topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 webnews 06/05/05 (金) <前へ次へindexへ>
厚別公園競技場は、今年最初の公式戦を迎える。
札幌、起死回生のゴールで、仙台の奪首を阻む。
2006Jリーグ ディビジョン2 第13節 コンサドーレ札幌vs.ベガルタ仙台

2006年5月3日(水・祝)14:04キックオフ 札幌厚別公園競技場 観衆:11,319人 天候:晴
試合結果/コンサドーレ札幌1−1ベガルタ仙台(前0−0、後0−1)
得点経過/[仙台]菅井(50分)、[札幌]石井(89分)


取材・文/西森彰

 時折、通り過ぎる風はまだ冷たいものの、公式発表された気温11度よりも体感温度は高い。北の大地に春の訪れが感じられる中、札幌厚別公園競技場は、J1経験クラブ同士の対戦を迎えた。



 ホームのコンサドーレ札幌は、柳下正明監督就任から3年目を迎える。若手主体のチームに切り換え、目先の結果よりも、その先にあるものを重視した。その過程で砂を噛むような思いをしてきたのは、クラブの関係者だけでなく、その戦いを見守るファンも同じだろう。それでも彼らは現体制を支える。

 5勝5敗1分けの勝ち点16、首位・柏レイソルから9ポイント差は、もちろん最高ではないけれども、決して最悪でもない。「2連敗したけれども、それが今のウチと上位の力の差なんだ」。札幌のゴール裏から風に乗って聞こえてきたコールリーダーの声も、現状をきちんと把握している。

 津軽海峡を越えてきたベガルタ仙台は柏と1ポイント差の2位。この日のゲームに勝てば、抜け番の柏を交わして、首位に躍り出る。こちらは、札幌とは対照的に、毎年、大きな体制変更をしながら、シーズンに臨んできた。そのせいか、毎シーズンのように昇格争いに加わりながら、最後のひと押しが足りず、J1復帰を逃し続けている。

 故障者に苦しみながら、あと2歩のところまで持っていった都並敏史前監督をも解任した。東京ヴェルディ1969、ヴィッセル神戸、そして柏レイソル。J1から降ってきた顔ぶれを見れば、更なる前進が必要なのは確か。しかし、昨年1年間で積み上げてきたものをチャラにするリスクが必要だったのか。部外者には判断がつかない。分かっているのは「昇格以外は全て失敗」という道を採ったことだけだ。



札幌入りした仙台のファンは、残り1分まで首位を確信していたはずだが…。
 J1復帰へ向けて、全く別のアプローチをかける両者の対戦は、ホームチームの攻勢で幕を開けた。アウェーの仙台はダイヤモンドの4−4−2。ブラジル人3人を残し、3ボランチ気味の中盤と4バック、その7人が自陣に籠る。札幌は3−5−2。2度目の出場停止から帰ってきたフッキを中心に、イエローの分厚い壁をこじ開けようとする。

 出足良く仙台のボールホルダーに食らいつき、左サイドで先発した西谷正也、トップ下の砂川誠に預けて、形を作る。その勢いは序盤に大塚真司を負傷退場で失っても衰えない。17分、相手最終ラインからのパスをインターセプトした砂川がフッキにパス。DFともつれながら放ったシュートは、上手くミートできず、不発に終わったが、札幌の第1歩の速さが象徴された好機だった。

 その後も31分にフッキが強烈なフリーキックを見舞うと、その1分後には西谷が出したスルーパスを、仙台GK・高桑大二朗の鼻先で受けた相川進也が、戻りかけた高桑の頭越しにループで狙うが、ややアーチが小さくキャッチされる。さらに39分にも波状攻撃から、最後は右サイドからボランチに回った芳賀博信が狙ったが、これもゴールバーに阻まれる。ほとんど動きを見せなかった仙台を、札幌が圧倒した前半だったが、スコアは動かず。当然、そのツケが回ってきた。



 後半に入ると、仙台が徐々に動き出し始める。そして49分、相手CKのピンチを凌ぐと、ブラジル人トリオのカウンターで札幌のラインを下げ、その後方でフリーになった左サイドバックの磯崎敬太が、余裕を持ってクロスを送る。中央のボルジェス、チアゴは囮。右サイドをスルスルと上がってきていた菅井直樹が、一度は林卓人に阻まれながらも、リバウンドを蹴りこんで先制する。

 狙い通りの時間帯にゴールを奪った仙台は、ゲームの流れを一気に引き寄せた。失点でダメージを受けた札幌は、前半にガソリンを相当使っていたこともあり、梁勇基らが、パスを散らし始めるとボールを追いかけるにも苦労する。間延びした中盤で仙台の選手たちは自由に前を向き、前線のボルジェス、チアゴにボールを集める。

 札幌の選手たちは見るからに消耗し切っており、ボールを奪うと適当に前線めがけて蹴りこんでは、仙台の守備ブロックに弾き返され、カウンターを食う。同点ゴールを目指すには、明らかに新しい血が必要だったが、そんな状況でも柳下監督は動かない。ようやく、2枚目のカードとして石井謙伍を投入したのは74分のこと。前線に石井を加えた3−4−3。スカスカの中盤をさらに薄くし、勝負に出た。



諦めない選手の背中を押した、スタジアムの空気も同点の一助になった。
 足を攣りながら前に向かう札幌の選手たち。その姿勢が、絶対的優位を築いていた仙台のジョエル・サンタナ監督を日和らせたのだろうか。相手のフレッシュなFWに対応するため、それまでカウンターの起点になっていたチアゴを下げて、渡辺広大を投入したのだ。前線でキープしながらゴールを狙い、また鳥かごを仕掛けていた仙台だが、ターゲットが減ったことによって、ボールキープができなくなった。

 どんなに足が上がっていても、相手がいなければセカンドボールは拾える。札幌は仙台ゴールに向かって波状攻撃を仕掛けた。ボールを受けるために引き気味のポジションをとるフッキのマークに千葉直樹をつけた仙台は、もはや守り倒すしかない。札幌のチャレンジに目が出るか、それとも仙台が逃げ切るか。最後は時間との戦いになった。

 そしてロスタイム。2枚の選手交代で時間を使いにいった仙台は、追いかける札幌に肩口を掴まれる。この試合、何本も西谷が上げ続けた左からのハイクロス。その最後の一本は、最高のスペースに吸い込まれた。途中出場していたエースナンバー・9番の頭がピタリとあった。仙台のネットが揺れた。

 何十本とセンタリングを上げた西谷。間髪入れずにボールを返してその時間を生み出したボールボーイ。そして最後まで全く席を立とうとしなかったスタンドのファン。スコアを記録したのは石井だったが、厚別のスタジアムにいた全員の力でもぎ取ったような同点ゴールだった。



 仙台は、サンタナ監督に魔が差したとしか言いようがない。互いにきつくなった終盤だが、それまでの運動量から備蓄燃料は仙台のほうに分があった。ここ3試合で10得点を挙げていた攻撃陣の好調さを考えても、そのままゲームを進めるべきだった。攻め合いに持ち込めば、失点を食う数倍も、ゲームを決める可能性があった。唯一の救いはまだ第1クールが終わったばかりということ。首位浮上を逃したドローが、そのまま致命的なものではないことだろう。

 一方の札幌は、本当に良く追いついた。前半に逸機の山を築いたことが直接的な苦戦の原因。今後はフッキを止められた時に、他の選手がゴールを奪えるかどうかが課題になりそうだ。現状、仙台との力関係には頭ひとつ分の差がありそうだが、そこで拾ったドローは大きい。まだまだ3クールも残されている。昇格するチームは、長い戦いの中でジワジワと成長していく。もちろん、札幌にも多くを期待して良いはずだ。


(コンサドーレ札幌) (ベガルタ仙台)
GK: 林卓人 GK: 高桑大二朗
DF: 加賀健一、池内友彦、千葉貴仁 DF: 菅井直樹、木谷公亮、白井博幸、磯崎敬太
MF: 芳賀博信、大塚真司(15分/藤田征也)、鈴木智樹(74分/石井謙伍)、西谷正也、砂川誠(81分/関隆倫) MF: 千葉直樹、梁勇基、熊林親吾(89分/中田洋介)、ロペス(89分/萬代宏樹)
FW: フッキ、相川進也 FW: ボルジェス、チアゴ(78分/渡辺広大)
<前へ次へindexへ>
topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink