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 頑張れ!女子サッカー 06/11/07 (火) <前へ次へindexへ>

 日テレ、有終の美。プレーオフを3連勝で締めくくる。
 

 取材・文/西森彰
mocなでしこリーグ・ディビジョン1プレーオフ3日目 日テレ・ベレーザvs.浦和レッドダイヤモンズレディース
2006年11月4日(土)13:00キックオフ 国立西が丘サッカー場 観衆:約1,500人 天候:曇り時々晴
試合結果/日テレ・ベレーザ3−0浦和レッドダイヤモンズレディース(前1−0、後2−0)
得点経過/[日テレ]永里(1分、73分)、近賀(49分)


 試合開始から1分も経っていなかった。ハーフウェー付近、ふたりの中間点に落ちたボールに、浦和レッドダイヤモンズレディースの選手同士が相手に任せようかと躊躇った隙を見逃さず、日テレ・ベレーザの19番が攫った。得点王争いのトップをひた走る永里優季だ。そのままトップスピードで浦和ゴールに迫り、ファールぎりぎりで止めにかかる浦和DFの手も振り切ってシュート。山郷のぞみの守るゴールを陥れた。

「大谷さんなら(3点は)取りかねないと思っていました」。昨シーズンの最終戦、大野忍が同様のシチュエーションで、大谷に得点王を大逆転で奪われた。そのことは、永里自身も僅かながら意識していた。シーズン終盤には「体力的な問題。そして得点王を意識してか、良い判断ができなくなっていた」(松田岳夫監督・日テレ)ために、交代でピッチを後にする試合が続いていた。そんなもやもやを振り払う一撃だった。

「(浦和とは一見、差があるように見えるが)まだまだ紙一重という部分はあります。今日は先制点がああいう形で来たというのが大きかったと思います」と日テレの松田監督。「前後半の開始直後の失点、特に自分たちのミスで相手に与えてしまった試合開始直後のゴールは、日テレとの力差を考えた場合、致命傷だった」と浦和の永井良和監督。「自分で大谷を突き放す。勝ってシーズンを締めくくる」。そんな強い意志を発散させていたエースのゴールが決まった瞬間、ゲームの大勢は決していた。



 浦和の選手たちから、闘志が失せてしまったわけではない。同日に地元・駒場スタジアムで行われるトップチームの天皇杯ではなく、西が丘サッカー場を選択したファンの声援に報いようと、激しく抵抗した。中1日のスケジュールもあって、ほとんど何もできずに土俵を割った駒沢オリンピック記念陸上競技場のゲームとは、メンタル、フィジカルの両面で全く違う動きを見せて、激しいプレス合戦を挑んだ。だが皮肉にも浦和の激しい抵抗が、却って日テレの凄みを際立たせた。

 序盤戦では、酒井與惠と川上直子という人に強い選手の能力でセカンドボールを拾っていたが、酒井を累積警告による出場停止で欠いたこのゲームでは「準備の差」で優位に立った。相手ボールに対する寄せの速さという点では、浦和も決して見劣りしなかった。むしろ、そこにかける人数では上回っていたかも知れない。決定的に違ったのは、寄せられた時に持っていた選択枝の数である。

「お互いに勝ちたい、点を取りたいという気持ちが出れば出るほど、ボールに対するアプローチが速くなって、ルーズボールが増えてくると思っていたので、こぼれ球に対する準備というのは意識していました。結果的にそこでボールを拾えたというのが、自分たちの攻撃をスムーズにできたと思います」(松田監督)

 指揮官が常に言い聞かせてきた「良い攻撃をするための、オフ・ザ・ボールでの準備」を、日テレの選手たちはサボらずに行なった。お互いのバランス、空いているスペース、そしてボールホルダーの余裕を考えながら動く。その結果としてパスコースは増え、ルーズボールも一方的に拾うことができた。永井監督に「日テレの選手たちだけは、ちょっと違う」と嘆息させたのは、そのあたりだろう。

 そして、その違いはプレッシャーがかかる、レベルの高いゲームの中でこそ発露してくる。日テレの強さを一番感じるのは、浦和やTASAKIペルーレFCら、優勝を争うライバルとのゲームだ。松田監督も「勝負どころだった駒沢の浦和戦、そしてアウェーのTASAKI戦は、しっかりと結果を出して来ていたので、『ギリギリのところでは力を出せるんだな』というのは再確認できました」。

 もっとも選手たちのモチベーションに拠るところも大きい。「(相手が浦和やTASAKIだと)やっぱり、選手それぞれの中で『絶対に負けたくない』という気持ちがあって、それがグラウンドの中で出ているんだと思います」(澤穂希・日テレ)。



「首都圏に良い施設があって、コーチからきちんとした指導を受けられる。スタンドから厳しい目で試合を見守るファンも大勢いらっしゃる。今はまだ、練習が夜に行なわれていますが、日中にトレーニングを行なえるようになったら、環境面で他のチームはついて来れなくなるかもしれませんね」

 かつて浦和の前身・さいたまレイナスFCを指揮していた田口禎則・日本サッカー協会女子委員は、浦和の秘めるポテンシャルをそう語っている。日テレ、TASAKIとの差を認識しながら臨んだ今シーズン、気がつけばTASAKIを順位でも対戦成績でも上回っていた。未来に希望をつなぐシーズンだったと言えよう。

「勝ち点3差なら、得失点で何点開かれていても可能性は残っています。可能性がある限りは優勝を狙います」と言い続けた永井監督。そして「2位になれたといっても、優勝ができなかったわけですから…。2位も5位も同じです」と悔しそうに語った木原梢。チームは、失ったプライドを確実に取り戻した。



 昨年の最終戦は同じ相手にスコアレスドロー。今年はきっちりと勝ってリーグ戦を締めくくることができた。澤は「やっぱり、勝ちと引分けでは全く違いますね。『必ず勝って優勝するんだ』と監督にも伝えられていましたし、私たち自身もそれを考えながら今週のトレーニングに臨んでいましたから」と、勝ち点で突き放しての優勝に大きな価値を見出していた。

 一方、松田監督は「自分たちの力を常に発揮し続ける難しさを感じたシーズンでした」と今期を回顧する。ベタ引き一辺倒の相手をどう崩すかだけに頭のほとんどを使っていた昨シーズンとは打って変わって、今年はどのチームも日テレを「ひとつの対戦相手」と看做して挑戦してきた。3バックから4バックにシステムを変更したTASAKIには2敗を喫し、浦和も新戦力を積極的に取り入れながら個の力を上げてきている。まだ「紙一重」と謙遜する以上の力差は感じるが、安穏としていられるほどに大きくないこともまた事実だ。

 それを踏まえながら、反省点と課題についてこう語った。「チームとしてのカバーリングに助けられているだけで、個々の局面でやられている場面はいくつもある。だから、今後は個の力を上げていかなくてはいけないと感じました。世界を相手にしても、1対1の弱さをカバーリングで補おうということに意識が行ってしまっている。ひとりひとりの強さにポイントを絞れなかったという点が反省点です」。

 それでも、日テレの選手たちは、日々成長の一途を辿っている。「チームの勝利が大前提にあって、個人タイトルは後からついてくるものだと思っています。まだ、ワールドカップにも行ける権利をとれていないし、アジアカップで得点王をとったという実感はありません」。リーグ得点王に輝いた永里たちは、その先にある世界との戦いに目を向けている。

 後続との差を振り返るのではなく、自分で作り出した仮想敵を追いかける。だから彼女たちは、先頭を走り続けているのだ。


(日テレ・ベレーザ)
GK: 小野寺志保
DF: 中地舞、岩清水梓、須藤安紀子、豊田奈夕葉
MF: 川上直子、伊藤香菜子、近賀ゆかり(64分/荒川恵理子)、澤穂希
FW: 大野忍、永里優季

(浦和レッドダイヤモンズレディース)
GK: 山郷のぞみ
DF: 木原梢、田代久美子、笠嶋由恵、岩倉三恵(84分/保坂のどか)
MF: 安藤梢、高橋彩子、柳田美幸、百武江梨(53分/松田典子)
FW: 北本綾子、窪田飛鳥(61分/若林エリ)
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