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スペランツァF.C.高槻サポーターの
なでしこリーグ2008Div.1・2入れ替え戦レポート
文・取材/中村英治
写真/久保善康
それは7月6日、ホーム高槻の萩谷サッカー場で行われた試合に引き分けた半年近く前に、既に覚悟をしていたことだったのかもしれません。
今季実績ある選手や有望新人が多数加入したスペランツァF.C.高槻は、シーズン開幕前から昨年以上の結果が期待されていました。それは即ちDiv.2優勝、Div.1昇格です。そして、その一番のライバルと目されていたのがジェフ。7月6日の第10節を終えた時点で、1位ジェフ(8勝1分0敗、勝点25)、2位スペランツァ(6勝3分0敗、勝点21)と、第2クール初戦にして自力優勝の可能性が無くなってしまったわけです。
しかしその後ジェフが1試合引分けたことで自力優勝が復活し、9月21日から順延となった11月15日の試合の結果によって優勝が決まることとなりましたが、そこで引分け。最終的に2位となり、この日の入れ替え戦に臨むことになりました。
Div.2に優勝し自動昇格を目標としてきたスペランツァですが、リーグ2位に終わったことでそれほど大きな落胆があったとは思いません。確かに残念ではありますが、優勝決定戦でもあった最終戦で0−2リードされたところから同点、更には逆転まであと一歩まで迫りました。そしてDiv.2ではあるものの、チーム創設以来前身も含めて初めて無敗でリーグを乗り切り、自信を持ってシーズンを終えたからです。
とは言え、優勝したジェフ以外に圧倒的な力を見せられたかと言えばそうではありません。ロスタイムにようやく勝ち越したり、力の差があると思われた下位チームに失点を喫することも多く、最終的に7位に沈んだ清水第八との試合はアウェイでは先制され、ホームではロスタイムにようやく追い付き同点に持ち込むなど、日頃試合を見る機会の多い方には「スペランツァらしい。」と苦笑いされるような薄氷を踏む試合もありました。
しかし今季のスペランツァが例年と違うのは、試合終盤に無類の強さを発揮したことです。
この日の試合もスロースターターのイメージが定着しつつあるスペランツァは、序盤から守勢に回ります。特に伊賀FCの19番大歯選手には何度も突破を許します。それでも、一昨年の入れ替え戦では相手チームの選手としてスペランツァの前に立ちはだかったGK鈴木理紗選手の活躍もあってピンチを防ぎますが、前半29分には先制を許すことになってしまいます。
しかし、その直後にペナルティエリアに侵入した伊丹選手が倒されPKを得ると、それを自分自身でしっかり決めて同点とします。試合後の細田監督は「あそこでPKを取って追い付けたのは大きかった。」と語りました。そして前半は1−1でハーフタイムを迎えます。
会場は伊賀FCのホームですし、スペランツァの試合の立ち上がりが良く見えないことも珍しくはありませんが、それにしても前半は少し硬かったかなという印象を持ちました。普通に考えれば、Div.1で負けが込んで勢いを失い、守りに入っても不思議ではない伊賀FCに対し、Div.2を無敗で終えて勢いに乗って臨む挑戦者でもあるスペランツァは、序盤から飛ばして主導権を握りに行くくらいのことがあって良いのかもしれません。
でもそれは逆に、自動降格こそ逃れたものの2年連続で入れ替え戦を戦うこととなり、背水の陣で臨んだ伊賀FCの開き直りを生んで、今年こそ必ず昇格しなければならないと考えるスペランツァの重圧になっていたのかもしれないと想像することも出来ます。ここ数年の公式戦の対戦成績や今季開幕前と夏の中断期に行われた両チームの練習試合の内容を知れば、スペランツァに分があると考えてもおかしくはないでしょうから。
後半に入ると、前半同様に右サイドからの鋭い突破を中心に攻撃を組み立てる伊賀FCに対して、スペランツァも徐々に劣勢を挽回してきます。
しかし、スペランツァの決定的チャンスは、昨年までは大阪体大に所属し、国体大阪選抜でスペランツァの選手とも共に戦った伊賀FCのGK大野選手によって阻まれます。そして一進一退の攻防の後、その均衡を破ったのは又も伊賀FCでした。
これは後から確認したのですが、1点目とは崩された形も似ていますし、決めたのも同じ山科選手。同じ様な形で2度も先行を許せば少々応えそうですが、今季のスペランツァは違いました。
足の攣る選手も目立ち始める中で、スペランツァは63分、73分と交代選手を投入します。
ちなみに、スペランツァの中には試合前から足が攣っていた選手が居たそうです。冗談だと思います。多分。
79分、試合時間残り10分を切ろうとする頃、遂にスペランツァが同点に追い付きます。柏原選手のループ気味のミドルシュートが、ここまで好セーブを見せていた大野選手の手をかすめてクロスバーを叩き、ゴールへと吸い込まれます。今季スペランツァの中でリーグのオープニングゴールを決めたのも柏原選手でしたが、結果的にクローズドゴールも決たことになります。(入れ替え戦ですから、正確に言えば違うのかもしれません。)
追い付いた者の強み、更には終盤に強い今季のスペランツァとしてはここから一気に逆転と行きたかったのですが、それには至らず2−2で90分を戦い終え、勝負は延長戦へと縺れ込みます。ここまででも消耗した選手が多かったと思いますが、この先は気持ち、精神力中心の戦いといった雰囲気です。そして前後半10分ハーフの延長戦でも両チーム譲ることなく、遂に勝敗はPK戦で決することとなります。
伊賀FCの大野選手はPKが得意と聞きます(そのことは試合中の私の頭からは消えてましたが)。しかし、この日の鈴木理紗選手の調子を見れば、絶対に勝てると信じられました。延長戦に入ってからずっとそうですが、とにかく気持ちを切らさぬようにする。応援する方からすればそんな思いが強かったように記憶しています。
PK戦の先攻はスペランツァ、1人目の相澤選手を皮切りに3人連続で決めます。一方の伊賀FCは1人目のキックがクロスバーを叩きゴールの外へ、続く2人は決めています。両チーム3人ずつ終わった時点でスペランツァが3−2でリードです。
ところが、4人目のキッカー伊丹選手が枠を外してしまいます。しかし、そこでそのピンチを救ったのがこの日好調のGK鈴木理紗選手。伊賀FC4人目のキックを伸ばした指先で弾き、そのボールはゴールの外へと外れました。
これも後で確認して分かったことですが、PKが得意と言われる伊賀FCの大野選手は3本目以外のキックのコースを読んでいました。しかし鈴木理紗選手に至っては、なんと全てのコースを読んでいたのです。
そして、これを決めれば勝利、更にはDiv.1復帰決定という大事な最終キッカーを任されたのは中鍋選手。中鍋選手のPKはあまり印象にないのですが、本人曰く得意とのこと。その言葉通りしっかりと決めて・・・
ベンチからは選手やスタッフが飛び出し、ハーフウェイラインからも選手達が駆け寄って行きます。
PK戦の最中にその状況を冷静に把握し切れていなかった私は、「あれ、これでええの?終わり?ほんまに勝ち?」と何か不思議な感覚に陥りました。その後は馴染みの方の顔を見付けて抱き合ったこと、とりあえず応援バスツアーに参加してくれた皆さんと選手たちに向ってウォーター・ファイトをしなければなどと、そこだけ妙に冷静に考えてたこと。それ以外はあまり記憶にありません。
あ、一緒に応援してくれた大阪桐蔭の選手たちが最後に歌を歌ってくれてましたね。スペランツァの選手の心に染みたようです。
スペランツァF.C.高槻は、Div.1で戦う厳しさや降格の辛さを知り、Div.2で戦う苦しみや昇格を逃す悔しさを味わい、今回Div.1復帰の喜びを得た稀有なチームです。入れ替え戦で負けた涙も、勝った嬉し涙も知る唯一のチームです。Div.1の経験の無い選手も増えましたが、来季はそのDiv.1で戦う楽しさを、サポーターも含めた全員で存分に味わいたい。そう思います。
監督・選手の試合後のコメントはこちらでご覧になれます >>>
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