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| 頑張れ!女子サッカー 06/11/10 (金) | <前へ|次へ|indexへ> |
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3年越しの夢、今ここに。新潟、ディビジョン1昇格決定! 取材・文/西森彰 |
mocなでしこリーグ・ディビジョン2第21節 バニーズ京都サッカークラブvs.アルビレックス新潟レディース
2006年11月5日(日)12:00キックオフ 滋賀県希望が丘文化公園競技場 観衆:約200人 天候:晴れ
試合結果/バニーズ京都サッカークラブ0−2アルビレックス新潟レディース(前0−1、後0−1)
得点経過/[新潟]野村(27分)、中島(65分)
なでしこリーグ・ディビジョン2の昇格争いは最終節までもつれ込んだ。共に勝ち点48で並ぶ、首位のアルビレックス新潟レディースと2位の大原学園JaSRA女子サッカークラブには、ゴールディファレンスで16の開きがある。前日の日テレ・ベレーザ対浦和レッドダイヤモンズレディースと違い、直接対決ではない。一見した限りではひっくり返る可能性は無さそうにも見える。
だが、大原学園の対戦相手は、前節までの20試合で101失点を喫し、新潟に1試合15失点を奪われたルネサンス熊本フットボールクラブだ。常識的には同一リーグに所属しているチーム同士のゲームで、20点近い大量得点は望めないはずだが、何があろうと入れ替え戦出場はできる大原学園に全くリスクはない。何かの弾みでポンポンとゴールが決まってしまうことは、サッカーの世界ではままある。「まさか」の事態ではあるが…。
そして、ここまで2戦2勝と相性が良く見える対戦相手のバニーズ京都フットボールクラブだが、その指揮官は昨年まで新潟を率いていた牛浜真監督。新潟の選手たちの特徴を知りぬいているはずだし、ピッチで相対する選手の中には、ディビジョン1での経験が豊富な三浦香子らがいる。自分たちが落ちてきたところへ上ろうとする相手に、容易く道を譲るはずがない。このプレッシャーがかかる状況で戦う相手としては、決して歓迎できるチームではないのだ。
チームとして3年越しの昇格に王手をかけた新潟の鳴尾直軌監督は、先発メンバーを誰にするべきか悩んだ。ここ2試合をドローで終え、昇格には最低でも勝利が必要だ。「この試合にかける選手の思いを優先すべきか、それとも…」。ここまで20試合の道のりを振り返った。2敗もしたのに、まだ首位にいる。そして、ゴールディファレンスで圧倒的な優位に立っている。それが誰のおかげなのか。そこに思い当たった。
「ウチには二桁得点を記録した選手たちが6人いる。彼女たちのゴールのおかげで今日まで首位に立っている」。鳴尾監督は、その全員を先発で起用することを、試合会場に向かう前のショート・ミーティングで発表した。イビチャ・オシム日本代表監督がいたら「水を運ぶ選手」の所在を尋ねられたかもしれない。チームバランスが少々悪くなるのは承知の上だった。
昨年の高校選手権の覇者・野洲高校のグラウンドから車で15分足らずのところにある、希望が丘文化公園競技場。そのバックスタンドの芝生席には、オレンジ色の集落ができていた。試合前から選手に声援を飛ばすファンを前に、プレッシャーからか選手たちの動きは硬い。鳴尾監督が、懸命に緊張をほぐそうと試みる間に、試合前の練習時間は終了を告げた。待ったなし。
「いつもどおり、今までやってきたことを全部出し切ろう。泣いても笑っても最後の試合だ。その試合をいろいろな条件が揃っている、最高の舞台でできる。こんな幸せなことはないんだから、試合に出る選手は悔いの残らないプレーをやろう」
指揮官は、試合前の円陣でそう言って選手たちを送り出した。
新潟の選手たちは、明らかに気負っていた。試合開始から22秒で、22番の上尾野辺めぐみがシュートを放つ。ボールはあさっての方向に飛んだが、鳴尾監督は「OK、OK」と前向きに声を張り上げる。シュートで終わっておけば、カウンターも食わないし、積極的に打つことでリズムも生まれる。最初の5分間でペースを掴んだ新潟。7分には、牧野愛美のシュートが右ポストを直撃するなど、先制点は時間の問題かと思われた。
ところが、京都もたった1プレーで新潟の攻撃を頓挫させた。相手陣内で得たFKに、矢田貝実希子が向かう。矢田貝が蹴ったボールは、ぽっかりとフリーになっていた永吉麗奈の頭にピッタリとあった。永吉の放ったヘディングシュートは、新潟のクロスバーを直撃した。ガツンという音が、新潟の選手たちに恐怖を与えた。キックオフ直後に見られたポジティブ一辺倒のプレーが影を潜めた。
流れを止められたのが1プレーなら、失った流れを引き戻したのも1プレー。ジリジリし始めた24分、牧野が果敢なチャージで相手ボールを奪い、突進する。これによって生まれたコーナーキック2本で、新潟は落ち着きを取り戻し、再び京都陣内でプレーを始める。そして27分、右サイドを突破した中島未来のボールに、複数の選手が突っ込む。京都DFも粘り強くクリアを試みたが、混戦に断を下したのは野村千枝子だった。
待望の先制ゴールを奪った新潟は、そのまま1点を守り、前半を終えた。1時間先に始まった大原学園対熊本の試合は既に終わっている。結果を知った鳴尾監督は「ただ、この試合に勝てば良い。伝える必要のある結果ではない」と考え、選手たちをそのまま後半のピッチへ送り出した。その背中に「大原学園7−0熊本」という場内アナウンスがかぶった。
それが新潟の選手たちに更なるプレッシャーを与えることはなかった。後半も立ち上がりから幾度もチャンスを作る。試合が決したのは67分。先制点の時と同じように、中島がスピードで突破し、決定機を迎える。それまで決定機を逃していた中島だったが「あのゴールだけなら100点です」という値千金の追加点を奪う。ピッチ上で歓喜のサルトを舞う中島。怪我を保護するためにつけていたフェースガードは既に取り払われ、その顔には会心の笑みが浮かんでいた。
新潟は2点のリードを考えた試合運びで、その時を待つ。「L1へ行こう、俺たちと行こう〜」。約2分間のロスタイム、ファンの歌声を心地よく聞きながら、プレーし続けた新潟の選手たちの耳に、タイムアップを告げる笛の音が届いた。
京都の牛浜監督は、どんな思いで試合を見守ったのだろう。ゴールキーパーもいないようなゼロからのスタートで、昇格を迎えるチームのベースを作った。鳴尾監督の采配に応えて、柔軟なポジション交代に適応した新潟の選手たち。そのポリバレントな部分は、牛浜監督の指導で伸ばされたと言っていいだろう。
「今回はゼロからではなく、それまでのものを引き継ぎながらのリスタート。また別の難しい部分はあります。ただ、それは引き受ける時に分かっていたことですから。京都の地に女子サッカーの文化を根付かせることも重要です」
だらしなく無抵抗で、試合を終えるのではなく、全力を出してピッチに倒れ付した京都の選手たち。また来シーズン、彼女たちは土のグラウンドからディビジョン1を目指す。
その脇で新潟はチームがファンと喜びを分かち合う。鳴尾監督は、勝ち越していないチームを2つ残して上がることに、大きな悔しさを滲ませた。「大原学園には2分け1敗、福岡J・アンクラスには1勝1敗1分け。でも、逆にそれだけ無駄な試合がないリーグ戦で、苦しみながらも最後に自力で優勝できる可能性を残してこられた。それを評価してあげたい」。
一番のポイントとして、ロスタイムのゴールで勝った国体の北信越ブロック大会決勝戦を挙げた。松本広域公園アルウィンで大原学園に敗れて2位に後退したすぐ2週間後、会場は奇しくも同じアルウィンだった。「2週間で同じ相手に2度負けたら、絶対にリーグ戦にダメージを残す。絶対に勝つ」。2週間、大原学園主体の長野県代表に勝つことだけを考えて、一丸となって練習し、ロスタイムのゴールで競り勝った。そして本大会でもTASAKIペルーレFC主体の兵庫県代表と延長戦までもつれ込む健闘を見せた。それらひとつひとつの貴重な経験が、若いチームの血となり肉となった。
この日、先制点に絡み、追加点を挙げる大活躍を見せた中島は「今シーズンは無理。この後もサッカーができないかもしれない」という大怪我から復活し、この日を迎えた。普段は新潟市内の介護施設で働いている。「職場の理解もあるし、サッカーに専念できる環境が整っている」と言う中島は、清水第八SC出身。ハーフコートにも満たない土のグラウンドで練習を続けてきた彼女は、新潟の選手たちがいかに恵まれているかを知っていた。
「だからこそ勝たなくちゃいけないし、昇格しなきゃいけない。もちろん、チームとしての目標でもありましたけれども、本当にたくさんの支えてくれている人たちのために勝たなければいけないと思っていました」
試合後にファンからサインを求められた彼女は「今の心境を一言添えてください」と言われて、こう書き加えた。
「新潟最高!!」
| (バニーズ京都サッカークラブ) | (アルビレックス新潟レディース) | |||||||
| GK: | 上野友紀子 | GK: | 轟奈都子 | |||||
| DF: | 清水千浪、近藤朋香、上田早紀子 | DF: | 井上光保(63分/大堀幸恵)、江橋桂、川村優理 | |||||
| MF: | 渡辺樹里、矢田貝実希子、佐野絵美(75分/松下淳子)、三浦香子、天満舞 | MF: | 片桐ひろみ(85分/田中桜)、野村千枝子、吉本宏美、牧野愛美、上尾野辺めぐみ | |||||
| FW: | 永吉麗奈(70分/薬師寺良子)、榎木園美加 | FW: | 田辺友恵(76分/藤巻藍子)、中島未来 | |||||
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