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 頑張れ!女子サッカー 08/10/21 (火) <前へ次へindexへ>
今シーズン最多となる1035人の観衆が見つめる中、アンクラスの最終戦が始まった。

 ぶつかり合った「攻」と「守」。
 

 取材・文/中倉一志
プレナスなでしこリーグ2008 ディビジョン2 第17節 福岡J・アンクラスvs.大原学園JaSRA女子サッカークラブ
試合結果/福岡J・アンクラス0−1大原学園JaSRA女子サッカークラブ(前0−0、後0−1)
得点経過/[大原学園]杉山(80分)


 戦いの興奮が静寂に変わったスタジアムに、ナイターの照明が明るくともる。そして、この日2度目に当たる開場を待ちわびたファン・サポーターがスタンドへと足を運ぶ。19日のレベルファイブスタジアムは、J2第40節・福岡vs.横浜FCと、なでしこリーグDiv.2第17節・福岡J・アンクラスvs.大原学園JaSRA女子サッカークラブのダブルヘッダー。整備され直したピッチの上でアップを始めるオレンジ(アンクラス)と、グレー(大原学園)のユニフォームがカクテル光線を浴びて鮮やかに浮かび上がっている。

 今シーズンの両チーム対戦は第8節。攻める姿勢を前面に出して押し込むアンクラスと、粘り強く守り抜く大原学園という構図で進む試合はスコアレスドローに終わった。そして、この日が2度目の対戦になる。順位は消化試合がひとつ多いアンクラスが4位。それを勝点差1で大原学園が追う。そして得失点差ではアンクラスが20点のリードを持つ。

 既にDiv.1昇格の可能性が消えている両チームだが、河島美絵監督(アンクラス)は、「チームを支えてくれる人たちのために、本当に感謝の気持ちをこめて、今まで自分たちがやってきたことを90分間やり続けよう」と檄を飛ばす。そして、最終節に首位を行くジェフユナイテッド市原・千葉レディースとの対戦を残す大原学園は「勝つことで順位をひとつでも上げよう。得失点差が膨大にある中では勝つしかない」と椚陽介監督が選手のモチベーションを上げる。そして、17:30。レベルファイブスタジアムにキックオフの笛が鳴り響いた。



粘り強く守る大原学園(グレー)。走り回って最後の突破を許さない。
 アンクラスの布陣はお馴染みの4−2−3−1。ホイッスルと同時に攻勢に出る。トップ下で起点を作り、さらには縦への突破を仕掛けてチャンスを作るのは、U-20日本女子代表候補の川村真里。フランス遠征での経験がプレーをひと回り大きくしたように見える。その川村と1トップの谷原ゆかりが巧みにポジションチェンジを繰り返し、その2人を右から矢田貝実希子、左から花田愛子がフォローする。さらには中盤の底から高い位置まで飛び出す山本裕美が虎視眈々とチャンスを狙う。

 そして、アンクラスの猛攻を受け止めるのは大原学園。布陣は4−4−2。最終ラインと、中盤の4人がフラットに並んで守備ブロックを形成してアンクラスの攻撃を跳ね返す。「近い所に入る前のところで、ひとつ、つぶしに行こうということでやっていた」(椚監督)。そして、攻撃を担うのは、FWの橋浦さつきと、1.5列目でプレーする谷川有花の2人。ロングボールを前線に蹴りこんで、スピードを活かしたカウンターからゴールを狙う。

 ボールをポゼッションしてビルドアップするアンクラス。ギリギリのところでアンクラスの攻撃を引っ掛けて、キック&ラッシュで少ないチャンスを狙う大原学園。対照的なサッカースタイルをぶつけ合いながら試合は進む。ほぼ一方的に攻め込むのはアンクラス。開始5分に演出したシーンを皮切りに決定的なチャンスを何度も作り、8本のシュートを放つ。耐える大原学園もカウンターから放ったシュートは同じく8本。アンクラスの守備がルーズになったところを突いて、26分、40分にはあわやと思わせるシーンも作り出した。



大原学園のゴールはカウンター一発。最後まであきらめない気持ちが生んだゴールだった。
 圧倒的に攻めながらもゴールが奪えず、逆にカウンターから危険にシーンを作られる。アンクラスにとって、前半は決して歓迎できる内容ではなかった。場合によっては、いつ流れが相手に傾いてもおかしくはなかった。しかし、この日のアンクラスは1035人のファン・サポーターの声援を受けて集中力を失わない。危ないシーンを作られるたびに、しっかりと押し返して自分たちが握る主導権を渡さない。あとはゴールを奪うだけ。その思いで前へ出る。

「DFが苦しかったので交代をという考えもあったんですけれども、交替で集中が切れるのが怖かったので、ベンチとしても我慢の時間が続いたかなという感じでした」とは椚監督。連続攻撃を受け続ける中で交代のタイミングを計りかねていた。そんな中、選手たちは必死になってボールを跳ね返していく。66分にGK澤田法味の頭上を越されたループシュートは右ポストが味方になり、誰もが目をつぶった79分のシュートは、芥川岬が頭から飛び込んでライン上でクリア。運も粘り強さも衰えない。

 アンクラスが勢いにまかせて押し切るのか。粘りに粘る大原学園がワンチャンスを活かすのか。そして80分、とうとうゲームが動いた。アンクラスのCKのシーン。ペナルティエリアの外にこぼれたボールをつないで連続攻撃を仕掛けようとするボールを大原学園が引っかけた。一気に加速してアンクラスゴールを目指す橋浦。そして中央へ折り返すと、反対サイドからゴール前へ走り込んできた杉山が、混戦の中、ゴールへと押し込んだ。値千金のカウンターからのゴール。これが決勝点になった。



U-20代表遠征で迫力を増して帰ってきた川村。この日は激しいマークにあって得点ならず。
 チームに勝利をもたらすゴールを決めたキャプテン・杉山は、粘り抜いた試合を次のように振り返る。「後半も行くよって言って入りました。まだ入れられてないわけだから、0−0だし。攻められても決められなければいい話だから、とにかく、動こう、動こう、喋ろう、喋ろうと言い続けて。アウェーなので声援も大きいので、その中でも仲間の声が聞こえるように喋り続けていました」。

 杉山が振り返ったように、この日の勝因は、押し込まれ続けながらも集中力を切らさず、最後まで走りぬいたことにある。「うれしいですね。みんな最後まで足を動かしてくれたので、点を取った後も取られずに終わったので、みんなに感謝ですね」と話す杉山は、この日一番の笑顔を見せた。その表情は、自分のゴールよりも、全員で戦い抜いたことこそが最大の喜びと語っていた。

 一方、「チャンスはあって、何となくリズムは取っているけど、点数が取れない間に1本のミスで取られてしまう。そこで息を吹き返すかと思いきや、何かひとつ足りないままに終わってしまう。今日のゲームは1年間を象徴したようなゲームでした」とは河島監督。90分間に渡って主導権を握り続けていたのは間違いなくアンクラス。しかし、最後の一歩を踏み出すことができなかった。

 しかし、アンクラスは前を向くことを忘れない。「もう何年目かと言われるかも知れませんが、もう1年、お付き合いください。シーズンオフに力をつけて、来シーズンは強いアンクラスとして戦います」。試合終了後の最終戦セレモニーで、チームを代表して力強く宣言した河島監督。来シーズンはDiv.1昇格に向けて「4度目の正直」に挑む。


(福岡J・アンクラス) (大原学園JaSRA女子サッカークラブ)
GK: 田上未希 GK: 澤田法味
DF: 山本有里 鈴木千賀 内堀律子 高木奈央 DF: 三間睦美 芥川岬 武田裕季 藤野愛子
MF: 矢田貝実希子(HT/板谷麻美) 正手亜希子(60分/藤木優希) 山本裕美 花田愛子 川村真理 MF: 篠原志穂子 住江真祐子 浅野未希 杉山祐香
FW: 谷原ゆかり FW: 橋浦さつき(89分/原佑佳) 谷川有花
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