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激闘の末の挑戦権、安堵と不安の2位通過
キックオフ直前、選手とサポーターが円陣を組み、決戦に気持ちをひとつにした
V・ファーレン長崎、Kyuリーグ優勝逃すも2年ぶり地域決勝出場決定 〜2008Kyuリーグ 最終節
2008年9月7日(日)14:15キックオフ ふれあいスポーツランドA(鹿児島市) 観衆:1000人 天候:晴 試合結果 / V・ファーレン長崎3−3(前半2−1、PK4−5)ホンダロック 得点経過 / [長崎]有光(7分)、福嶋(10分)、[ホンダロック]前田(22分)、前田(57分)、[長崎]福嶋(66分)、[ホンダロック]原田(72分) PK戦 / (長崎)原田○ 福嶋○ 田上○ 隅田○ 有光× (ロック)南○ 前田○ 谷口○ 倉石○ 白川○
文/ふかえ まさひろ
2005年、最終戦の前日にヴォルカ鹿児島に破れ昇格の夢絶たれていた。2006年、すでに優勝を決めていたがホームで新日鐵大分に初黒星、その後の運命を暗示したかのような試合に。2007年、前日の結果で3位決定し夢が潰えてたが、ホンダロックに意地の逆転勝利。
V・ファーレン長崎のリーグ最終戦は良くも悪くも(少なくとも長崎にとって)、大勢が決した後の試合だったのだが、今年は大きく様相を異にしていた。なんせ、残り2試合で3チームが2枠の地域リーグ決勝大会出場権を勝ち点差1で争う展開。そして、予想通り最後の最後までもつれる激闘になった。
この試合を前に、長崎は順調とは言いがたい状況だった。お盆時期の全国社会人の予選では快勝したものの格下の社会人チーム相手に失点。2週空いて8月31日に行われた長崎県サッカー選手権決勝は、スーパーシードとして決勝のみの出場。しかし、前週土日に行われた準々決勝・準決勝の連戦を勝ち上がってきた三菱重工長崎の極端に引いた布陣に対し、有光が負傷欠場の長崎は最後まで崩せず。逆に後半ロスタイム、ゴール左でのドリブル突破に対し加藤がファウル。これで与えたFKが川崎のオウンゴールを誘発した瞬間に試合が終わった。
いくら今の長崎にとって天皇杯出場は優先順位が低いとはいえ、ショックだったのは県選手権3連覇を逃したことよりも、Kyuリーグで残留争い中だった重工相手に喫した、いわば「順当負け」。暗雲漂うなかでの最終決戦突入となった。
9月6日、鹿児島市のふれあいスポーツランドで行われた第17節・ヴァンクール熊本戦。既にリーグ残留が決まった上に、仕事などの都合で選手が揃わず、FWがGKをやる状況の熊本相手に、長崎は前半だけで4点のリードを奪い、出場停止にリーチがかかっていた福嶋に、「今のチームを支えている」と東川監督が評価する大塚と有光も、早い時間にベンチに下げ、翌日の決戦へ温存できた。
しかし、49分に5−0とした後、熊本のサイドに張った選手の単独ドリブル突破に対し、長崎のDFが止められずにずるずる下がるシーンが何度も見受けられた。大勢に影響ない状況だったし、実際に失点にはつながらなかったが、ファウルでしか止められないのではないか、という危惧を抱いた。翌日には現実になるのだが。
「やることちゃんとやれ」と監督の檄が飛ぶ中、結局、終了間際の10分間に4ゴールを追加し10−0で圧勝した長崎は、この時点でホンダロックとの得失点差を19にした。その後行われたホンダロック対新日鐵大分でホンダロックが敗れれば、その時点で長崎の地域決勝行きが確定したのだが、ホンダロックが2−1で逃げ切り、優勝と地域決勝の出場権をかけたマッチレースは、予想通り最終節の最終戦にゆだねられることとなった。
迎えた9月7日、午前中に沖縄かりゆしFCが、前日に三菱重工長崎とのPK戦の末、県リーグ降格が決まったOSUMI NIFS相手に快勝し、勝ち点を47として2位以上を確定。そのため、この時点で地域リーグ決勝大会へ残り1枠の条件は、「ホンダロック=90分勝ちのみ」「V・ファーレン長崎=勝てば優勝、PK負けでも得失点差で2位になり地域決勝出場権獲得」というものになった。
7分、先制点を決め雄たけびを上げる有光(中央) 10分、2点目を決めた福嶋。通算25得点で得点王にも輝いた。右は大塚。
試合前、最近のV・ファーレンはサポーターからの寄せ書きの色紙を囲んで選手スタッフで円陣を組むのだが、この日は選手一人ひとりが色紙に書かれたメッセージを読み、観客席前に移動。長崎から詰め掛けたサポーターと一緒に円陣を組んだ。そして14時15分、両チームの運命をかけた試合が始まった。(公式記録、および当初予定では14時だったが、同じピッチで10時から行われた海邦銀行SCvs.ヴォルカ鹿児島がPK戦まで行ったため、その後の試合から15分ずつ遅れていた)
7月の沖縄かりゆし戦(立ち上がり10分の2失点で敗戦)の反省もあってか、監督から「最初の10分が大事」という指示があったのだが、開始早々はホンダロックのセットプレーが続く。これをしのぐと7分、CKからのボールを川崎が受け、左サイドを突破して中にクロス。これを有光がヘッドで決め長崎が先制。10分には、後方からのパスにオフサイドラインを抜け出した福嶋がGKもかわしてゴール。「最初の10分」にいきなり長崎が2点リードを奪った。
これで3点が必要になったホンダロックだが、開き直ったか、木下らが積極的にシュートを放っていく。すると22分、ゴール右前で得た南のFKを前田が頭で合わせ1点差。その後もホンダロックの攻勢は前半終了間際まで続き、長崎はゴールライン際でDFがクリアせざるを得なくなるまで攻め込まれたシーンが前半だけで2度ある始末。かなり早い時間の2点リードで長崎の選手が浮き足立った感はありありだった。
ハーフタイム、選手を迎えた東川監督は、「落ち着け、貯金まであるんだから45分楽しめ」と送り出した。しかし試合はホンダロックペースのまま。56分に長崎は中盤でFKを与えたタイミングで、動きの悪かった川崎を小田に交代した。その直後だった。前田がゴール前に蹴ったボールは、ちょうど吹いた追い風にも乗りGK近藤の頭上を越えそのままゴールへ。ホンダロックが約30メートルのループシュートで同点に追いついた。
試合の行方がわからなくなったが、66分、竹村からのロングボールを右サイドぎりぎりで追いついた有光がクロスを入れると、福嶋が叩き込んで長崎が勝ち越し。今期2失点が最多なだけに、これでついに勝負あり、とも思った。
ところが72分、ホンダロックが自陣内で、有光のファウルから得たFKをすばやくリスタート。水永が中に入れると中央で原田がダイレクトシュート。これが決まってまたも同点になる。その後も浅田を加えて3トップで、あと1点を狙い終始攻め立てるホンダロックに対し、防戦状態の長崎。東川監督の久留に対する指示も戦術ではなくもはや精神的なものだけだった。そしてロスタイム3分を経ても、次のゴールは生まれなかった。3−3。この瞬間にホンダロックの3位が決定した。
長崎の優勝をかけたPK戦だったが、ホンダロック3人目、谷口のキックを長崎の近藤が止めたものの、動き出しが早いという副審のジャッジで蹴りなおし。この試合を通してオフサイドの判定に不満を抱いていた長崎の選手やサポーターから疑問の罵声が上がる。そして、結局5人目の有光が外した長崎に対しホンダロックは5人全員が成功し、ホンダロックがPK勝ちを収めた。
優勝を逃した長崎、PK勝ちでは意味の無かったホンダロック。2008年Kyuリーグ最終戦は、歴史的な大激戦の末、勝者無き結末に終わった。
こうしてシーズンが終わった。結局、沖縄かりゆしFCが最後に12連勝、前半戦終了時点での2強をともに破って5年ぶり3度目の優勝を飾った。去年の終盤からチームとしての完成度は評判が高かったが、今年の中盤以降は、さらに攻守ともに安定感を増した感はあった。特にMVPに輝いた斎藤は、地域リーグのレベルを超えている選手であることをプレーでも再三見せ付けた。来年改名予定のため「沖縄かりゆしFC」という名前では最後のシーズン。FC琉球の待つJFLへ今度こその昇格を目指す。
2位で地域決勝出場を決め安堵の中での記念写真。川崎の音頭でJFLコール
ホンダロックは、9月14日の天皇杯2回戦・ニューウェーブ北九州戦(1−1、PK4−2で北九州の勝利)でも見せたように実力はあるチーム。最後の望みを賭け全国社会人サッカー選手権(10/18-22、新潟)での出場権獲得を目指すが、1回戦でバンディオンセ神戸(関西優勝)という厳しい組み合わせ。最大で3位まで出場権を得る可能性があるが、2年連続の地域決勝出場でJFLへの復帰なるか。
さてV・ファーレン長崎、昨年のピッチ内外での混迷を経て、今年は最後の最後で2年ぶりに地域リーグ決勝大会の出場権は獲得した。しかし、シーズンを通しての安定感には程遠く、リーグの下位には大勝しても、上位チーム相手に快勝したのはアウェイ新日鐵大分戦のみ。その好調も続かず、終盤には失点癖が見え、失点しなくともファウルせずには相手の攻撃を止められないシーンが多々見られた。またホンダロック戦でも、3失点全てがFKから。セットプレーはもはや狙われているといっていいだろう。
精神的弱さと、決定力のなさも多々見受けられた。これからの戦いにはKyuリーグ下位のような大量得点を見込める相手はいないだけに、タフな試合の連続を勝ち抜く力には疑問符がつく。そんな中、今の長崎は主力選手が事実上固定されており、たまに長身FWの太田を入れても、チームとして機能させる術を見せられないままに終わる、というシーンが何度もあった。また選手層の薄さも明白で、悪い流れになった場合、それをまったく変えられない采配も含め、東川監督に対しての不満の声は、いくつか上がっている。
さらに最後に優勝を逃したことで、地域リーグ決勝大会の一次ラウンドを近場の北九州市本城ではなく、より遠い鳥取か高知で行わざるを得なくなった可能性が高く、多くのサポーターの後押しも期待できなくなった。しかも2年前とは異なり、選手登録期限が過ぎているために、これ以上の補強はもうできない。故障者無く今のチームをどれだけ高めていけるのかが、唯一かつ最大の課題となる。
10月の全社では1回戦で静岡FC(東海首位)、勝てば2回戦では長崎の宿敵、「あの」戸塚監督率いる町田ゼルビア(関東優勝)と、地域決勝で当たるであろうチームと対戦する可能性がある。去年と違い、ここで手の内を隠すのか、戦力を落として望むのかはわからないが、決戦直前の対決として新発田市での試合は注目されるゲームにはなるだろう。
ネガティブなことを書き連ねたが、正直に言って地域リーグ決勝大会を勝ち抜くだけの力が今の長崎にあるとは思わない。選手の顔ぶれや億単位の年間予算などみると、地域リーグレベルでは抜けているだけに、リーグ戦で見せた、時に弱さも見せ付けた戦いぶりは決して満足できるものではなく、むしろ不安さえ募る。
サポーターから手製のカップをもらった原田。リーグ優勝ならなかったが、栄光は石垣島で掴み取れ
だが、サポーターもスポンサーも行政も、残念ながらいつまでも待ってくれるわけではない。運命が決める決戦まであと2ヶ月。今年の地域リーグ決勝大会、決勝ラウンドの舞台は沖縄県石垣島。満足させてくれるのはそこだけでいい。長崎にとって、もはや勝利以外に悔い無き結果などありえない状況である。果たしてV・ファーレン長崎は未来を切り開けるのか。希望と不安を抱えながら決戦までのカウントダウンに入っていく。
V・ファーレン長崎
GK 近藤健一
DF 田上渉 久留貴昭 加藤寿一 隅田航
MF 竹村栄哉(89分→幸野屋敏行) 大塚和征(82分→伝庄優) 原田武男 川崎元気(56分→小田幸司)
FW 有光亮太 福嶋洋
SUB:GK福田涼 DF立石飛鳥 梶原公 MF山形恭平
ホンダロック
GK 川島正士
DF 澤村憲司 谷口研二 倉石圭二 白川伸也
MF 南光太 悦田嘉彦 下木屋翔(76分→浅田祐史) 前田悠佑
FW 木下健生(55分→水永翔馬) 原田洋志(85分→井戸川一徹)
SUB:GK山田正吾 DF猿渡裕二 MF東宏樹 FW麻生大治郎
【2008Kyuリーグ最終結果】 チーム名 勝点 【最優秀選手】 斎藤将基(沖縄かりゆしFC) 優勝 沖縄かりゆしFC 47 【得点王】 福嶋洋(V・ファーレン長崎)25得点 2位 V・ファーレン長崎 46 (得失点差66) 3位 ホンダロック 46 (得失点差48) 4位 新日鐵大分 34 5位 ヴォルカ鹿児島 28 6位 海邦銀行SC 21 7位 ヴァンクール熊本 20 8位 九州INAX 15 9位 三菱重工長崎 9 10位 OSUMI NIFS 4 ※最下位のOSUMI NIFSが鹿児島県リーグ降格、三菱重工長崎は入替戦に出場。但しJFL昇格チームが出れば残留
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