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 頑張れ!女子サッカー 07/06/09 (土) <前へ次へindexへ>

 見せつけた進化のスピード。
 
 
 取材・文/西森彰
アジア女子サッカー2008最終予選(北京オリンピック2008最終予選)第3節 日本女子代表vs.韓国女子代表
2007年6月3日(日)19:03キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:8,779人 天候:曇
試合結果/日本女子代表6−1韓国女子代表(前4−0、後2−1)
得点経過/[日本]宮本(9分)、大野(20分)、荒川(24分)、オウンゴール(34分)、伊藤(66分)、澤(68分)、[韓国]チョン・ヘイン(74分)


 柳田美幸がスクリーンプレーを試みようとしたところへ、韓国の高校生プレーヤー、チョン・ヘインが襲い掛かった。福元美穂の守るゴールがこじ開けられる。日本女子代表が続けてきた「国立霞ヶ丘陸上競技場公式戦無失点記録」は6試合目、524分にしてようやくピリオドが打たれた。

 だが、それが試合の趨勢に大きな影響を与えることはなかった。昨年のアジア大会セミファイナルで3対1、2年前の東アジア女子サッカー大会ではスコアレスドロー。躍進著しく見えていた韓国を相手に、日本は既に6ゴールを奪っていたのだ。



 ここまで2つの白星を積んでこの天王山に臨んだ日本に対し、韓国は初戦でタイとのホームゲームを落とし、後がない。手負いのライバルに止めを刺せば、大きく北京の本大会が近づいてくる。日本は、ゴール裏のサポーターだけでなく、メイン、バックの観客も声援を送る真剣勝負モードだった。「『チームのみんなのコンディションも良いな』というのは思っていましたし、ホームでこれだけ多くのお客さんが集まってくれて、そういったモチベーションの部分でも高かったと思います。」(磯ア浩美)。スロースターターなチームが、この日は見違えるようなスタートを切った。

 日本は中盤ダイヤモンドの4-4-2で臨んだ。韓国の4-2-3-1を完全に予測したかのように、攻撃面で持ち味のある近賀ゆかり、柳田美幸をサイドバックに起用した実質2バックの最終ライン。中盤は宮本ともみが1ボランチで舵をとり、酒井與惠が右、宮間あやが左に張り出す。トップ下にエースの澤穂希。2トップの荒川恵理子がターゲット役となり、大野忍は裏に抜け出すタイミングを計る。

 シンプルに2タッチ以内で、球足の速いパスをつなぐ日本。ボールを持っていない選手が、次のプレー、その次のプレーを予測しながら、トライアングルを作っていく。そして、相手がボールを奪おうと人数をかけてくると、引き付けておいて一瞬早くサイドチェンジ。大橋浩司監督は「選手たちは、今日、良く走ったと思います」と振り返った。単純な運動量だけでなく、その質も高かった。

 そして手薄になったサイドから攻める。酒井がフタをして、近賀が果敢にオーバーラップをかける右。宮間と柳田のコンビネーションで崩す左。先制点は9分、ショートコーナーから宮間が戻し、柳田が中央に入れたボールを、宮本が戻りながら確実に右のインステップで捉えた。我が子が見守るスタンドへ向かって手を振るママさんプレーヤーのゴールが、圧勝劇の幕開けだった。

 右サイドを近賀ゆかりが蹂躙した。「自分が上がることで相手が下がれば優位に立つことができる。そのためにもオーバーラップをするようにはしています」という右サイドバックが、機を見てスルスルと上がるたびに、味方からボールが送られる。この日はクロスを警戒して中央へ固まる相手との間合いを計りながら、積極的にシュートを放つシーンが目立った。

 さらに「韓国の反応が悪かった」という宮間は、柳田とのショートコーナーを多用する。そして20分にもショートコーナーからのクロスボールを、ファーサイドでフリーになっていた荒川が中央に戻し、密集地帯の中で、ポッカリとフリーになっていた大野が簡単に頭で押し込んで2点目を奪う。さらに荒川の得点にオウンゴールが加わり、前半で試合の大勢は決した。

 さらに後半は、柳田と途中交代で入った伊藤香菜子の左サイドが活性化。伊藤は効き足によるループシュートで得点を決めたほか、幾度もチャンスに絡み、アピールした。敵味方の選手の足が上がる中で、荒川のポストプレーも威力を増した。それが呼び込んだ混乱を活かして最後を締めたのは澤。「必ず1対1の場面が訪れると言われていた」と、GKを冷静に交わして楽にネットを揺らした。最終スコアは6対1。予選の天王山は日本が制した。



 キャプテンの磯アは「試合が始まってからすぐ、今まで戦ってきた韓国とは『ちょっと違うな』という感じはしました」と振り返った。そして荒川も「アジア大会の時と比べて、マークが緩かった」。確かに、この日の韓国には大きな問題が存在していたのだろう。レギュラークラスの選手が何人もケガに見舞われ、ベストメンバーを組めなかったのも痛かったのだろう。

 だが、この圧勝劇は、相手の問題だけによるものなのか? 例えば、2対0のスコアで終わった初戦のベトナムと比べて大きく劣るほどに、この日の韓国はひどかったのか? 私はそうは思わない。それよりも日本の良化度合いに注目したい。

 個の問題が生じたのは日本のFWと韓国のDFが対峙するところであり、それよりも前のエリアであれだけやり放題にやられれば守りようがない。そしてそこにあった差異はボールテクニックよりも動きの質であり、組織の連動性だった。「選手たちは、今日、良く走ったと思います」と大橋浩司監督が言うとおり。ボールも人も動くサッカーの見本がそこにはあった。

 試合後の記者会見で韓国女子代表のアン・ジョングァン監督は「今日は完全な敗北です。日本のほうが完全に競技力で上回っていました。『日本の実力は熟してきた』と言っても良いでしょう」と兜を脱ぎ、「荒川を自由にさせ過ぎたのではないか?」という質問に対しても「荒川選手だけをマークして勝てるような試合ではありませんでした」と答えた。

「澤選手を始めとして、全ての選手にマークが必要なのではないか。そう切実に感じました。今回の日本戦を戦うにあたって前方へのパスを強調して練習してき来ましたが、ボールを追いかけるのが精一杯で、ほとんど体力を枯渇してしまいました。そのために後半の戦いが非常に苦しくなってしまいました」

 相手の戦い方を見極めて後半にスパートという試合運びだけでなく、スタートから出鞭をくれての逃げ切りもできるようになった。様々な相手と戦う世界大会に向けて、ゲームプランの多様化は心強い限りだ。



 この日のゲーム内容から、マンマークでは日本の選手を捕まえきれないと悟ったアン監督は、ゾーンディフェンスへの切り替えも視野に入れるようなコメントを残した。しかし、本気でディフェンスのやり方の根本を変えていっても、1週間程度の練習で完全に修正できるとは思えない。今週末に行われるアウェー戦でも、よっぽど相手を舐めてかからない限り、勝ち点3は手に入れられるだろう。だが、彼女たちの目指す頂は、まだまだ高く聳えている。

「今日はすごく良い形で勝てましたけれども、それで世界に通用するかといったら、それは別の話。どんな相手に対しても世界を意識して戦わなければいけないといけません」(磯ア)

 日本は、本気で世界の頂上を意識し、到達を目指せるところまでやって来た。


●アン・ジョングァン監督(韓国女子代表)記者会見
●大橋浩司監督(日本女子代表)記者会見
●試合後の選手コメント


(日本女子代表) (韓国女子代表)
GK: 福元美穂 GK: キム・ジョンミ
DF: 近賀ゆかり(70分/安藤梢)、磯ア浩美、豊田菜夕葉、柳田美幸 DF: イ・イェウン、イ・ゲリム、キム・ユミ、ソン・ジュヒ
MF: 酒井與惠(55分/伊藤香菜子)、宮本ともみ、宮間あや、澤穂希 MF: キム・ギュルシル、ユ・ヨンシル(64分/イ・セウン)、キム・ジュヒ、ハン・ジンスク(H.T/チ・ソヨン)、キム・ジニ(72分/チョン・ヘイン)
FW: 大野忍(55分/大谷未央)、荒川恵理子 FW: パク・ヒヨン
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