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 頑張れ!女子サッカー 06/10/18 (水) <前へ次へindexへ>
「日テレのボール回し」対「TASAKIのプレス」

 日テレ、リーグ戦2年ぶりの敗北。そして決着はプレーオフへ。
 

 取材・文/西森彰
mocなでしこリーグ ディビジョン1 第14節 日テレ・ベレーザvs.TASAKIペルーレFC
2006年10月15日(日)13:00キックオフ 国立西が丘サッカー場 観衆:約1,000人 天候:晴
試合結果/日テレ・ベレーザ1−2TASAKIペルーレFC(前0ー1、後1ー1)
試合経過/[TASAKI]阪口(44分)、大谷(68分)、[日テレ]澤(83分)


「浦和に勝った直後のマリーゼ戦で引き分けて、あれでムードがしぼんでしまった。自信を持てないままに国体に入って…。準決勝で負けたのはPKで先に1点取られて、その後にまたセットプレーでやられて、もうそこで終わり。ただ、1回戦の時から、選手たちがおっかなびっくり戦っている状態だったんです」(仲井昇監督・TASAKIペルーレFC)

 日テレ・ベレーザと首位を並走していた浦和レッドダイヤモンズレディースをアウェーで破ったのがひとつのピークだった。同じ中1日でもフィジカルで勝る分、有利な日程と思われたTEPCOマリーゼ戦を引き分けたあたりから雲行きは怪しくなった。そして、今年の最大目標であったはずの地元で行われたのじぎく国体は、準決勝で伊賀FCくノ一主体の三重県女子代表に敗れ去った。

 INACレオネッサとの兵庫ダービーは辛うじて制したものの、アウェーの日テレ戦に向けて、TASAKIペルーレFCにポジティブな要素はほとんどなかった。ここで負けるとリーグ優勝の可能性が完全に消える。仲井監督は、「このゲームに勝ったら、リーグの流れは絶対に変わる。この一戦だけは絶対に取ろう」と選手たちに語りかけた。

 迎え撃つ日テレは、浦和に6、TASAKIに8の勝ち点差をつけている。ゴールディファレンスは二桁以上の差になり、セーフティーリードは誰の目にも明らかだ。「ビッグゲーム」ということは頭で理解していたろうが、どうしても余裕が出てくる。



TASAKIの応援団はバックスタンドに陣取る。
互いに動いた直後、大谷が追加点をあげる。
 キックオフから主導権を握ったのは、日テレだった。ビッグゲームではお馴染みとなった、酒井與惠と川上直子を中盤の底に据えるボックス型の4−4−2。いつもどおり、ミッドフィールドでのボール狩りに備えた布陣だ。

 ところがTASAKIは中盤での争いを放棄する。網を張ったのは、永里優季と大野忍の2トップ、そして澤穂希、伊藤香菜子の4人が侵入するアタッキングゾーン。ここを最終ラインの4枚と中岡麻衣子、新甫まどかの6人で固めた。さらに日テレのボランチには、ワイパー役として阪口夢穂と山本絵美が付く。

 予想よりも引き気味の相手に対して、日テレはトリッキーな仕掛けを織り交ぜた、多彩な攻めを展開した。しかし、このゾーンでは人数で上回るTASAKIは粘り強く人につき、シュートコースを消す。「日テレが攻撃でリズムを作っていくように、TASAKIは守備でリズムを作っていくチーム」(磯崎浩美)。日テレの攻勢だったが、TASAKIの守備陣は時間を追うごとに安定していった。

 ミスがなかったわけではない。下小鶴綾は、大野のフォアチェイスによって一度ならずボールを奪われていたし、GKの佐々木香織はバックパスを手で拾い上げ、さらにすんなりと日テレの選手に渡して大ピンチを招いた。ただし、この日は良い意味でミスをすぐに頭から消し去り、次のプレーに移った。下小鶴は、何度も相手FWの突破を防いだし、佐々木はビッグセーブでピンチを救った。

 さらに、守り抜いた後のカウンターできっちりとゴールを奪った。どちらも新加入した10番が絡んでいた。前半ロスタイムのゴールは、相手ゴール前で生まれた混戦のこぼれ球を、難しい体勢から阪口がねじ込んだ。そして、68分の得点も、スピードに乗ったカウンターで右サイドに開いた阪口のセンタリングを、昨年の得点王・大谷未央が流し込んだ。

 1点目は、日テレGK・小野寺志保が難しいボールに飛び出し、2点目は川上のクリアミスと、どちらも相手のミスが絡んでいたが、試合の勝敗を決めるのは、それをモノにした回数だ。この日の日テレは、中途半端なポジショニングをしていた佐々木の頭上を抜く、澤のループシュートただ1回しかチャンスを活かすことができなかった。



 TASAKIは、シーズン頭のなでしこスーパーカップに続き、日テレに今期2勝目を飾った。数年間、90分以内のゲームで勝てなかったライバルへの苦手意識を払拭する、大きな勝利だった。勝因はいくつかあるが、最大のものは自分たちが設定した勝負のゾーンに、相手を引っ張り込んだことだろう。

 この試合、TASAKIから見て自陣は6対4、ハーフウェー前後は2対2、そして相手陣に2対4と3つのブロックが形成された。もちろん、一番、人が密集している自陣内で勝つことが大前提。そして、数的不利が生まれる最前線には、縦横無尽に走る大谷と、強いし、高いボールで競れる鈴木智子を起用した。1対1で負けない2トップを置くことが、日テレのサイドバックの攻め上がりに無言のプレッシャーをかけた。

澤の追撃弾に日テレのファンも活気づいたが・・・。
濱崎覚美主審の笛が、日テレのリーグ無敗記録に終わりを告げた。
 仲井監督は試合後、タバコを旨そうに吸いながら、会心の笑顔を見せた。相手の攻め疲れを誘っておいてのカウンター2発。狙い通りだろう。「前半、偶然にも守りきれた(笑)。それと阪口のゴールが大きかったですね。本当に難しい姿勢から、良く決めてくれました。これで自信を持ってやれるのかな。ちょっとはリーグを面白くできるかな?」。

 これで日テレとの勝ち点は5差に詰まった。苦しい状況は続いているが、次節の浦和戦に勝てるようなら、日テレへの挑戦権を手にすることができる。まだ、わからない。



 日テレは、浦和戦で見せた強さがどこかに消え去ったかのような試合振りで、リーグ戦2年ぶりの敗戦を喫した。人に強い酒井と川上のいるエリア以外での競り合いが多かったのは事実だが、鬼気迫るような球際での迫力が感じられなかったのだ。

「イエローカードの累積でリーチがかかっている選手は、意識のどこかで無理をしないようにしてしまったかもしれません。それでも、戦っていない選手や考えてプレーしていない選手はいなかったと思います。きっちりと引いた相手にどう対処するか、その狙いを持ったプレーを見せてくれた。だから、今日は結果こそ出ませんでしたが、私は試合内容には満足しています」

「結果を出すことだけを考えれば、ウチのFWのフィジカルを活かして、相手の裏を狙い続けたほうが良いかもしれない。でも、そうやって結果だけに拘ったサッカーをやっていると、どんどん自分たちのサッカーが荒れていってしまう。指導者として、できるだけ見ていて面白いサッカーをしたいと思っていますし、そのあたりのバランスですね」

 松田監督は、敗戦後とは思えない笑顔を浮かべながら「この敗戦で、失うものがなくなって、また、良い方向に持っていけると思います」と締めた。2年ぶりの敗戦にも指揮官は手ごたえを感じている。それは選手たちも同じ。西が丘サッカー場の出口で待ち受けるファンの元に向かった誰一人として、暗い表情は残していなかった。









(日テレ・ベレーザ) (TASAKIペルーレFC)
GK: 小野寺志保 GK: 佐々木香織
DF: 中地舞、岩清水梓、須藤安紀子、豊田奈夕葉(65分/荒川恵理子) DF: 甲斐潤子、磯ア浩美、下小鶴綾、佐野弘子
MF: 川上直子、酒井與惠、伊藤香菜子、澤穂希 MF: 新甫まどか、中岡麻衣子、阪口夢穂、山本絵美
FW: 大野忍、永里優季 FW: 大谷未央、鈴木智子(68分/大石沙弥香)
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