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 webnews 06/01/17 (火) <前へ次へindexへ>
10人で耐えた駒澤に栄冠は輝いた。
数的不利を跳ね返し、駒澤大学、2連覇を達成。
第54回全日本大学サッカー選手権大会決勝 駒澤大学vs.順天堂大学

2006年1月15日(日)14:40キックオフ 国立競技場 観衆:7,100人 天候:晴
試合結果/駒澤大学2−1順天堂大学(前0−0、後2−1)
試合経過/[駒澤]原(48分)、田谷(51分)、[順天堂]谷内(55分)


取材・文/西森彰

 今年から男女同日決勝となった全日本大学サッカー選手権大会。女子の早稲田大学対東京女子体育大学のゲームが延長戦に入ったため、キックオフは当初の14時30分から10分遅れとなった。ピッチに散っていく、赤と白のユニフォームはどちらも劇的な勝利を収めて、この国立霞ヶ丘陸上競技場の決勝戦へ勝ちあがってきた。

 赤いユニフォームは、昨年の第53回大会を制した駒澤大学。ディフェンディングチャンピオンとして、準優勝に終わった一昨年から、3年連続の決勝進出となる。準々決勝の中京大学戦で、残り2分で1対2と追い詰められながら、宮崎大志郎と赤嶺真吾の2ゴールで逆転。アシストをした原一樹も「駒澤らしいチーム一丸となって戦うサッカーができて、残り少ない時間でも同点、逆転できた。あれが大きかった」。波に乗った駒澤は準決勝で関西大学を破り、このピッチへ駒を進めた。

 対する白のユニフォームは、3連覇を達成した平成元年以来4度目の優勝を狙う順天堂大学。こちらもグループリーグの徳山大学戦で1対3を残り2分から逆転。この勝ち星が効いてワイルドカードで決勝トーナメントに進むと、関西学院大学を破り、グループリーグで敗れた静岡産業大学にもロスタイムの2得点で劇的なリベンジ。タイトロープを渡りきっての決勝進出だ。



セットプレーでも活躍していた菊地(赤・13)の退場がゲームを動かした。
谷内のPKで順天堂も追撃開始。
 キックオフから主導権を握ったのは順天堂。トップを任された盛岡商業高校出身の1年生FW・福士徳文を先頭に、果敢に駒澤ゴールに迫る。17分、速い右クロスに、ニアサイドの渡邉哲也が触れなかったものの、ファーで福士が左足を伸ばしてボレー。GK・牧野の弾いたボールを再び福士が狙えば、今度は駒澤DFが体を張ってブロックする。さらに1分後、飯島槙の左CKに、渡邉が頭をあわせたが今度はポスト。決定機をモノにすることができない。

 駒澤も、順天堂の圧力を懸命にこらえる過程で、菊地光将、田谷高浩がイエローカードを受ける。さらに42分、CKから相手DFのキープするボールに深いタックルを見舞った菊地が、扇谷健司主審から、この日2枚目のイエローカードを提示されて退場。4−4−2のシステムで戦ってきた駒澤は、システム変更を強いられる。

 ここで秋田浩一監督はFWの巻佑樹を、菊地が務めていたCBのポジションへ移す。「私の頭の中では何百回も考えたことはありますが、実際に試合で使ったのはたぶん初めてだと思います」と秋田監督。その記憶に間違いがなければ、巻がDFを務めるのは、3年前、同じ国立霞ヶ丘陸上競技場のピッチで、国見高校の一員として戦った決勝戦以来となる。

 秋田監督にしてみれば、必要に迫られて行った一か八かの大博打であったが、この起用がものの見事に的中した。昔とった杵柄とばかりに、巻は菊地と同じ182センチの長身でハイボールを弾き返し、アタッカーのスピードにも対応する。中盤から前の選手にも守備の意識が強まった4−4−1には、急造とは思えない安定感が生まれていた。

 さらに駒澤は、後半開始早々の48分、ワンチャンスを生かす。左サイドの宮崎が、大きなボールで田谷にサイドチェンジ。田谷が中央に速いグラウンダーを返すと、相手DFを振り切った原が右足を振り抜いた。さらに駒澤はエアポケットに入った順天堂の動揺を突く。51分、原が鋭い出足でDFのトラップミスを奪い、田谷に大きな追加点をアシストする。

 順天堂も55分、コーナーキックで生じた混戦の中で、PKを奪取。チーム唯一の4年生・谷内謙介がこれを右隅に決めて1点差に詰め寄ると、58分、DFの中村英之を投入し、村上佑介、小宮山尊信をDFラインからウイングバックの位置に上げた。4−4−2から、これまで併用してきた3−5−2へのシステム変更だ。

 しかし、一方的に攻めながら2点目が遠い。多田源一郎のシュートのこぼれ球を押し込みにいった渡邉が再びポストに阻まれ、小宮山の素晴らしいミドルシュートは牧野の好セーブに遭う。結局、1点のリードを守り倒した駒澤が、数的不利を堪えて、順天堂の追撃を振り切った。



 
順天堂は、来年に気持ちを切り換える。
痺れるような試合展開に、駒澤の応援団は赤く燃えた。
順天堂は、ひとり多いアドバンテージを得て、大事に行こうとするあまり、勝負の一手が遅れた格好だ。先制点を献上した直後、DFラインに落ち着きを取り戻させようと、戦術変更を待ったところでミスからの失点。吉村雅文監督は「もっと早く3バックに変えたかった」と悔やんだ。「最後は駒澤の『経験』にやられた」と小宮山。シュート数は13対6と駒澤に倍し、ゲーム自体も支配していた。ここで勝ち切れるかどうかが「経験」の差だろうか。

「残念ながら決勝戦では勝てませんでしたが、学生たちが今まで考え、やってきたことが間違いないと証明できたと思いますし、『大学4年間で上手くなる、強くなる』を目標にしているチームなので、切り換えていきたいと思います。準優勝ですけれども、とても満足しています。学生たちはとても良い経験ができたと思います」(吉村監督)

 コーチが置かれず、選手同士のミーティングでチームを運営している順天堂。大会優秀選手に選ばれた小宮山、福士ら3年生以下の選手たちは、今年の苦い体験を、来年以降に生かしてくれるだろう。



 勝った駒澤は、準決勝と同様に数的不利を跳ね返して、粘り強い戦いで2連覇を達成した。「ひとり少ない中、選手ひとりひとりが気持ちを込めてくれました。技術や戦術ではないと思います。勝ちたいという気持ち、有終の美を飾りたいという気持ち。そういったものがひとつになった結果だと思います」。見事なスクランブル采配で勝ちを拾った秋田監督は、選手たちの気持ちの強さを強調した。

 巻、菊地の先発自体、本来レギュラーの赤嶺と桑原靖が累積警告と退場で決勝の切符を失い、生じたものだ。そして、そのふたりのプレーが、駒澤のゲームプランを変えさせ、そして優勝トロフィーを引き寄せた。そこには確かに運があったし、勝負が上手く行く時は、こんなものなのかもしれない。しかし、その運を引き寄せたのは、ひとり少ない状態で半分以上を戦うことを決意したチーム一丸の闘争心だ。

 大会最優秀選手に選ばれた原は、昨年、そして3年前の高校サッカー選手権に続き、このコクリツで3度目の栄冠に輝いた。チームメイトの巻は3年前に3連覇の夢を断たれた対戦相手であり、3年前のチームメイトの小宮山は、この日の対戦相手である。

「来年も、駒澤のサッカーをしっかりやって、またこの場に立てるように頑張っていきたい」

 一番幸せな選手は、そう言って大会を締めくくった。




(駒澤大学) (順天堂大学)
GK: 牧野和昭 GK: 佐々木真裕
DF: 石井晃一、廣井友信、菊地光将(42分/退場)、筑城和人 DF: 森英次郎、村上佑介、谷内謙介、小宮山尊信
MF: 八角剛史、田谷高浩、宮崎大志郎、鈴木亮平(89分/印出昌史) MF: 島嵜佑、飯島槙(78分/青木祥)、渡邉哲也、佐藤健太郎、多田源一郎(58分/中村英之)
FW: 巻佑樹、原一樹(86分/最上大輝) FW: 福士徳文
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