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 頑張れ!女子サッカー 08/10/14 (火) <前へ次へindexへ>
4連戦の厳しい戦いを勝ち抜いたのは埼玉県代表。4年ぶり2度目の女王の座に輝く。

 埼玉、4年ぶり2度目の女王の座に輝く。
 第63回国民体育大会サッカー競技(女子) 決勝 兵庫県vs.埼玉県

 取材・文/中倉一志
2008年10月2日(水)11:30キックオフ(35分ハーフ) 中津総合運動場永添サッカー場 観衆:1100人 天候:晴
試合結果/兵庫県0−2埼玉県(前0−1、後0−1)
得点経過/[埼玉]窪田(4分)、庭田(64分)


 決勝戦に駒を進めてきたのは前年度チャンピオンの兵庫県と、その兵庫県に敗れて昨年は3位に終わった埼玉県。兵庫県はTASAKIペルーレの、埼玉県は浦和レッズレディースの、ともに単独チームで国体に臨んでいる。大会レギュレーションにより埼玉県はプロ契約選手数名を欠いているが、窪田飛鳥、若林エリらが存在感を示し、準々決勝以降は盤石の戦いを続けている。ほぼベストメンバーで臨んでいる兵庫県にとっても侮れない相手。勝負の行方は五分と五分だ。

「2連覇はもちろん大事。次につなげるためにも結果を残せばチームの自信になる」(仲井昇監督・兵庫)
「ファイナルに残った以上は一番上に行くことを目的にゲームを進めるべき。そこは絶対に外せない」(村松浩監督・埼玉)
 と両監督も優勝への意欲を強くする。

 そして、チーム関係者が各地区の一般家庭に下宿する、いわゆる「民泊」を引き受けた各家庭のみなさんや、地元中学校の生徒たちが声援を送る中、女子タイトル3冠のひとつに数えられる国体のタイトルを目指す戦いは、11:30にキックオフの笛が鳴った。



この日も存在感を見せた埼玉県代表の窪田飛鳥(赤・11)
 70分間で決着をつける国体のサッカーでは、リーグ戦とは異なる戦いが求められる。試合の中でやってくる山場はせいぜい二度。一度勢いに乗ってしまえば、その流れのままに押し切れる可能性が高い。そして、まず埼玉が仕掛けた。窪田飛鳥に楔のボールを打ち込んで高い位置に攻撃の起点を作ると、若林エリ、岩倉三恵らが裏のスペースへ飛び出していく。シンプルなつなぎから裏のスペースを狙うのは、ここまでの戦い方と同じもの。縦を意識した速い攻撃で兵庫を押し込んでいく。

 そして4分、早々とゴールが生まれる。庭田亜樹子のフィードを受けた若林エリがドリブルを仕掛けて兵庫の守備ラインを突破。そしてゴール前へ折り返す。若林への対応で兵庫DFが引っ張り出されたその場所には大きなスペースが。そして窪田がフリー待ち構えていた。あとは右足で合わせるだけだった。立ち上がりから仕掛けて主導権を握るのも準々決勝以降の埼玉の戦い方。いつもと同じやり方で、埼玉はいとも簡単に先制ゴールを手に入れた。

 一方の兵庫。立ち上がりの早い時間帯に失点するのは3試合連続。立ち上がりに集中しきれずに失点する課題はこの日も続いた。しかし、これで慌てないのが兵庫の強み。陣形をセットしなおしてゲームを落ち着かせると、田頭陽子が前線でボールをチェイシングして埼玉のパスコースを限定し、それに連動して中盤と最終ラインがコンパクトな陣形を保ったまま、ボールホルダーを網をかけるように追い込んでいく。しつこく、しつこく前から守備をする兵庫の前に、やがて埼玉は中盤から抜け出せなくなっていく。



若林(赤・右)と対峙する池田浩美(青・左)。クレバーなプレーで最終ラインを統率した。
 後半に入っても、兵庫の高い位置からの連動したプレスは緩まない。気がつけば埼玉は自陣内に押し込まれて主導権が兵庫に移った。大谷未央のポストプレーと裏への飛び出しを武器に、阪口夢穂がゲームを作り、山本絵美が気の利いたプレーでアクセントを加えていく。激しさや、派手なプレーはないが、じわじわとゴールに迫る兵庫。時間の経過とともに兵庫の包囲網が埼玉を包み込み、埼玉のプレーが限定されていく。あとは、どこで兵庫が仕留めるかに興味が移る。

 しかし、ここから試合は我慢比べの展開へと移っていく。4日間で4試合を戦う国体は、確実に選手たちの体に疲労を残す。その影響が両チームに現れ始めたからだ。ゴールに迫りながらもラストパスの精度や、互いのタイミングが合わずにシュートまで持って行けない神戸。粘り強く試合を進めるものの兵庫を押し返すまでのパワーが出せない埼玉。しかし、一瞬でも気を緩めればゲームを決めるゴールが生まれる。互いに心身ともにギリギリの状態で辛抱強く戦っていく。

 そして63分、それまで自陣でのプレーが続いていた埼玉が、兵庫にできた一瞬の隙をついてカウンターを仕掛け、若林が決定的なシュートを放つ。このプレーが埼玉イレブンに勇気を与えた。そして、その直後の64分、埼玉は勇気を形にすることに成功する。岩倉とのワンツーでペナルティエリア内に抜け出してきたのは庭田。その右足で捕らえたボールがゴールネットへと吸い込まれた。値千金のゴール。これで埼玉は4年ぶり2度目の優勝を確実なものにした。



庭田亜樹子(赤・右)は1ゴール、1アシストの活躍。埼玉に優勝をもたらした。、
「選手たちが気持も含めて頑張れた結果が、優勝という形に現れてうれしく思う。今日は、こういう環境の中で、いつもやっているサッカーをやりきることを意識してプレーしようということだったが、みんなが集中して、それをやりきってくれた結果だと思う。また、国体は、普段ゲームに出る機会の少ない選手が自分の力をチャレンジできるきっかけにもなった。優勝を含めて、我々にとっては非常に意義のある大会になった」(村松浩監督・埼玉)。この優勝で得た自信を武器に加えて、19日から再開する「なでしこリーグ」では浦和レッズレディースとして優勝を目指す。

 敗れた兵庫も、汗をかきながら粘り強く戦うチームの特徴を存分に発揮した。現時点で持てる力は全部出し切ったのではないか。ただ惜しむらくは試合開始早々の失点。大会を通じての課題だったが、この日も修正できなかったことが、最終的に勝敗を分けることになった。

 さて、この決勝戦から8日後、田崎真珠(TASAKIペルーレの親会社)はTASAKIペルーレの休部と、来年度からのなでしこリーグの脱退を発表した。かつてのバブル崩壊後、Lリーグから運営会社が次々と手を引く中、変わらぬ姿勢でチームを支え、今日まで日本女子サッカー界を支え続けてきた田崎真珠は、様々な状況の中で苦渋の決断を下した。そしてチーム関係者一同は、現実を受け止めた上で、残された試合を最後までTASAKIらしく戦い抜くことを誓う。その姿をしっかりと目に焼き付けておきたいと思う。


(兵庫県) (埼玉県)
GK: 齊田由貴 GK: 小金丸幸恵
DF: 甲斐潤子 池田浩美 下小鶴綾 佐野弘子 DF: 森本麻衣子 百武江梨 笠井香織 竹山裕子
MF: 山本絵美 白鳥綾 阪口夢穂 大石沙弥香 MF: 木原梢 高橋彩子 庭田亜樹子 岩倉三恵
FW: 大谷未央 田頭陽子(38分/澤田由佳) FW: 若林エリ 窪田飛鳥
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