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 頑張れ!女子サッカー 07/05/14 (月) <前へ次へindexへ>
スタジアムの誰もが信じられない展開になった。

 驚きはピッチ上に、スタンドに。
 

 取材・文/西森彰
mocなでしこリーグ2007 ディビジョン1 第2節 アルビレックス新潟レディースvs.日テレ・ベレーザ
2007年5月3日(木・祝)13:01キックオフ 東北電力スタジアムビッグスワン 観衆:7,889人 天候:晴
試合結果/アルビレックス新潟レディース0−0日テレ・ベレーザ(前0−0、後0−0)


 3年越しでようやく昇格なったアルビレックス新潟レディースは、開幕戦で浦和レッドダイヤモンズレディースに1対4と敗れた。前年度2位の次はディフェンディング・チャンピオンの日テレ・ベレーザである。

 新潟にとってのディビジョン1・ホーム開幕戦とあって、クラブも観客動員に力を尽くした。トップチームの柏レイソル戦パブリックビューイングを試合後に予定していた。さらにオーロラビジョンを使った選手発表や、入場ミュージックなどはトップチームの時と同じ演出が行われる。晴れ渡った天気とビッグスワンでの開催も、ファンの足をスタジアムに向けたのかもしれない。

 そうした努力と幸運が絡み合って、入場者数は「なでしこリーグ」と愛称変更されて以来最多となる7,889人にも達した。



ベレーザの猛攻も、得点にはつながらない。
タイムアップの瞬間、ベンチの選手も勝ったかのように抱き合った。
「試合前に、あの日のことを思い出している選手もいました」と新潟の鳴尾直軌監督は言う。あの日とは、2年前に行われた「TSUTAYA CUP なでしこジャパンvsアルビレックス新潟レディース 小林幸子 中越大震災復興支援チャリティマッチ」。新潟は、21,156人の観客を前に9対0と木っ端微塵に粉砕された。ビッグスワンを蹂躙していったなでしこジャパンの主力はもちろん、この日の対戦相手・日テレの選手たちだった。

 開幕戦の時から「一番大事なのは、第3節の大原学園JaSRA戦」と考えていた鳴尾監督は、田辺友恵と上尾野辺めぐみを温存する形でスタートした。試合前のゲームプランは「先制されるまで11人を引っ張って、その後、反撃のためにフレッシュな選手を入れる」というもの。彼我の戦力差を知らない人間からは消極的とも受け取れる、しかし、いたって現実的な考え方だった。

 開幕戦の4バックから、この日は3バックにシステムを変更。大野忍には熊谷さやかと井上光保が対応し、トップ下の澤穂希には田中桜がマンマーク。「速い選手には速い選手を、強い選手には強い選手をつけました。ゾーンで守って相手を自由にさせてしまうよりも、人についたほうがまだ守れると思いました」。鳴尾監督は、徹底的な水際戦術を指示した。

 これがものの見事に嵌った。新潟陣内でボールを動かす日テレだが、前目のプレーヤーがDFに張り付かれて、窮屈なプレーを強いられる。決定的なシーンと言えば、26分にコーナーキックから荒川恵里子が頭であわせたものくらい。だがこれも新潟GK・轟奈都子の好セーブに遭う。第1節で大原学園から7ゴールを挙げていた日テレの攻撃は、45分間に渡って沈黙を強いられた。

 相手の攻撃にいつもほどの冴えがなく、自分たちの守備が集中している。その展開の中で、鳴尾監督が引き分けを初めて意識したのは、後半に入って15分ほどが経過したところだった。そこから、日テレ相手に本気で勝ち点をもぎ取りにいった。牧野愛美から、上尾野辺、田中から藤巻藍子という交代は、ゴールを狙うというより、運動量の維持に力点が置かれたもの。

 手ぶらでは帰れない日テレも、終盤からはコンビネーションだけではなく、個の強さにモノを言わせた力攻めも交える。それを7,889人の声援を受けて踏ん張る新潟の選手たち、とりわけゴールマウスに立ちはだかる轟が防ぐ。澤の至近距離からのヘディングシュート、荒川、大野のビッグチャンスもゴールには至らず。前後半90分間を凌ぎきった新潟は、ディビジョン1昇格後初めての勝ち点を、日テレから奪うことに成功した。



「やっぱり、まだまだだね」と日テレの中畑成部長は苦笑する。大勝した開幕戦の後も、最後に喫した失点をはじめ、松田監督は選手たちに苦言を呈していたという。この日は「日テレといえどもシーズン始めは難しい」ことを実感させるゲームとなった。昨シーズンとはシステムや選手も変わって、ある程度のもたつきは覚悟の上だろう。シーズンは長く、この1試合の結果を取り上げてどうこう言う必要もない。

 いっぽうの新潟から見れば、女王との引き分けには大きな価値を見出せる。ロースコアでの引き分け狙いには「ゴールを狙えばもっとチャンスがあったのでは」という意見もぶつけられていた。だが「失点後の反撃」という試合前のゲームプランに比べれば、十分積極的なもの。守り倒しにいった挙句、試合終了間際の失点などで敗れればその後に気持ちを持っていくのも難しい。勇気のある采配だったと思う。

 ただサッカーが難しいのは、日テレと引き分けても、大原学園と引き分けても得られるのは同じ勝ち点1だということ。「予定よりも消耗度が高くなってしまった」という鳴尾監督の懸念どおり、3日後のゲームでは2点をリードしながら、終盤に追いつかれて引き分けてしまう。今シーズンのことだけを考えれば、やはり6ポイントゲームに全力を投じるべきだったか。

スタンドからは、温かい声援が送られていた。
 しかし、その先まで見据えれば話は違ってくる。「同じ勝ち点1でも、今日の勝ち点1は自信につながるものになったはず」。鳴尾監督の言葉どおり、選手たちのコメントからは「これでディビジョン1でやっていく自信がついた」というコメントが溢れていた。さらに「ウチと向こうの力関係については、だいたい分かっていて、それでも来てくれた」(鳴尾監督)約8千人のファンは、最後まで走り抜くこのチームに感情移入できたはずだ。

「まずはディビジョン1に残って、このカテゴリーでも新潟ブランドを浸透させていきたい」

 鳴尾監督の掲げる目標に向けて、ビッグスワンに大きな第一歩が記された。


(アルビレックス新潟レディース)
GK: 轟奈都子
DF: 井上光保、江橋桂、川村優理
MF: 熊谷さやか、片桐ひろみ、田中桜(67分/藤巻藍子)、野村千枝子、吉本宏美
FW: 牧野愛美(57分/上尾野辺めぐみ)、中島未来(88分/田辺友恵)

(日テレ・ベレーザ)
GK: 松林美久
DF: 近賀ゆかり、豊田奈夕葉、岩清水梓、中地舞
MF: 酒井與惠、伊藤香菜子、澤穂希FW: 小林弥生、荒川恵里子、大野忍
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