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 頑張れ!女子サッカー 07/08/15 (水) <前へ次へindexへ>
なでしこリーグ各チームのブースも展開された。

 なでしこの視線は、9月に、来年に。
 

 取材・文/西森彰
アジア女子サッカー2008最終予選(北京オリンピック2008最終予選)第6節 日本女子代表vs.タイ女子代表

2007年8月12日(日)19:01キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:4,119人 天候:晴
試合結果/日本女子代表5−0タイ女子代表(前4−0、後1−0)
得点経過/[日本]大野(1分)、永里(30分)、柳田(45分)、澤(47+分)、阪口(89分)


 北京五輪出場を決定したアウェーのベトナム戦は、試合後に大橋浩司監督が内容面で釘を刺し、全般に「内容が今ひとつ」との評価だったが、コンディションを考慮すればそれほど悪いゲームには見えなかった。

 そもそも対戦相手との力差がかけ離れていては、試合内容を包括的に問うことは難しい。チームとして目指している方向性に沿ったゲーム運びができているか、そしてテーマに対する意識付け。そういった部分については五輪予選の序盤、ホームのベトナム戦、アウェーのタイ戦とは比べものにならないくらい良化していた。直前に行ったアメリカ遠征も、チームに良い意味での緊張感を生んでいたのであろう。

 無事に五輪切符を手にしての凱旋試合は、気持ちの持っていき方が難しい。その上、相手はベトナムに続いて、明らかに格下と位置づけられるタイである。



 なでしこジャパンの大橋浩司監督は、明確に「テスト」を打ち出すことで、個々の意識に張りを与えた。

「今日のゲームについては、先発出場機会の少ない選手を起用して、どれくらいやれるのかチャレンジをしました。この1週間、高校生の選手と試合をして疲労が蓄積していたので、このようなメンバーでスタートしました」

 タイは4バックで極端に高いフラットラインを敷いてきた。前線からゾーンをコンパクトに保ってプレスをかけ、苦し紛れに蹴ったボールを奪うという狙いだろう。DFラインの後ろにできる広大なスペースを守るために、GKのワラポーン・ブンシンはスイーパー的な役割を受け持つ。

 大橋監督は、このシステムを事前のスカウティングで十分に承知していた。そして、試合前に3つの攻略方法を選手たちへ伝達していた。すなわち「ドリブル」「2列目からの飛び出し」「サイド攻撃」である。試合開始直後、右サイドでDFと体を入れ替えた大野忍が、GKのポジションを確認して、グラウンダーのボールを流し込む。試合開始から30秒も経たないところでの先制パンチとなった。

 その後も日本は、FWを囮にして2列目の選手が飛び出していく。それでもタイは頑なに自分たちのスタイルを固守する。なるほど、AFCの最優秀選手候補にノミネートされたチャンペン・シースゥームを始め、ボールを丁寧につなごうとする意識はあるし、前線からのチェックもなかなか厳しい。しかし、それは日本が得意とする土俵に上がってしまうことでもある。

「シースゥームは非常に上手い選手です。アジアサッカー協会から最も優れた選手の5人に選ばれています。しかし、日本の中盤は澤選手ひとりが素晴らしいわけでなく、澤選手レベルの選手がたくさんいます。いかに素晴らしい選手が私たちにいても、その選手ひとりで日本の中盤を突破するのは不可能です」(チャナ・ヨットプラン監督・タイ女子代表)

 スペースの狭い中での攻防は、彼我のテクニックの差をくっきりと浮かび上がらせた。時間を追うごとに、日本の選手の動き出し、そしてボール回しが、タイの選手の追跡を振り切っていく。中盤でノープレッシャーになる選手が出始め、そこから走りこむ選手とスルーパスのタイミングを合わせていく。単純に呼吸が合わなかった場面や、パスミス、そして副審の旗によって潰えたものもあったが、ハーフタイムを迎えるまでに4点を挙げていた。

 勝負を決めた日本は、後半45分間も、本番に向けたコンビネーション等の確認に費やした。メキシコ戦では破綻したシングルボランチの宮本ともみと、右の酒井與惠の距離感。あるいは宮間あやと酒井のコンビネーション、そして原歩の左サイドでのプレー…。中国のピッチで使えるレベルにあるかどうか、大橋監督はそれぞれの連携に目を光らせた。



選手紹介パネルも設置された。
 敗れたタイのチャナ・ヨットプラン監督は、素直に力負けを認めた上で、若い力に未来を期待するコメントを残した。

「日本の皆様には『北京五輪出場おめでとうございます』と申し上げたいと思います。日本は非常に準備が整っていて、逆に私たちは簡単な試合とはいえませんでした。タイの代表選手は世界でも最も若い選手で構成されたチームで、今日のゲームでも19歳以下の選手がたくさんいます。そういう選手たちが強い日本と戦いました。まあ、本当に日本は強かったです」

「これから2年ぐらい時間をかけて、もっと日本に対して効果的な試合をできるようにチームを育てていきたいです。5年前、タイは韓国に10点差以上をつけられて負けました。ところが今回の予選では韓国に対して1勝1分けです。この後は東南アジアの大会に出場する予定です。FIFAランキングは62位でしたが、今では33位になりました。年末までには20位未満になりたいと思います」

 一方、日本の大橋監督は、この日の勝利よりも、9月に迫ったワールドカップへ意識は向けられていた。

「アメリカ遠征では、なかなか相手のサイドを押し返すことができなかったのは事実です。ただ、日本の良さを出すには、リアクションではなく、アクションを求めていかなくてはいけないと思います。ワールドカップでは、片方で受けて片方で攻める形になるかも知れないし、あるいは両サイドでアップダウンができる形を出せたりするかも知れません。ただ、現実としては、もっと個々のレベルアップをしていかなくてはいけないと思います」



 アピールチャンスをもらった、現時点で控え組の選手たちは、試合後にそれぞれ何とも微妙な表情。強烈なミドルシュートを始め、それなりに見せ場を作った原歩でさえ「決めたかった。あそこで決めておかないとダメですね」。オフに召集を受けた時には、腰痛ですぐに離脱。プレーオフにも間に合わず、今予選の天王山・韓国戦でも召集されながらベンチ入りを外れていた。

「何回か呼んでもらっていたんで、いろいろ言われながらも覚えていかなきゃと思っていました。(大橋監督のチームが)やろうとしていることは分かっていたし、入って自分がどれだけできるかということ。合わせるよりも自分ができることを出そうとしたら、チームのみんなが合わせてくれた。連携が上手くいっているように見えたのなら、そういうことだと思います」

 いきなりの大抜擢も彼女には練習の延長線上ということだろう。ベレーザ出身でもあり、連携の部分で戸惑うところはなかったようだ。

「まだまだみんなに負けていられない。がむしゃらに食らいついていけば、気持ちのこもったプレーを続けていれば、結果もそのうちついてくるんじゃないか。今はそう思っています」



 アメリカ遠征でも結果を残し、この日も1得点を加えた永里優季も「アメリカ戦からだんだん状態が下がってきてしまって(苦笑)、今日はあの1点だけですね。もっと決めなければいけないチャンスがありました」。

 しかし、消化試合での1ゴールは小さい意味しか持たないようで、実は大きな因縁を断ち切るゴールだった。永里のアテネ五輪本大会メンバー入りを阻んだ要因のひとつと思われるのが、チャンスを与えられた予選のタイ戦での無得点。しかも、自分のシュートがバーを叩いた後にゴール内でバウンドしたところを、主審にも副審にも見逃されてノーゴールとなるジャッジを下され、普段なら犯さないようなミスを連発したのだった。

 同じ舞台で同じ相手。「試合前に、特に意識したりすることはなかったけれども、覚えてはいた」という永里。30分のゴールは、世界大会に気持ち良く臨む上でも、区切りのゴールとなったはずだ。

 滑り込んだベテランMFと、巻き返しを図る若手ストライカーは、既に次のチャンスに目を向けている。チーム内の競争激化は、指揮官が求める個のレベルアップにつながる道でもある。


(日本女子代表) (タイ女子代表)
GK: 山郷のぞみ GK: ワラポーン・ブンシン
DF: 安藤梢(73分/宮本ともみ)、磯ア浩美、岩清水梓、豊田奈夕葉(H.T/宮間あや) DF: ベンチャワン・ジェーンアッタ(44分/ダーラット・チャーンプルッグ)、スパーポーン・ゲウベーン、ティダーラット・ウィワースック、ドゥアンナパ・シータラー
MF: 原歩、酒井與惠、柳田美幸、澤穂希 MF: チッタワン・チャーウォン、ワライポーン・ブッドゥアン(76分/スカンヤー・ペーンテーム)、チャンペン・シースゥーム、アヌッサラー・マイチャルーン
FW: 大野忍、永里優季(57分/阪口夢穂) FW: ニサー・ロムイエン、ピサマイ・ソーンサーイ(H.T/スニサー・サーンタイソン)
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