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 頑張れ!女子サッカー 07/03/08 (木) <前へ次へindexへ>

 プレイバック 2003女子ワールドカップ・アメリカ大会 大陸間プレーオフ 〜(後編)
 「あの時はね。とにかく、いろんなことに感動していましたよ」

 取材協力/吉田弘U-16日本女子代表監督(なでしこジャパン前ヘッドコーチ)
 取材・文/西森彰
 今回、吉田弘U-16日本女子代表監督は、チームの最終調整が行われた鹿児島合宿の忙しいスケジュールを縫って、30分近いロングインタビューに応じてくれた。

 チームは、高校女子サッカー界屈指の強豪と連日、練習試合を行っていた。平均年齢で1、2歳年上の鳳凰高校、神村学園高校を相手に3対1、1対2。「今は合宿が始まってから疲れがピークに達している時期だし、午前中にもハードなトレーニングを行っているんだから、午後のゲーム(神村学園戦)で負けたのは仕方ありませんね」とチームの仕上がりに戸惑いは見せていない。今日、3月8日からマレーシアで行われるAFC U-16女子選手権大会2007は、そのまま世界大会へ通じる扉でもある。

「この年代の世界大会に出場して、そこで経験を積んでいかなければいけないと思います。世界的に見ても、この年代を比べる限りはそこそこトップクラスのあたりに位置していると思うんですよ。だから、日本の特性、個性を活かしながら、世界に通じる選手を育てていかなくちゃいけない。彼女たちをどれだけ上の世代につなげていけるかが私の仕事だと思っています。それはアテネまでの戦いを通じて一番感じた部分なんですよ」

 U-16代表の合宿には、最終登録の23名よりも多い26選手が召集された。チームの照準は、初戦で戦う強敵・北朝鮮戦でも、ましてや決勝でもなく準決勝に合わされている。ケガ人などのアクシデントにも対応できる余裕を持った召集人数や、世界大会の切符がかかるゲームから逆算したピーキング。それらは、これまでなでしこジャパンが味わった苦い経験が元になっている。

 先頭を進む彼女たちが残したものは、成功であれ、失敗であれ、後に続く者たちの糧であり、道しるべになる。そして、現在のなでしこブームを築き上げたきっかけは、確かに4年前のプレーオフだった。



 アウェーの第1戦を2対2で引き分けた日本女子代表は、猛烈な追い風に乗って帰国した。まず、週半ば、いきなりFIFA(国際サッカー連盟)が「今回の大陸間プレーオフにもアウェーゴール2倍ルールが適用される」と通達してきた。

「本当にいきなり知らせが入ったんですよね。やっぱり大きかったと思いますよ。第1戦でこちらは2点をとっていたので、1対1、0対0が許される状況になりましたから」

 そして、決戦当日の7月12日は、太陽が照りつけた上に猛烈な蒸し暑さを伴う、日本特有の真夏日。メキシコの選手たちは、試合前のシュート練習の時点で、目の焦点が合っていない。真夏日でもデーゲームが続く過酷なリーグ日程をこなしていた日本の選手たちは、灼熱の太陽さえも味方だった。

 日本を出発する時にはほとんど関心を払われていなかった彼女たちは、7万人以上の敵対感情を凌ぎきったことに感動したサッカーファンの注目を集めていた。ファンはインターネットを中心にして、互いにサポートを呼びかけあい、日本サッカー協会はオフィシャルホームページのトップでポップアップ告知を行った。ある者はブルーのユニフォームに身を包み、またある者はその後に向かう贔屓のクラブのユニフォームを纏い、国立霞ヶ丘陸上競技場に集結した。その数1万2千人あまり。

 まったく非科学的な話ではあるが、勝負事の経験則によれば、ここまで流れができあがっていて負けるチームはそうそうない。スタッフもイレブンも戦いを前にして、既にメキシコを飲んでいた。ロースコアゲームに持ち込むようなケチなゲームプランはなかった。

「どんなゲームプランを立てていたか…。ハッキリとは覚えていませんでしたけれども、たぶん、上田さんらしく『きっちり勝ってワールドカップへ行こう』とか、そういう話だったと思います。0対0でも良いとか、そんなことは言わなかったんじゃないかな。第1戦を戦って、やっぱり、メキシコのキープレーヤーはドミンゲスだったので、これに磯ア(浩美)をつけました」

 現在、キャプテンマークを腕に巻くようになった日本屈指のマンマーカーは、メキシコのエースをほぼ完封した。そして、後半、足が止まった相手に対し、日本は澤穂希の先制ゴール、そして交代出場の丸山桂里奈の右太ももに当たってコロコロと入る追加点によって、2点を奪う。メキシコのチャンスは、山本絵美のゴールライン上のクリアや、声援に飲まれた第1副審が旗を上げる幻のオフサイドなどによって失われた。

 最終スコアは2対0。アウェーの2対2とあわせてトータルスコア4対2。日本の4大会連続女子ワールドカップ出場が決まった。インタビューマイクを向けられた当時のキャプテン・大部由美は、思わず言葉を詰まらせた。オーロラビジョンに映し出されたその涙を見て、ともにボールを追いかけた仲間はもらい泣きし、声援を送り続けたサポーターは、今度は大きな拍手を送った。

 翌日、スポーツ新聞の紙面は、彼女たちの健闘を讃える記事と写真で埋め尽くされた。当時、停滞気味のジーコ・ジャパンに苛立っていたサッカーファンは、彼女たちのひたむきな戦いぶりによって、溜まったフラストレーションを発散させられた。苦情を寄せられることが多かった日本サッカー協会の代表電話にも、この試合の翌日ばかりは試合時間の設定や、集中的な告知などバックアップ体制を賞賛する声が多かったという。

「(『翌日の朝刊はほぼ一面でした。それをご覧になってどう感じられましたか?』)いやあ、それはもうあの時はね。とにかく、いろんなことに感動していましたよ。メキシコに行ってあれだけの人数の前で試合ができたとか、高地で苦い思いをして『コーチの分は点滴がないよ』って言われたとか(笑)、日本でも1万2千人のサポーターが来てくれたとか…」



 なでしこジャパンが世界切符を賭けてトルーカで戦う3月17日、マレーシアでも妹分のU-16日本女子代表が決勝戦を予定している。「そこに立たなきゃいけませんね」と言っていた吉田監督は、地球の裏側にいる元教え子たちと同日Vに向けて戦っているはずだ。もちろん、あの7月12日と同じ、パーフェクトゲームを目指して…。


<参考>
第4回女子ワールドカップ・アメリカ大会 大陸間プレーオフ第2戦

2003年7月12日 日本2−0メキシコ
GK: 山郷のぞみ
DF: 磯ア浩美、大部由美、矢野喬子
MF: 川上直子、酒井與惠、宮本ともみ、山本絵美、澤穂希、小林弥生(丸山桂里奈)
FW: 大谷未央(荒川恵里子)

第4回女子ワールドカップ・アメリカ大会 プレーオフ直前コラム
http://2002world.fc2web.com/column/women/2003/030710_nishimori.html

第4回女子ワールドカップ・アメリカ大会 プレーオフ第2戦マッチレポート
http://2002world.fc2web.com/column/women/2003/030715_nishimori.html
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