひるむことなく、これに応戦。アスパ五色の第2試合は、キックオフから激しい試合になった。

 そして12分、高槻にスコアが記される。左サイドハーフ・相澤舞衣の上げたクロスが、上空の風にも乗ったか、意外に伸びて、ゴールギリギリに飛び込む。幸運な1点を挙げ、喜ぶ高槻イレブン。INACも20分にコーナーキックから、中野絵美が強烈なシュートを放ったが、密集の中にいた高槻DFの体に当たって弾道を変えられ、バーを直撃と明暗くっきり。

「最初の1点が事故みたいに入ってしまって、そこからバタバタ慌ててしまった。またバーに当たったあのシュートが入っていれば、多少は落ち着くことができたと思うんですが…」とINACの田渕径二監督。その後も追うINACがゲームを支配していたが、高槻GK・海堀あゆみが安定したセーブを見せてゴールを許さない。高槻が1点のリードを保ったまま折り返した。



「もう点をとるしかない」

 ピッチ上の選手だけでなく、田渕監督にも焦る気持ちはあった。そして後半頭から、守備を安定させるためにセンターバックで先発させていた藤村を、右サイドバックに移し、ここにいた李を左に回す。両翼からクロスを入れて、これを3トップが狙う。49分、ゴンサルベス、51分に途中出場のモラエスと、ブラジル人プレーヤーが決定機を掴んだが、これをシュートミス。なかなかゴールを奪えない。

 一方、高槻は、51分、相澤のきれいなループシュートがゴールラインを割っていないとの判定で得点を取り消される不利はあったものの、後半も粘り強く戦い続ける。そして、63分、左サイドからのクロスに、後半から投入されていた新戦力・藤川絵利子がきれいに頭をあわせて2点目を奪う。良い時間帯に入った追加点を追い風にして、高槻はここから30分間、守り倒しにいった。

 2点を追うINACの田渕監督は、平野回梨佳、原歩を立て続けに投入し、70分を待たずに全てのカードを切った。原にボールを集めてゴールを狙うINAC。その攻撃がようやく実ったのは75分。原が右サイドに捌いたボールを、藤村が中央へ球足の速いアーリークロス。長い距離を懸命に走って追いついた左サイドの米津美和は、強靭な足腰で踏ん張り、きちんと高槻ゴールにシュートを蹴りこんだ。

 ここから先はほとんどの時間を、高槻のゴール前で過ごした両チーム。戦術うんぬんは関係なく、気持ちの勝負だ。INACは何度もチャンスを掴んだ。しかし、最後の場面で、シュートは枠を逸れ、あるいは立ちふさがるDFに当たり、再びゴールネットを揺らすことはなかった。



 高槻はこれが嬉しい今期初勝利。厳しいゲームを制した細田監督は「耐えられる力がついて、安定感が出てきた。昔だったら、あのループシュートの得点が取り消されたところで、気持ちが切れてしまっていたと思うし、そういう面では成長していると思います」。鍔迫り合いの展開を制した最大の勝因を、メンタル面での成長に求めていた。

 トップ下の松田望、そしてアンカーの庭田亜樹子は、セーフティーにきっちりとビルドアップした。走力勝負に持ち込まれていたら、練習量で勝るINACが有利。きっちりとボールを動かす自分たちのサッカーができていたのも大きかったはず。そして、好セーブを連発した海堀と最後まで体を寄せきったDF陣の奮闘も讃えられて良いだろう。

 これで3節を消化して1勝2敗。敗れた相手はTASAKIペルーレFC、日テレ・ベレーザと女子サッカー界の2強とも言える存在。ある意味、仕方のない結果だ。次節の相手は岡山湯郷Belle、その次が東京電力女子サッカー部マリーゼ。決して手が届かない相手ではない。完成度の高さが最大の強み。第1クールの間に、勝ち点を稼いでおくことが、ディビジョン1残留のカギになる。



 敗れたINACはボールポゼッション、そして作り出した決定機の数ともに、高槻を大きく上回っていた。「戦う気持ちのところをしっかりしていかないと、上のチームと戦う上で厳しくなってしまう」(田渕監督)と敗者も、ギリギリの場面でメンタルの差が出たことを認める。内容的には勝ちゲームとも言えただけに、悔しい敗戦だ。

「点を取りにいくということだったんですが、ちょっと時間が早すぎました。(高槻の)センターバック2枚に隙がなかった。原の投入まで引っ張ってから動くべきでした。ボクの采配ミスですね」

 藤村、李のポジション変更について尋ねると、田渕監督は反省の弁を述べた。実際に藤村の攻撃参加からゴールが生まれているし、終盤まで引っ張って追いつけなかった場合には後悔が残ったはず。妥当な戦術変更だったようにも思えるが、そこは外から俯瞰している部外者と、結果をひっくり返すべく戦っている当事者の温度差だろう。

 それでも「少しずつ良くなってきています。第1クールできちんと戦えれば、第2クールからは残留も見えてくるんじゃないでしょうか」とポジティブな部分にも目を向けた田渕監督。新しいステージに立って戦い始めた、新しいチーム。ひとつひとつ経験を積みながら強くなっていくはずだ。


(INACレオネッサ) (スペランツァF.C.高槻)
GK: 高田鈴子 GK: 海堀あゆみ
DF: 李珍和、藤村智美、保手濱理恵、柳井里奈 DF: 高見恵子、奥田亜希子、中鍋美里、小野村亜矢
MF: 角田英子(68分/原歩)、小林未央、中野絵美(65分/平野回梨佳) MF: 庭田亜樹子、櫻田有幾子(81分/久山暖香)、相澤舞衣、松田望
FW: ゴンサルベス、渡邉千尋(42分/モラエス)、米津美和 FW: 伊丹絵美、中江真紀(58分/藤川絵利子)
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