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 頑張れ!女子サッカー 07/04/28 (土) <前へ次へindexへ>
メキシコのゴールハンター、ドミンゲス。

 標高2,600mの戦い 〜その4
 2007FIFA女子W杯中国大会 プレーオフ第2戦 メキシコ女子代表vs.日本女子代表

 取材・文/西森彰
 一方的に押し込まれる展開の中で、荒川恵里子がアウェーゴールを奪った。机上の計算では安全圏に逃げ込んだかに思われた。だが、メキシコはそれでも諦めずに食らいついてきた。ファティマ・レイパのPK成功で、このゲームの中では同点。中国行きへのアドバンテージは2.5点に減った。スタンドは、ようやく入場できたメキシコ人たちに埋め尽くされ、スタンドの一般席で観戦していた私は、隅へ隅へと駆逐された。ピッチ上でも様相がかぶった。

「(『1点取って決まったかに見えたあと、一気にガッと来られて面食らった?』)いえ、そんなことはないです。メキシコはホームだし、気持ちが折れるようなことはないチームだと思っていました」

 相手の勢いに戸惑った日本が混乱しているように見えたが、宮間あやはそれを否定する。彼女は28分に奪われた失点をマークのズレと捉えた。右サイドからゴメスがハイボールを上げた。左右の違いこそあれ、10分前にPKを取られたのと同じ形。中央ではエブリン・ロペスを岩清水梓が、マリベル・ドミンゲスを磯ア浩美が受け持っていた。宮間は、ファーサイドにいるオカンポを近賀ゆかりに任せ、自分はバイタルエリアを埋めながら、セカンドボールの処理に備えた。

 ところが、磯アがドミンゲスのマークを捨てて、岩清水とロペスのマッチアップに加勢した。ボールの落ち際で2対1なら勝てると判断したのだろうか。しかし、高地特有の気圧により通常と異なる変化をきたしたボールは、日本のDFに目測を誤らせ、その後方に流れていく。待ち構えていたドミンゲスも処理をもたついたが、全くのフリー。シュート体勢を整えるだけの十分な時間があった。

「あの場面では磯アさんが9番(ドミンゲス)を掴んでいると思ったので、近賀に17番(オカンポ)をマークさせたわけですが、私が17番に付いて近賀を中央に動かすべきでした」

 宮間は、奪われたゴールから逆算した対処法を提示したが、これも結果論だろう。仮に宮間が言った方法で、このクロスを凌げたとしても、かなりの確率でポッカリと空いたペナルティボックス付近から2次攻撃にさらされる。「ハイボールに対するトレーニングはだいぶしていたんですけれども、落下地点がなかなか掴めなくて、マイボールにできなかったり、マイボールにしたところでなかなか前に出て行けなかった」(大橋監督)。相手の注文どおり、戦場を自陣深くに持ち込まれては、失点も時間の問題だったように思う。



 一方的なメキシコペースが堰き止められたのは、ほんのワンプレーによるものだった。久々にパスをつないだ日本が、澤穂希にボールを託す。メキシコDFの厳しいチャージが、その大腿部から腰を襲う。澤はもんどりうってピッチに倒れ、すぐに担架が呼び込まれる。それまで、福元美穂のゴールキックを除いては、ほとんど息の入らなかったこのゲームで、初めて2分間ほどのインターバルが生まれた。

「宙を飛んでたでしょ? 本当に痛かった」

 試合終了後、澤は顔をしかめながら、そう振り返った。だが、試合全体から見た場合、この中断が痛かったのはメキシコだった。日本の選手たちに息を整え、至近距離で声をかけあう時間が生まれた。反対にメキシコの選手たちは、ようやく自分たちの疲労に気付き始めた。興奮が沸点に達していたスタンドも完全に水を差された。

 数分間の中断が開けると、スペースを縫うように日本のショートパスがつながり始める。34分、宮間、大野忍、澤とボールを回し、柳田美幸が当たり損ねながら、久々のシュート。さらに35分、柳田からのボールを受けた大野がゴールバーを直撃するシュートを放つ。完全に普段のサッカーを取り戻した日本は、残る15分間を優勢のままに戦い抜き、前半終了の笛を聞いた。



 ハーフタイム。日本の報道陣は一様に顔色が悪い。きっと自分の顔もそうなっていたのだろう。環境的な息苦しさとともに、状況的な厳しさが加わる。残り45分間をどう戦うべきなのか。前半終了間際の良いイメージを持ったまま、まともに戦ったほうが良いのか。それとも守り倒しにいくべきなのか。双方を考えても最悪のケースだけが浮かび、心臓は早鐘を打ち、酸素を要求してくる。その前に思いがけない人物が現れた。

「ボラ・ミルティノビッチだよ。彼はグレートパーソンなんだ」

 メキシコのカメラマンが自慢げに触れて回る。「日本でも彼は有名さ。メキシコ、コスタリカ、アメリカ、ナイジェリア…」とワールドカップの決勝トーナメントへ連れて行った国々を挙げていくと、件のカメラマンは「中国でもワールドカップには出た」。ワールドカップで恐らく史上最多の5カ国を指揮したこの監督は、機嫌良さそうに報道陣ひとりひとりと握手をしながら談笑している。この難解な局面の大盤解説を願い出た。

「ボラさん、日本とメキシコ、どっちが有利だと思いますか?」
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