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| 頑張れ!女子サッカー 07/03/13 (火) | <前へ|次へ|indexへ> |
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神風、吹く。日本、最低限のノルマを果たす。 取材・文/西森彰 |
2007FIFA女子ワールドカップ・中国大会 プレーオフ第1戦 日本女子代表vs.メキシコ女子代表
2007年3月10日(土)14:03キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:10,107人 天候:晴一時曇
試合結果/日本女子代表2−0メキシコ女子代表(前1−0、後1−0)
得点経過/[日本]澤(38分)、宮間(70分)
なでしこジャパンにとって重要な、そしてメキシコにとっても重要な、180分間+αの大一番がいよいよ幕を開けた。
「昨日から緊張していて『まあ、明日になったら少しはマシになるかな』と思っていたけれど、もっとひどくなっていた。アップからもう緊張しっぱなし」
ワンチャンスをモノにして、レギュラーの座に定着した岩清水梓でさえ、懸かっている物の大きさを意識して緊張していた。キプロス遠征から抜擢された近賀ゆかり、宇津木瑠美の緊張たるや推して知るべし。特に近賀はユニバーシアードの経験こそあるものの「彼女にとって、こんな大舞台は初めてだったと思う」(酒井與惠)。日本のDF陣でまともな精神状態を維持していられたのは、腕にキャプテンマークを巻いた磯ア浩美くらいだったろう。
アウェーゴールのリスクを避けるために、大橋浩司監督は相手の攻撃の起点となる、右サイドハーフのモニカ・ゴンサレスを封じ、さらにそこを攻勢点にしようと、アジア大会では右の攻撃的MFを務めることの多かった宮間あやを、3ボランチの左に置いた。そして右サイドは近賀を縦に走らせ、酒井がその上がったスペースをケアする。中央に座す宮本がサイドチェンジで攻撃を司る。中盤の役割分担はこのようになっていた。しかし、この机上のプランはあっという間に崩れ去った。
まず、第一にゴンサレスのポジショニングが絶妙だった。宮間の数メートル背後、宇津木の10メートル以上前方。それを基本ポジションに、前後にユラユラと動いて、日本のマーカーをハッキリさせない。これによって、宮間は後ろ髪を引かれ、宇津木は中央のカバーリングに集中できない。右サイドでは「縦の突破と、運動量を生かそうと思った」という近賀の攻め上がりを受けて、酒井がスペースを埋めるために右へ引っ張られる。
必然的に、中央は薄くなった。展開力が持ち味の宮本ともみが広いスペースにひとり残され、サイドバックの支援を受けられない岩清水と磯アは、メキシコのFWと1対1を強いられる。たった4枚のアタッカーに、7枚いるはずの日本守備陣は翻弄されていた。
日本の攻撃プランは3重になっていた。荒川恵里子をターゲットにして、大野忍をライン裏に走らせるファーストプラン。相手ボランチが大野の走り込みを警戒して、バイタルエリアが空いたらそこからミドルシュートというセカンドプラン。しかし、攻撃エリアにいる選手数は日本が3枚でメキシコが6枚。大野にひとりふたりがついていっても、まだまだDFの枚数が余っている。
ラッシュをかけるべく、わざわざ風上を選んでいた日本だが、立ち上がりから20分間は完全なメキシコペースだった。
皮肉にも流れを変えたのは、日本がミスから与えた決定機である。20分、センターサークル付近でパスコースを切られた宮本が、メキシコにボールを奪われる。鋭いカウンターからメキシコのエース、マリベル・ドミンゲスのシュートを浴びたが、プレーオフを前に「1点も取らせない。180分間を0で抑えれば絶対に勝てますから」と語っていた守護神・福元美穂がビッグセーブ。キックオフからの相手ペースを断ち切った。
すると、飛ばしていたメキシコの足が止まり始めた前半の残り10分過ぎから、日本のパスがつながり始める。そして、大野、宮間の動きで混乱した左サイドを、宇津木が初めてオーバーラップ。深いところまで持ち込んで、中央へ折り返す。事前のスカウティングどおり、ボールウォッチャーになった相手DFを見ながら、その背後に滑り込んだのは澤穂希。4年前と同じ左からのハイボールを頭であわせ、4年前と同じGKの守る、4年前と同じサイドのゴールに叩き込んだ。
「打った瞬間に『入った』という感触があったんです。このゴールが代表60点目だったんですね。記念のゴールをここでとれて良かったです」と澤。このゴールは、それまで消極的だった宇津木のプレーを目立ってポジティブな方向に変える効果も生み出した。前半は1対0。決定機でエースが仕事をしたかどうかの差である。
「後半、メキシコは選手交代やポジションチェンジをやってくる」と読んでいた大橋監督だったが、まさか自分たちを最も悩ませていたプレーヤーがいなくなるとは思わなかった。「前半は4番の選手の位置が中途半端で、後ろの宇津木と自分の間でハッキリとした受け渡しができなくて、そこからピンチになっていました。『後半はしっかりしよう』とお互いに言って出てみた」と宮間。
この1戦に賭ける思いはメキシコも同じだ。
だが、あれほど日本を苦しめていたメキシコの右サイドハーフ、ゴンサレスはピッチから去っていたのである。試合後の記者会見でメキシコ代表のレオナルド・クエジャール・リベラ監督が言うには「試合中にくるぶしを負傷いたしました。それもかなり厳しい状況だと思います。くるぶしを捻った時に音がしたということです。そういうことで下げました」。最大の障害は消えた。
さらに、日本の幸運は続く。63分、メキシコのスーパーサブ、モニカ・オカンポの決定的シュートをCKに逃げる活躍を見せていた福元が、この試合で唯一、決定的なミスをした。後方からの浮き球をドミンゲスと岩清水が競り合っているところに、飛び込んでクリアしようとしたのだ。これを視界の隅に捉えたドミンゲスは、頭越しに素晴らしいループを見舞う。通常なら決まっていたはずのシュート。だが、追い風に乗ったボールは伸びすぎてバーを直撃。ゴールに入るのを阻まれた。
「今回はもっといいプレーを皆さんにお見せし、もっと日本のチームを苦しめることが出来たんですけれども、3回目の決定機に、シュートが上手く入らないでバーに当たってしまった。あれがなければ恐らく、かなりいい試合が出来たと思います。もっと日本のチームを苦しめられたと思います」(リベラ監督)
命拾いした日本は、宮本に代わって入った柳田美幸を左に、宮間をゴンサレスがいなくなった左から右に、右の酒井を中央に動かすシステム変更が当たる。バイタルエリアを潰すためのプレスバックを意図した布陣だったが、心理面でも効果をもたらした。前半の「サイドに張り出してボールを奪われたら中に戻る動き」よりも、「中を固めてボールを奪ったらサイドに飛び出す動き」のほうが、選手心理としてはやり易さを感じる。守備が安定した日本は、自信を持って攻撃に移れるようになった。
そして、70分、先制点を奪った澤が左に開いてクロスを上げると、逆サイドから中央に走り込んだ宮間が、完全にフリーでヘディングシュートを放つ。「誰が触っても入るボール。あれはほとんど澤さんのゴールです」と宮間。「ゴールしたあやが真っ直ぐ私のところに走ってきてくれたのが嬉しかった」と澤。新旧エースの揃い踏みで日本が最低目標とも言える2対0のスコアで、ホームゲームを勝ち切った。
「ほぼプランどおりではありませんでした。もっとボールを保持する時間があったり、あるいはボールを失わないサッカーができると考えていました。でも今日のようなゲーム内容は想定している範囲内のゲーム内容でして、決して想像していないようなゲーム内容ではありませんでした」
第三の攻撃プランであるサイドアタックで、ようやく2点を奪ったゲームを振り返り、大橋監督はホッと胸を撫で下ろしたことだろう。
2勝1分けの大成功を収めたキプロス遠征のシフトをオプションに持ちつつ、澤の復帰を視野に入れて、福島合宿でも第1戦の布陣(澤の入ったトップ下には柳田美幸が入っていた)を試していた。そして、紅白戦を見る限り、連携にも問題はなさそうだった。しかし、やはり真剣勝負は、その場になってみないとわからない。メキシコが4年前よりも遥かに良いチームになっていたことと、「先攻」ゆえのプレッシャー。いろいろな要素が絡み合って、冷や汗を流す内容になった。
福元がストップした2本はともかく、頭上を抜く弾道へのフォロー(追い風)は「神風」そのもの。その他にも、メキシコの正GKの調整遅れや、ゴンサレス、オカンポらの負傷など、日本は本当にツイていた。それだけの好材料、好条件が揃っていて、それでも2対0なのだ。楽観視は全くできない。
「もし日本にとって不利があるとすれば、あるいは私たちにとって利点があるとすればやはり向こうは高地だということですね。ですから時差については同じですけれど、高地という面では確かに差があるかもしれません」(リベラ監督)
苦境に立たされた敵将が縋りつく最後の希望は、標高2,600mのスタジアムだ。天空に限りなく近いエスタディオ・ネメシオ・ディエス。ワールドカップ出場のためには、まだ90分+αの息苦しい戦いが待ち受けている。
●レオナルド・クエジャール・リベラ監督(メキシコ女子代表)記者会見 ●大橋浩司監督(日本女子代表)記者会見
| (日本女子代表) | (メキシコ女子代表) | |||||||
| GK: | 福元美穂 | GK: | パメラ・タホナル | |||||
| DF: | 近賀ゆかり、磯ア浩美、岩清水梓、宇津木瑠美 | DF: | エリザベス・パトリシア・ゴメス、ルビ・マルレネ・サンドバル、マリア・デ・ヘスス・カスティージョ、ルス・デル・ロザリオ・サウセド | |||||
| MF: | 酒井與惠、宮本ともみ(55分/柳田美幸)、宮間あや、澤穂希 | MF: | モニカ・クリスティーヌ・ゴンサレス(H.T/モニカ・オカンポ)、グアダルペ・ウォルビス、モニカ・ベルガラ(H.T/ファティマ・レイバ)、パトリシア・ペレス(76分/チャーリン・コラール) | |||||
| FW: | 大野忍(68分/永里優季)、荒川恵理子 | FW: | マリベル・ドミンゲス、エブリン・ロペス | |||||
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