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| 頑張れ!女子サッカー 08/08/23 (土) | <前へ|次へ|indexへ> |
| 巻き返しに向けて激しいトレーニングを重ねるアンクラス |
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苦しみを乗り越えて、いまアンクラス発進。 取材・文/中倉一志 |
自分たちの力を余すことなく相手にぶつけ、プレーは常に全力。どんな状況に追い込まれても諦めることなくゴールを目指す。そして手に入れた世界4位の座。北京五輪のなでしこジャパンの活躍は多くのサッカーファンに感動を与え、多くの女子プレーヤーに勇気を与えた。そして、今度は多くのプレーヤーたちが、もらった勇気を、再開されるなでしこリーグにぶつける番。24日、その先陣を切って福岡J・アンクラスがレベルファイブスタジアムに登場する。
さて、今シーズンの序盤戦、アンクラスは勝てない日々に苦しんだ。開幕戦で清水第八とドロー。第2節のR熊本戦で今シーズン初勝利を挙げたものの、続くバニーズ、AS狭山、FC高槻に敗れて3連敗。負け越した形で今シーズン最初の中断期間を迎えた。「シーズン途中であれ、負け越すなんて、私が福岡アンクラスFCでサッカーを始めてから初めて。そのくらい歴史をさかのぼらないとなかったこと。あの時は、本当に勝たせてあげたかった」(河島美絵監督)。
河島監督がアンクラスでサッカーを始めたのは中学生の時。クラブ史上、初めてとも言える不振にチームは大きなプレッシャーにさらされた。どんな時でもボールに食らいつくプレースタイルに、どこか迷いが感じられたのもこの頃だった。「なでしこリーグに参戦してから3年目で、Div.1昇格のチャンスと期待されてプレッシャーを感じている選手もいるし、その反面、1年目の選手も多いという部分もあったチーム。でも、そのまま開幕してしまった感じがありました」と河島監督は反省を口にする。
不信の原因は、個々の役割と責任が不明確になっていたこと。「攻守にわたって1対1での部分の責任が不明確になっていました。もちろん、連携してプレーすることは必要なんですけれども、『ボールを奪われたのは誰?』という部分が曖昧になっていて、結果的に人任せになっていた部分がありました」(同)。加えて、バックパスを奪われての失点や、シンプルにプレーしなかったばかりにゴールを許すなど、不必要な失点でゲームの流れを切ってしまう場面も目立った。
その不振から脱却すべく、5月18日からの約1ヶ月の中断期間を利用してアンクラスは立て直しを図る。ひとつは個人の責任をベースにして数的優位の状況を作り出すことだった。「個人戦術から取り組もうということで、1対1、2対2の局面のトレーニングに戻りました。たとえば、3対3の状況の時に、周りがフォローしようとして寄って行ってしまっていたので、まずボールを持っている人が1対1の状況を作って、セカンドアクションで2対1にする。そして、そこでの質を求めました」(同)
3試合連続ハットトリック中の川村真理。U-20代表候補選手
もうひとつがプレーの選択肢を持つことだった。「選手にドリブルとパスの両方の選択肢を持てと伝えました。ドリブラーはドリブルばかり、パサーはまずパスコースを探すということではなく、まず両方の選択肢を持ってから仕掛けるということです」(同)。技術的に高い選手をそろえるアンクラスにとっては、ボールをつなぐことも、ドリブルで仕掛けることも難しいことではない。しかし、プレーを限定してしまっては、結局は相手の守備網に引っかかってしまう。
そして、90分間に渡って自分たちが目指すことをやり抜くことを選手たちに求めた。「ただ何となく戦って勝った、負けたではなく、自分たちがやろうとしていることを徹底して、その成功を増やしていくこと。その結果が、勝利につながればいいと思っています。どういう状況でも、90分間同じことをやり続けることをテーマにしました」(同)。加えて、補強選手がチームにフィットし、コミュニケーションがより深く取れるようになったこともチームにとっては好影響だった。
6月15日に再開されたリーグ戦の初戦ではJEFLに1−2で敗戦、続く大原学園との試合も引き分けと、勝利は相変わらず遠かったが、それでもチームは少しずつ本来の姿を取り戻していく。「いまやっていることを信じてやっていこうということで取り組んできましたが、本当にみんなが、よく辛抱してくれました」(同)。そして迎えた第9節、アンクラスはアサヒナを8−0で一蹴。その勢いのままに、R熊本を11−0、清水第八を6−1と圧倒。本来の攻撃的なサッカーが蘇った。
その後、リーグ戦は北京五輪のために再び中断期間に入ったが、アンクラスは好調を維持している。中断期間中に行われた国体の九州代表決定戦では、ふるさと選手制度を利用してINACの選手を加えた熊本(R熊本が中心)を3−0で破ると、続く宮崎県代表には17−0と完勝。九州第一代表の座を手に入れている。「力を緩めずに最後まで自分たちのサッカーをやり通せたということもあり、内容的にも満足するものがありました」と川島監督は笑顔を見せる。
DFとしてだけではなく、攻撃能力も高い内堀律子。U-15以来、ユース年代の代表選手の常連でもある。
あとは、この勢いをリーグ戦につなげられるかだろう。また、現在の成績は4勝2分4敗の5位。首位のJEFLとの勝点差は14、2位FC高槻との差は10と離れており、モチベーションの維持という面ではチーム運営の難しさもある。しかし、河島監督は残る7試合に向けて次のように話す。「目標としてはDiv.1昇格ですが、まずは目の前の問題をクリアするということにスタッフも選手も向っています。厳しい状況だからチームのモチベーションがというのは、あまり感じません」
そして続けてくれた。「まだ発展途上のチームであり、選手も発展途上の選手が多いので、今やっていることをどれぐらい結果に出せるかが大事。もちろん、ひとつでも上の順位に行くというのが絶対ですが、まずは個人戦術をあげて、そこからグループ戦術、チーム戦術へと広げていく。そういう部分で挑戦していけば最後に笑えるかもしれません」。常に目標に向かってチャレンジし、最後まで絶対に諦めないのがアンクラススタイル。リーグ後半戦は、その姿を余すことなく見せてくれそうだ。
そのためにこだわりたいのは、チームのベースになっている個人の責任の徹底と、素早く数的優位をつくること。守備では正しいポジションからプレスをかけること。そして、選手同士で厳しく指摘しあえる環境にならないといけないと河島監督は話す。「誰に責任があるかということをトレーニングではっきりさせています。それを私が言うのではなく、選手同士で言えるようになったら、チームの力はワンランク上がると思います」。チームのためだからこそ明確に指摘し合わなければいけない部分でもある。
さて、24日に迎える相手はバニーズ。最初の対戦で競り負けたことが苦しい序盤戦を過ごすことになる引き金になっただけに、絶対に勝たなければいけない相手だ。「まずは勝ち点3を取ることが当たり前ですが、90分間、いま取り組んでいることをやり続けること。点を取っても、取られても、慌てることなく90分間やり続けることにこだわっていければいいと思います。最近結果が出ているのは、やっとみんなが理解できたのかなというのがあるので、中断前と同じようなサッカーができればと思います」(河島監督)
明るい表情にチーム状態の良さがうかがえる。
チームを後押しする明るい材料もある。先日、発表されたU-20日本女子代表候補トレーニングキャンプに、川村真理と内堀律子の2人が選出されたことだ。トレーニングキャンプは22日から始まっているが、リーグ戦出場のために、2人が合流するのはバニーズ戦終了後。その代り、JFA女子委員会の上田栄治委員長が視察に訪れることになっている。「女子委員長に直接試合を見てもらえる機会はほとんどないので、他の選手も、いい刺激になっています」(同)。2人のほかにも委員長の目に留まる選手がいるかも知れない。
上を目指して戦っていくだけのアンクラスが考えることはただひとつ。目の前の試合に、ひとつ、ひとつ全力でぶつかっていくことだけ。難しいことは何もないように見える。「いい試合ができるんじゃないですか?」。そう河島監督に声をかけると、「調子は上がってきてたんですけれども、ここでちょっとだれてきて(笑)。今シーズンは2つの中断機関があってシーズンを通しての戦い方が難しい。このスタートを開幕のつもりでやらないといけないですね」と答えが返ってきた。しかし、その表情に必要以上の緊張感はなかった。
それは選手たちも同様。明るい表情と雰囲気の中でトレーニングが行われ、ナイター照明が落ちて真っ暗になったピッチの上で車座になって、互いの課題や連携について前向きに話し合っている姿が印象的だった。そんな姿を見ながら河島監督は話してくれた。「私の中にも必要以上にプレッシャーがないのかなというのがあります。取り組んできたことがどれくらいできるのか、すごく楽しみな日曜日になるのかなって感じています。巻き返しますよ」。後半戦のアンクラスからは目が離せない。
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