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| webnews 06/08/12 (土) | <前へ|次へ|indexへ> |
静岡開催3年目にして、地元県代表・藤枝順心が初戴冠。
決勝進出を決めた静岡県代表・藤枝順心。初優勝なるか。 5年連続決勝進出を果たした常盤木学園。4年ぶりの優勝を狙う。
第15回全日本高等学校女子サッカー選手権大会決勝 常盤木学園高校vs.藤枝順心高校
2006年8月6日(日)10:00キックオフ ヤマハスタジアム 観衆:2,200人 天候:晴
試合結果/常盤木学園高校1−2藤枝順心高校(前0−2、後1−0)
得点経過/[藤枝順心]米津(前半14分)、佐伯(前半22分)、[常盤木学園]後藤(後半2分)
※本大会は前後半35分ハーフで行われた。
取材・文/西森彰
高校女子サッカー界のチャンピオンを決める、全日本高等学校女子サッカー選手権大会も今回で15回の開催を数える。静岡県磐田市での定期開催3年目となった今年は、山本昌邦・ジュビロ磐田前監督や、なでしこリーグの選手たちを含む、2,200人の観衆をスタンドに集めた。
私がこの高校女子サッカー選手権を見始めたのは、埼玉県のしらこばと運動公園競技場で行われた4年前の大会から。ヤマハスタジアムから帰宅後、その時の観客数を調べてみたが220人だった。サッカーどころ・静岡県で毎年同時期に行うことで、大会が認知されてきたことはあるだろう。尤も、今大会に限っては、開催県代表の藤枝順心高校がファイナリストに勝ち上がってきたことが、集客につながった。
磐田開催となってから2年連続で決勝トーナメント進出を果たしていた藤枝順心だが、昨年は鳳凰高校、一昨年は神村学園高校と、優勝経験のある鹿児島の名門校に屈してきた。3年連続で決勝トーナメント初戦を鹿児島県代表と戦うことになった今年は、2年連続優勝を飾っていた神村学園をPK戦で降して、鬼門を越えた。その勢いのままに準決勝でも、湘南学院高校を撃破し、この決勝へ駒を進めてきた。
これに対するは5年連続の決勝進出となる常盤木学園高校。長所を徹底的に伸ばす、阿部由晴監督の指導は、ユース年代で日の丸をつける選手、そしてなでしこリーガーを次々に育ててきた。第11回大会の優勝を最後に、その翌年から昨年まで3年連続の準優勝。もう一歩のところで涙を呑んできた。そろそろ、育成内容に伴う、結果がついてきても良さそうなものだ。
試合風景を撮影するためにピッチサイドへ降りる。スタンドの記者席からは緑一面に見えた芝も、強烈な日差しを反射し、フットライトのように光っている。その決勝戦のステージに両チームの選手たちが入ってきた。気温は30度を越えていた。体感気温は35〜40度にも達していただろう。午前10時キックオフとできる限りの配慮がされていたとは言え、連戦が続いている両チームの選手たちには、きついコンディションだ。
しかし、35分ハーフという試合時間を忘れたかのように、両チームのイレブンは試合に入った。互いにパスとドリブルを織り交ぜ、チャンスを作る。最初の15分間は、常盤木学園がやや優勢。しかし、先制点を手に入れたのは藤枝順心だった。ハーフウェーラインを僅かに越えたあたりでのFK。3バックのセンターに位置する米津瞳が蹴ったボールは狙ったところよりもやや距離が出すぎ、直接GKの正面へ流れた。だが、これを松山愛がファンブルし、ボールはゴールの中へ入ってしまった。あるいは、中天を目指した太陽が目に入ったのかもしれない。思いがけないゴールに喜ぶ藤枝順心。
常盤木学園にもまだ時間は十分にある。浮き足立つことなく、反撃に出る緑のユニフォーム。強力な両ウイングとセンターFWを軸にした、お馴染みの3−4−3。今年は右に堀良江、左に後藤三知が張り出し、中央には與山このみが座る。21分、左サイドを崩してのセンタリングを與山がシュート。これは藤枝順心のGK・柴田彩佳が好セーブ。22分には藤枝順心ゴール前で、後藤が倒されながらつなぎ、最後は與山がプッシュ。しかし、コロコロと転がったボールは、左ポストに弾かれる。
命拾いした藤枝順心は、そこからカウンター。前がかりになって薄くなった中盤で、佐伯彩がドリブルに入る。2トップの若林亜里と三宮詩貴が、常盤木学園の3バックをひきつけて、佐伯の進むコースを開けた時点で勝負あった。前に十分なスペースをもらった佐伯は、思い切って足を振り抜いた。素晴らしいミドルシュートが、常盤木学園のゴール左隅に飛び込んだ。
2点のビハインドを背負っても、常盤木学園は焦りも見せず、諦めもしなかった。前年は3点のリードを追いつかれ、PK戦で敗れている。相手にやられたことが、自分たちにできないはずはない。決して単調な放り込みに頼るのではなく、キャプテンの田中明日菜を中心にきっちりとビルドアップする。そして堀、後藤の両ウイングにボールを回し、サイドアタックからの折り返しを與山が狙う。
常盤木学園の猛攻に喰らいついていく藤枝順心
その攻撃が実を結んだのは、ハーフタイムを挟んだ後半の2分。右サイドから中央に送った堀のボールに、左外から中央に切れ込んでいた後藤が、体を投げ出すようにしてあわせる。これで1点差。その後も、一方的な常盤木学園の攻勢が、藤枝順心のゴールを脅かし続ける。追いつけば、勢いからいって、そのまま逆転は間違いない。ゲームの焦点は、常盤木学園が2点目を奪えるかどうかに絞られた。
藤枝順心のイレブンは、夏場の連戦に耐えられるように「毎日コツコツと渡辺(博尚)コーチが記録をとりながら、走りこみもやってきていた」(多々良和之監督・藤枝順心)。その成果だろう。劣勢に陥りながら、足を止めずに良く辛抱した。ボールを奪っても、常盤木学園のゴールを目指せるのは前の3枚だけ。まず、キープ力のある佐伯に預け、2トップも前線でキープすることを徹底する。そして、自軍ゴール前では、相手選手とゴールを結ぶライン上に体を入れ、本当に粘り強く戦った。
結局、そのままのスコアで試合終了。勝利を告げる笛が鳴った瞬間、藤枝順心の選手たちはピッチ上に倒れこんだ。最初は、歓喜の表現かと思ったが違った。彼女たちはピッチに立っていることさえできなかったのだ。スタンドへの挨拶もそこそこに、ふたりの選手がタンカで医務室に運ばれていった。表彰式のスタートは予定時刻よりも10分以上遅れることになった。
地元・静岡の記者が「向こうのほうが完全にゲームを支配していたのにね」と呟いた。その言葉どおり、試合内容では4大会連続で準優勝に泣いたチームが上回っていた。常盤木学園が放ったシュート数は、記録に残っているだけでも前後半あわせて11本。藤枝順心のシュート数は得点につながった前半の2本だけである。「ウチの選手たちには、まだまだ未来がある。だから、ここでは他のチームに運が味方している。私はそう思うようにしています」(阿部監督・常盤木学園)。
倒れるまで走り抜いて手にした初優勝。新しい歴史が始まった。
選手の長所を見極め、それをトコトンまで伸ばす、スペシャリスト育成型のサッカー。読まれていようがどうしようが、絶対に止められないストロングポイントを作って、そこを軸にしたサッカーをする。「世界の舞台で、アメリカやドイツの選手と互角に戦える選手を送り出したい」という、阿部監督の信念が感じられる戦いぶりは、今年も健在だった。
それでは、藤枝順心は幸運だけで夏の女王に輝いたのか。そんなことはない。まず常盤木学園の両ウイングについた杉本恵理、長澤まどか、長澤の後を受けた中塚理加の奮闘だ。確かに1対1の場面では苦戦を強いられることも多かったが、抜かれた後も必死で追いかけ、最終ラインとの連携で数的優位を作った。多々良監督も「それが大きかったと思います。目立たないかもしれませんけれども、最後まで自分の役割を果たしてくれたんじゃないかなと思います」と、その功績を認める。
攻撃面では、今大会登録選手の中でも最小143センチの三宮と若林の2トップ、そして佐伯の3枚が、預けられたボールを簡単に失わず、守備陣に息を入れる時間を与えた。これが35分間のハーフコートゲームを耐え切る上で大きな力になった。「(佐伯は)もともと本職はFWです。点を取れなくて悩んでいたようでしたけれども、あれは素晴らしいゴールだったでしょう? サイドにも流れられますし、突破もできる。ウチの攻撃の起点ですね」(多々良監督)。
そして文字どおり、ぶっ倒れるまで力を出し切った選手たちのハートも讃えられて良いだろう。自分たちのサッカーを貫いて勝とうとした常盤木学園。この試合を勝つことに全てをかけた藤枝順心。この試合をサッカー人生の一通過点と思うか、それとも大きなゴールのひとつと考えるか。この大会にかける執着心の差もあったかもしれない。
ブラジルが女子サッカーに視線を向け始めてあっという間に世界のトップグループに辿り着いた(あくまで私見だが、ドイツ、アメリカと3強状態にあると思う)。今回の藤枝順心の優勝を「サッカー王国・静岡の女子サッカー、成長の証」と捉えて良いのだろうか?
「いや、そこまでは、まだ言えないと思います。このチームにも県外から来た選手がたくさんいますし、地元の子たちを小中学年代から強化していかないと。まだまだこれからだと思います」
藤枝順心・多々良監督と、静岡女子サッカー界の挑戦は続く。
| (常盤木学園) | (藤枝順心) | |||||||
| GK: | 松山愛 | GK: | 柴田彩佳 | |||||
| DF: | 櫻本尚子、藤田裕美子、瀧澤優子 | DF: | 佐藤麻由、米津瞳、北原佳奈 | |||||
| MF: | 田子亜貴、田中明日菜、熊谷紗希、小池文乃(後半19分/黒川綾華)、堀良江、後藤三知 | MF: | 杉本恵理、高畑志帆、杉山祐香、長澤まどか(後半15分/中塚理加)、佐伯彩 | |||||
| FW: | 與山このみ | FW: | 若林亜里佐(後半34分/桜井玲加)、三宮詩貴 | |||||
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