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 頑張れ!女子サッカー 07/09/04 (火) <前へ次へindexへ>

 悔しいドローにも手応えあり
 

 取材・文/西森彰
キリンチャレンジカップ2007〜FIFA女子ワールドカップ中国2007に向けての壮行試合〜 日本女子代表vs.カナダ女子代表
2007年8月30日(木)19:03キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:1,952人 天候:曇
試合結果/日本女子代表0−0カナダ女子代表(前0−0、後0−0)


 なでしこジャパンのチーム内に、大橋浩司監督の戦術は浸透し、大会を前にひとつの完成形となっている。いくらなんでもそろそろ対イングランド、対アルゼンチンを考える段階だと思うが、選手たちに話を聞いてみても、未だにグループリーグの対戦国のビデオなどは見せられていないという。

「私のほうでは、グループリーグで対戦する3カ国のビデオは見ました。ただ、まだ選手には見せていません。いきなり見せても混乱するだけなので、我々スタッフで整理してから。それに相手のことを知るだけでなく、それを頭に入れてトレーニングに生かせることが大事ですから」(大橋監督)

 チームのリクエストで実現したこのカナダ、ブラジルとの2連戦は、本大会であたる相手と似たような特徴のあるチームに対して、これまで積み重ねてきたことが出せるかどうか。初戦のイングランドと同様、ロングボールを主体としてパワフルな戦い方に共通点を持つカナダ。そして第2戦で戦うアルゼンチンと同じ、高いスキルを持っている南米のブラジル。世界大会前の親善試合では往々にして対戦相手に「仮想○○」という枕詞がつくが、なでしこジャパンの壮行試合2連戦についてはその形容も妥当に思える。

 そしてもうひとつ、この2連戦でテストできるのはチームの回復度、連戦に対する耐性ではないか。前日練習後の記者会見で「中2日という試合間隔や、国立からフクアリへの近距離移動など、本大会に似た環境に思えるのですが…」と私が問いかけると、大橋監督は「確かにそういったシミュレーションができますね。対戦順もそうですし」と頷いた。



 まずは、木曜日に行われたのが、仮想イングランド=カナダ戦である。

 カナダは日本にとって因縁めいた相手で、第3回女子W杯の初戦で対戦しドロー。前回も日本と同居し、ベスト8進出を賭けたグループリーグ最終戦で日本を破って勢いに乗り、一気にベスト4まで駆け上がった。五輪出場権を落とした翌年は、日本のアテネ五輪壮行試合の対戦相手として来日。前年度とは一新したメンバーで、当時、完成していた上田ジャパンに挑み、リベンジを許している。

「幸いにも今回、日本で試合ができるようになった。ここ3年ほど、予算等の関係で国際試合がなかなかできず、それが懸念事項だった。日本は高いスキルを持ったチームであり、それに対して我々はフィジカルで勝る。スタイルが違う両者のゲームは、タフなものになると思うが、それこそがワールドカップに向けて我々が必要としているものである」(イーブン・プレリュード監督)

「ワールドカップに向けてどこかの国をイメージして戦うのか」という私の質問には「いや、これはワールドカップに向けたひとつの試合、シングルゲームである」との答え。彼女たちが余所行きの戦い方をせず、普段どおりのスタイルでゲームに臨んでくれるのは、日本にとっても幸い。出場する選手が通用するかどうか、ひとつの目安になる。



 日本はいつもどおりの4-4-2。注目のサイドバックは、右が最も攻撃的なキャラクターの近賀ゆかり、左が最もディフェンス面で計算が立つ矢野喬子。両極端な組み合わせである。一方のカナダは、自国で開催された女子ユースで、あのブラジル代表のマルタ他を抑えて得点王に輝いた、エースのクリスティン・シンクレアがベンチスタート。こちらのシステムは4-3-3。

 年明けから12試合連続でゴールを奪っている日本は、早くも12分、右サイドから近賀が突破し、中央へ絶妙の折り返し。澤穂希が、これをプッシュし先制かと思われたが、カナダGKのカリーナ・ルブランの好セーブに阻まれる。その後は、ケイティ・ソーラクソンが蹴るCKから、しばしばピンチを招いたが、何とか堪えきる。そして40分、宮間あやがFKをラインとGKの間に落とし、ここに抜け出した岩清水梓と澤が押し込んだが、これもファールの判定。前半は両軍とも無得点。

 後半も一進一退の攻防。59分、カナダがサイドから抜け出したカーラ・ラングがミドルシュートをバーに当てれば、日本も1分後にカウンターから澤と宮間がチャンスを作る。71分には、カナダがCKからメリッサ・タンクレディのヘディングでゴールを奪ったかに見えたが「あの場面で目立った接触プレーはなかった。どうしてゴールが取り消されたのか理解に苦しむ」と、カナダのイーブン・プレリュード監督が憤ったジャッジに日本は救われた。

「4−2−1−3を想定していたら、トップ下のところに相手の選手がいなかった。自分のところで守備をする機会も少なかった。それに試合前、監督から『結果に拘れ。ボランチでも、勝負の場面ではリスクを背負っても前へ出ろ』と言われていたので、そうなり(前線に絡んだ攻撃参加が増え)ました」(宮本ともみ)

 疲労もピークにかかる勝負の残り10分、日本の選手たちはセットプレーも素早く行い、勝ちきろうという姿勢を見せる。1ボランチの宮本も、積極的に前へ出て、時にはFWとのワン・ツーで、カナダの最終ラインを突破しようとする。77分、近賀の突破から生まれたカナダゴール前の混戦で、雨あられとシュートを放ったのが最後のチャンス。結局、スコアレスドローで終わった。



「日本はホームなので攻撃的になり、カナダは組織的にディフェンスをする試合になるだろうと思っていた。日本のゴールチャンスは3回だけ。チーム全体で良く守ったと思う。ボールをポゼッションしようと頑張り、6回ほど決定機はあった。正直申し上げて、今日はカナダが勝ってしかるべき試合だったと思います」

 プレリュード監督は、やや憤慨したように語った。ボールをタテに長く蹴り、それを体格の差でキープ、ストライカーがゴールを脅かすという、パワー系のサッカーは健在だった。6回の決定機がどれを指すのか分からないが、きっとフリーでシュートが打てれば、距離がどうあれ得点を期待するということなのかもしれない。

 日本も大橋監督、選手の表情から、勝てなかった悔しさがにじんでいた。会見後の囲み取材で「今日は前半のうちに点をとらなければダメだったなぁ」と大橋監督が嘆息すれば、ミックスゾーンでは宮間が憮然とした表情で「今日のカナダはシンクレアも先発していなかったし、ただタテに蹴ってくるだけでした。最初から最後まで全然怖くなかったし、勝たなければいけなかったと思います」とこぼした。



 ただ、この試合を云々する上で、日本のイレブンが万全の状態には程遠かったことも考慮しなければいけない。大橋監督が「今はコンディションが底の状態」と明かしたように、本大会から逆算してハードトレーニングを積んでいる段階。直前の静岡合宿ではジュビロ磐田ユースとの30分×3本勝負も戦っている。疲労がピークに達している状態でもそれなりに戦い、スコア上は無失点に抑えたわけだ。まずまずの評価をして良いと思う。

「今年に入ってからも、それほど多くの試合を組めていない(6試合だそうだ)。できるだけ多くの選手たちを使いたい」と言っていたカナダのプレリュード監督は、宣言どおり、交代枠目一杯の6人を使った。これに対して日本は、ハーフタイム明けに荒川恵理子から永里優季、61分に酒井與惠、大野忍から柳田美幸、大谷未央と3枚のカードを切っただけ。

「本来なら3名のところ6名まで使える。ただし、チームやグループとしてやろうとしていることが上手くいっているかどうかで、交代は決めていこうと思っています。公式戦じゃないからといって、ただ単に人を代えるだけでは、チームの完成度が上がっていかない。やりたいことがやれている状況か、やれていない状況かで、それを決めていきたいと思います」

 大橋監督の交代枠に関する事前説明を聞いていた人間としては、内容面に限定すれば、指揮官の満足度は一定レベルにあると類推する。さあ、次は優勝候補の一角に挙げられているブラジル戦。なでしこジャパンの国内最終戦はいかなる結果に?

(日本女子代表) (カナダ女子代表)
GK: 福元美穂 GK: カリーナ・ルブラン
DF: 近賀ゆかり、磯ア浩美、岩清水梓、矢野喬子 DF: ロビン・ゲイル(40分/ブリタニー・ティムコ)、マルティナ・フランコ、ランディー・ハーマス、ケイティ・ソーラクソン(83分/クリスティーナ・キス)
MF: 酒井與惠(61分/柳田美幸)、宮本ともみ、宮間あや、澤穂希 MF: ソフィー・シュミット、ダイアナ・マセソン、アンドレア・ニール(H.T/キャンディス・チャプマン)
FW: 大野忍(61分/大谷未央)、荒川恵理子(H.T/永里優季) FW: カーラ・ラング(62分/クリスティン・シンクレア)、メリッサ・タンクレディ(86分/メラニー・ブース)、ジョディ・アン・ロビンソン(66分/エイミー・ウォルシュ)
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