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 頑張れ!女子サッカー 07/09/17 (月) <前へ次へindexへ>
これくらいのスピードのシュートを打つつもりで。

 願いをつなぐロスタイムのゴール。
 

 取材・文/西森彰
FIFA女子ワールドカップ中国2007 グループA第2節 日本女子代表vs.アルゼンチン女子代表
2007年9月14日(金)17:00キックオフ 上海虹口サッカー場
試合結果/日本女子代表1−0アルゼンチン女子代表(前0−0、後1−0)
得点経過/[日本]永里(91分)


 イングランド戦から中2日。中間の練習でも、先発していたイレブンの動きは当然ながら重く、別メニューの選手も出るほど、なでしこジャパンは激闘のダメージを引きずっていた。これだけ試合間隔が詰まった状況で1日の差は大きい。

 ゴールディファレンスの勝負に焦点をあてようとする報道陣に、大橋浩司監督は「日本もイングランドも、絶対にアルゼンチンに勝てるわけじゃない。それにサッカーというスポーツは、相手の気持ちが切れない限り、そうそう大量得点は取れるもんじゃない」と釘を刺した。

 倒れても倒れても前のめりになってゴールを目指したドイツ戦から3日後、アルゼンチンは現実的な戦い方に模様替えしてきた。ディフェンスラインには、第1戦が出場停止だったカタリナ・ペレスが戻ってきた。GKもロミーナ・フェロにチェンジ。そしてドイツ戦のオープンな4-4-2から、エヴァ・ゴンサレスをスイーパーに置く5-3-1-1で自陣に分厚い網を張る。



 日本は体調不良から戻った矢野喬子、第1戦で負傷した荒川恵理子の代役として永里優季が先発。ゲームへの入りも良かった。3-5-2を敷いた狙い通り、右サイドの安藤梢がゴール前に顔を出す。その安藤のシュートがポストを叩いた3分の場面までは、ゴールラッシュへの期待に満ちていた。しかし、そこからシュートそのものすら打てなくなっていく。

ファンからの熱い寄せ書きも、なでしこジャパンを見守っている。
「ゲームに良い入りをした時にはありがちなことですが、途中から足が止まってしまった」と大橋監督。自陣に入ってくる選手全員にマンマークをつけるアルゼンチンのしつこい守備が、日本選手の攻撃意欲を殺いでいく。ルーズボールの奪い合いでも、日本の選手たちが走り負ける場面も増える。休養日数の違いが出始めた。

 日本は前半途中で3バックから4バックに移行して揺さぶりをかけるが、パスの出し手と受け手にとにかく人をつけるアルゼンチンは、ポジションをファジーにした守備。バランスが崩れるのは承知の上だから、特に動じることもない。前半を終えて0対0。大量得点どころか、勝敗の雲行きまで怪しくなってきた。

 後半に入ると、アルゼンチンは2つのことだけを繰り返す。前線のマリア・ポタッサを走らせ、そこにスルーパスを出す。そしてFKを得るとどんな遠い位置からでも、ゴンサレスがハイボールをゴール前に上げる。だが、日本のDFも枚数が少ないながら良く守り、72分、ファビアナ・バレジョスのロングボールが風に乗り、日本の左ポストを直撃するシーンくらい。「最後は失点の可能性はほとんどないと思った」と大橋監督。問題はどのように崩すかだった。

 1枚目の交代は宇津木瑠美を入れてのアーリークロス。そしてアルゼンチンにゴール前の高さを意識させるために、大野忍を荒川恵理子に代えて永里との2タワーにする。最後の1枚は、混戦に強い大谷未央かと思っていたが、大橋監督が切ったのは近賀ゆかりだった。この点については試合後の記者会見で質問した。

 返ってきた答えをまとめると「アルゼンチンのDFを2タワーで中央に引きつけた。相手も疲れて走れなくなっていたので、密集している中央にFWを入れるよりも、サイドを左右のフレッシュな選手で突いたほうがチャンスを作れる可能性が高いと考えた。もちろん他の交代も含めていろいろと状況の推移を見てそうなったんですけれども」。



 まさにジョーカーとして送り込まれた近賀は「ゲーム中から、安藤選手が仕掛けて行っていたのを見ていました」。そしてピッチを後にする安藤は近賀に「仕掛けていけるよ」と一言声をかけていた。ポジション的にかぶりながら、ゲーム翌日の練習でも対人練習でパートナーを組むなど、良いライバル関係を築いているふたりの意見は、ここでも一致していた。

 そして、投入された直後に右サイドを突破してシュートまで持っていったことで、近賀の中では「やっぱりいける」という確信が生まれていた。そして運命のロスタイム、流れてきたボールを受けた近賀の前方には広大なスペースが空いていた。前半はあれほどしつこかったアルゼンチンの選手たちも、そこを埋めきれない。

 まだまだ距離はあったが、ドリブルから自分のタイミングでシュート。強烈な弾道をファンブルしたフェロの前には、永里が詰めていた。正面にGK、両サイドからDFがコースを消しにかかり、ボールは回転がかかった状態。90分間戦い抜いたFWには簡単そうで難しいシチュエーションで、吹かしても全くおかしくなかったが、永里は落ち着いて決めた。

「最後の最後で決めることができて最高です。それまでが全然ダメでしたけれども、絶対チャンスが来ると思っていました」(永里)



外見は立派なんだけれども、ピッチの芝は…。
 日本のゲームの1時間後にキックオフされたイングランド対ドイツのゲームは、雨が降りしきる中で行われて、スコアレスドロー。ドイツの選手でさえ足を取られるピッチを見る限り、第1試合で戦えたことはまだ幸せだった。

 そのドイツ代表のシルヴィア・ネイド監督は「勝ち点3を狙っていたが今日は最悪のゲーム。3日後の日本戦は、もっと良い試合を見せたい」と試合後に語った。さらに、前日のプレスカンファレンスでも「重要な試合だと認識している。日本は良いチームだけれども、我々も良いチームだから」。世界チャンピオンと真剣勝負ができるのは、結果はどうあれ、幸せなことだ。

 これまでフル代表としてはドイツに5戦全敗の日本だが、実は5年前のU-19世界選手権でドイツをロスタイムまで追い詰めたことがある。その時に先制ゴールを奪っているのが大野忍。ロスタイムの同点ゴール、勝ち越しのゴールデンゴールを奪ったのが、ドイツ代表の左SBとしてレギュラーを務めているリンダ・ブレゾニクだ。

 この日の殊勲者のひとり、近賀もその試合で涙にくれたひとりである。「あの時は勝てた試合を落としたという試合。あの時にさらに上へ行けなかったのは、あの時の実力だと思います」。そんな近賀にブレゾニクとの因縁、そしてマッチアップが予想されることを伝えると「本当ですか? それなら、ぜひ抜きたいですね」と笑みを浮かべた。

 さあ、決戦の舞台は上海から新幹線で1時間半ほど西へ行った、杭州黄龍体育場。ピッチコンディションは、上海と比べ物にならないくらい、良好である。


(日本女子代表) (アルゼンチン女子代表)
GK: 福元美穂 GK: フェロ
DF: 安藤梢(79分/近賀ゆかり)、磯ア浩美、岩清水梓、矢野喬子(50分/宇津木瑠美) DF: マンドリル、ゴンサレス、ペレス
MF: 酒井與惠、宮本ともみ、宮間あや、澤穂希 MF: フーバー(53分/オジェダ)、ヴァレジョス、キノネス(61分/メンディエタ)、ペレイラ、チャベス
FW: 永里優季、大野忍(86分/荒川恵理子) FW: ポタッサ(77分/マニクレル)、アルメイダ
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