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 頑張れ!女子サッカー 08/10/31 (金) <前へ次へindexへ>
日テレへの挑戦権を賭けたレッドダービー。

 赤い挑戦者決定戦。チケットはINACの手に。
 

 取材・文/西森彰
プレナスなでしこリーグ2008 ディビジョン1 第17節 浦和レッドダイヤモンズレディースvs.INACレオネッサ
2008年10月26日(日)13:00キックオフ 鴻巣市陸上競技場 観衆:779人
試合結果/浦和レッドダイヤモンズレディース0−6INACレオネッサ(前0−0、後0−3)
得点経過/[INAC]プレチーニャ(54分、85分)、原(84分)


 プレナスなでしこリーグのディビジョン1第17節。鴻巣市陸上競技場では、浦和レッドダイヤモンズレディースとINACレオネッサのゲームが行われた。

 勝ち点4差でトップをひた走る日テレ・ベレーザに「止まれ」の信号を灯すのは、どちらの赤か。勝てばチャンピオンへの挑戦権が、敗れれば覇権争いからの脱落が待っている。



 このビッグゲームを前に、浦和の村松浩監督には確かな手応えがあったという。

「私自身は『行けるだろうな』という感じがありました。選手たちからも『あの時のようにはやられないぞ!』という気持ちが感じられましたし」

 第2クールで、初めて黒星を喫し、後退を強いられた苦い記憶と、そのリベンジマッチの重要性を、浦和の選手たちは理解していた。キックオフとともに、前に向かって出ていく。局面ごとの戦いをひとつずつ勝利に結びつける。自分のところでは絶対に負けない。そんな強い意志を感じさせた。

「前半は凄くよかったと思う」

 村松監督が振り返ったとおり、浦和は押し気味にゲームを進めていた。並の相手なら、ここで一気に押し込まれていたはず。だが、INACも負けてはいなかった。キックオフから15分間、INACはただ1本のシュートにもつなげられなかった。しかし、浦和のシュートも百武江梨の1本だけに抑え込まれていたのである。

 INACの田渕径二監督は、この決戦を前に、相手チームをきっちりとスカウティングしていた。「ここ2試合の浦和の戦い方は、試合を見た人の感想と、記録に残っているスタッツ、それらをあわせると、立ち上がりの20分までに『ぐわっ』と襲いかかって一気にペースを握っている。だから、キックオフからの時間帯をウチの選手たちが凌げるかどうか。それがひとつの山でした」

 選手全員がプロ、またはセミプロ契約のINACは、日常的に午前午後の二部練習をこなしており、スタミナには自信がある。そのチームが当該週に、男性スタッフを交えた狭いコートでの紅白戦を続けていた。それが、白兵戦の中で活きた。



 それでも、試合の天秤は浦和に傾きつつあった。

 縦に早いINACの攻撃は、ひとりがボールホルダーにプレッシャーをかけ、もうひとりが後方のスペースをカバーする基本に忠実な浦和の守備にからめとられていた。だが、浦和の攻撃も単調だった。

「相手が蹴ってくる浮き球を、単純に蹴り返すな。お互いに蹴りあうのではなく、サイドを上手く使って、そこから攻撃の起点を見出そう」

 村松監督が試合前におくった指示は、激戦の中で忘れ去られていた。いや、目の前のプレーに没頭していたのかもしれない。相手の速攻を食い止めると、一気にターンオーバーを狙ってはパスが乱れ、ボールを奪い返される。

「相手のボールを奪ってから、いかにつないで攻撃できるかを求めていた。それに多少、手間取った」(村松監督)

 高橋彩子の負傷もあって、この日のボランチは庭田亜樹子と岩倉三恵のコンビ。蹴って走れる若手ふたりなら、左右にボールを散らしてそこから組み立てることもできたはずだ。ところがこの日はムキになったかのように、安藤梢、北本綾子に当てようとする。ここに、山岸靖代、藤村智美と経験豊富なベテランふたりが立ちはだかった。

 後半ならいざ知らず、試合はまだまだ前半。手数をかけて、ボールを横に滑らせ、相手に足を使わせるべきだった。だが、すっかり熱くなった浦和の選手たちは、攻守の切り替えが早い、INACのペースに引きずり込まれていたのである。

 22分、右サイドでダイレクトパスをつなぎながら、岩倉のシュートまで寄せきったシーン。そして27分、土橋から安藤を経由したボールを若林がシュートしたシーン。前半、浦和の決定機はこのふたつだけだった。



勝利に笑顔を見せるINACの助っ人ふたり。
 後半も、浦和は攻勢を取る。

 そして、立ち上がりの46分、この日、最大のチャンスを迎えた。ペナルティエリアに侵入した安藤と北本がワンツーパスで、完璧にDFを外した。だが、北本からのリターンパスは、走り込んできた安藤の足元深くに収まってしまう。ボールを持ちかえた安藤のところに、北京五輪代表GK海堀あゆみが、DFとともにシュートコースを塞いだ。

「練習どおりのパターン。北本のパスがもう少し前に出ても、安藤がもう少しゆっくりと入ってきても、一点のシーンだった」と村松監督が嘆けば、「あそこでとれるかどうかが勝敗をわけた。こっちはゴールを奪えず、向こうはとった」と安藤も悔しがる。

 ここから、試合の流れはINACへと移っていった。

 そして54分。電光石火のカウンターが、勝負を決定づける。自陣左奥でボールを奪ったINACは、そこから米津美和が、前線にボールを送る。ハーフウェーラインを越えたところで待っていたのはブラジル代表・プレチーニャ。寄せが遅れた浦和DFと、ライン裏を警戒して前に出ていた山郷のぞみのポジションを確認すると、そこから強烈なミドルシュートを放つ。

「蹴った選手は狙って打っているのだろうから、失礼な言い方になるかも知れない。でも、あのシュートはウチにとっては交通事故のようなものでした」と村松監督。「超速攻でしたね。あれは私も驚きました」と田渕監督。両軍指揮官も驚く、目の覚めるような一撃が、勝敗を分かつ1点をINACにもたらした。

 その後、1点をとるべく浦和は前へ出て行ったが、INACはタテのボールを予測し、ことごとくインターセプト。そして84分、セットプレーから原歩がゴールを奪うと、直後にもプレチーニャがこの日2点目のゴール。3対0でINACが浦和を降した。



浦和は、優勝争いから大きく後退した。
 試合内容にスコアほどの大差はない。

「相手に前がかりに来られちゃうと、まだそこまでの度胸が……。思い切って、もっと自信を持ってポゼッションができたらいいかなと。年間を通して、それができるチームにしようとやっているところですが、まだ発展途上ですね」

 村松監督も認めたように、前半の浦和は縦に急ぎ過ぎた。速攻、遅攻を織り交ぜて戦ってきた今シーズンの浦和。INACの注文にあわせることなく、引きだしの多さを武器に、ペースチェンジすべきだった。結局、ハイプレッシャーの中で普段どおりのサッカーを貫くだけの力は、まだついていないということだろうか。

 まぐれで、日テレに連勝はできないし、単独チームで臨んだ大分国体でも優勝した。一歩ずつ、勝者のメンタリティが育ちつつある。それだけに、リーグ終盤の緊張感を感じられなくなったことが惜しまれる。

 逆に、INACはこの状況で、チャンピオンへの挑戦権を手に入れたことが何よりも大きな財産だ。ディビジョン1昇格から3年間、ジリジリと成績を上げてきた多国籍軍は、ようやくこの地点まで到達した。むしろ、一年、遅かったくらいだ。

 その原動力は、この日2得点を挙げたプレチーニャだ。北京五輪前には、死のグループに入れられたブラジル代表からの要請で、予定よりも2試合早くチームを離れていた。だが、セレソンの中でマルタ、クリスチャーネらとトレーニングを積んだことで、彼女自身のパフォーマンスもさらに高いレベルに達した。復帰後の切れを見る限り、早めに帰したのは正解だった。

「最後の神戸ダービーに向けて、TASAKI(ペルーレFC)も燃えているでしょうし、そのゲームを落としたらまったく意味がなくなります。ぜひ、そこを勝って11月8日(土)、ホムスタでベレーザに挑戦したいですね。上位チームが集まってのダブルヘッダー開催だし、たくさんのお客さんに見にきてもらいたいですね」(田渕監督)

 間違いなく、そのゲームが今年のリーグチャンピオン決定戦になるだろう。


(浦和レッドダイヤモンズレディース) (INACレオネッサ)
GK: 山郷のぞみ GK: 海堀あゆみ
DF: 土橋優貴、百武江梨、矢野喬子、森本麻衣子 DF: 角田英子、藤村智美、山岸靖代、ジナ
MF: 柳田美幸、庭田亜樹子(64分/窪田飛鳥)、岩倉三恵、若林エリ(89分/木原梢) MF: 那須麻衣子、原歩、澤井理恵、プレチーニャ 、米津美和
FW: 安藤梢、北本綾子 FW: 鈴木智子(79分/川澄奈穂美)
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