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 webnews 06/08/31 (木) <前へ次へindexへ>
10年の歳月を経てオールスターキャストの夢舞台復活
モックなでしこリーグ オールスター2006

2006年8月27日(日) 19:05キックオフ 国立競技場観衆:8.027人 天候:曇
試合結果/なでしこEAST1ー2なでしこWEST(前0ー1、後1ー1)
試合経過/[WEST]大谷(19分)相澤(53分)[EAST]大野(58分)


取材・文/砂畑 恵

 よく「10年ひとむかし」と言われるが、10年の歳月は昔というあいまいな時の経過に1の目安を付ける数字なのだろう。なでしこリーグの前身であるJLSLは93年から96年の4年間、バレンタインデーの時期に東西対抗戦と呼ばれるオールスター戦を行っていた。今や当時を知るのは澤(日テレ)や磯崎(TASAKI)を含め6人。今回、最年少出場の加戸(岡山湯郷)に至っては小学校にも通っていない。

 この空白の期間は女子サッカーの苦悩の証でもある。バブル崩壊など時代のあおりを受け、女子サッカーを支えていた企業、そしてそのクラブに在籍選手は厳しい環境下におかれた。予算の縮小を迫られた程度はまだいい方。心ならずも撤退を決めた企業もあって、そこに所属していた選手は先行きに迷ったこともあった。それでも選手達が絶やさずに燃やし続けたサッカーへの情熱。それに賛同する企業や街が協力の輪を広げ、今日まで女子サッカーを存続させ、再びなでしこオールスターという夢舞台を開催するまでにこぎ着けた。

 試合前、コンコースに設置されたチームブースはグッズを買い求める人やクラブ会員に入会する人で大盛況。それに応対する選手やクラブスタッフは大わらわだが笑みが零れっぱなし。縁日に似たうきうきした雰囲気は誰もがこの日を待っていたんだと私に実感させる。



 だが試合が始まるとそんなお祭り気分は掻き消えた。リーグ戦さながらの激しいバトルがピッチで繰り広げられ、真剣勝負に徹した両チームのひとつひとつのプレーにスタンドの人々はあっという間に魅入られて、拳を握り、歓声を上げ、そしてため息を吐いている。

 そんな会場は19分、ひと際大きな歓声に包まれた。相手CKからWESTの鮮やかなカウンタ
ーが炸裂。宮間(岡山湯郷)の見事なロングフィードの受け手となった大谷(TASAKI)は中村(TEPCO)の厳しいマークに体勢を崩しかけた身体を立て直すと、GK山郷(浦和)の位置を見極めるやループシュートでネットを揺すった。至ってシンプルだが、互いが1本の糸で結ばれているようにイメージが合致し産まれたゴールはえも言えぬ爽快な気分にさせる。

 このゴールでWESTはがっちりゲームの主導権を握った。31分のCKでは下小鶴(TASAKI)が頭で流し佐藤(岡山湯郷)のシュート、34分の中盤の4人衆(宮間、山本、庭田、原)が3度のフェイクを入れるユニークなFKなど硬軟織り交ぜた攻撃で見せ場を作ったが、その攻撃以上に観客の心を掴んだのは息の合った守備ではなかっただろうか。

 戦前の予想では中盤を日本代表で固めたEASTの攻めをWESTがどう受けて立つかが勝敗の鍵を握ると私は読んでいた。そういうことではTASAKIそして日本代表でもCBを組む磯崎・下小鶴に佐藤と藤村(INAC)が脇を固めるディフェンスはEASTにとっては手強い相手。だがEASTにとってはその前にあたる中盤の守備を破ることが厄介だった。前線から下りてくる鈴木(TASAKI)まずフォアチェック。原(INAC)と庭田(高槻)は身体をぶつけることを厭わないタイトな守備でバックを助ける緩衝材の役割を果たすばかりか、引いてきた2列目の宮間と山本(TASAKI)とラインを形成してEASTの攻撃を食い止める。例えるならゴール前に防波堤、更にその前にも波消しブロックがあるようなものだ。

 勿論、EASTも手をこまねいてばかりではいられない。澤は味方のパスを引き出すために中盤の底に下がったり、代わって酒井(日テレ)や柳田(浦和)が2列目のポジションへ顔を出す、安藤(浦和)や大野(日テレ)が得意のドリブルで突っ掛けるなど変化を付けて対抗するが、どうしても内に攻撃が集中してしまいボールをインターセプトをされるシーンが増え前線の北本(浦和)にいい形で繋がらない。山岸(伊賀)・宇野(TEPCO)のCBを中心に守備が踏ん張り更なる失点を許さなかった、もう1つリズムに乗り切れない前半になった。



 そんなEASTを尻目にWESTは後半早々に加点を上げる。53分、相澤(高槻)のポストプレーからまたも宮間が相手DFの背後を狙ったボールを送り込む。そのボールを追い掛けた大谷は自分より確実にゴールを決められる中央に相澤が走り込むのを視界に捉えていた。大谷よりワンタッチで送り出された横パスを相澤はGK山郷の動きを見て冷静にゴールへと沈めた。

 しかしこのゴールがEASTの選手に火を付けた。その5分後、澤からパスを受けた大野がゴール横切るドリブルでWESTのDFをいなすとドライブの掛かったシュート。ポストを舐めたボールがゴールに吸い込まれた。1度引き寄せた流れは逃さないとばかりに怒濤の反撃を開始。川上・豊田(ともに日テレ)の思い切ったサイド攻撃に相手の守備は横に間延び。空き始めたなかには2列目、3列目が次から次へと走り込む。特に前半はやや下がり気味だった澤が前でのプレーを強く意識し出したことはWESTに脅威だったはず。また後半から投入された永里(日テレ)の存在感も強烈。67分、川上のクロスに合わせたダイビングヘッドはポストに嫌われはしたが、あの瞬間、WESTは「完全にやられた」と思ったに違いない。

 EASTの揺さぶりにWESTは前半よりもチームバランスが多少崩れてきてはいた。それでもその乱れを気持ちでカバー。途中後退で入った奥田(高槻)、中田や加戸(ともに岡山湯郷)も相手に喰らい付いて必死の抵抗を見せる。ここまでくるとどっちが音を上げるかの我慢比べ。結局、最後までEASTの猛攻を耐え忍んだWESTがなでしこオールスターを制した。

 試合後のなでしこ達は一様に充実した闘いをしたという満足感に包まれていた。そしてインタビューを受けたいずれの選手の口からも足を運んで下さったたくさんのファンへの感謝と、今後もこの大会を継続したいという願いの言葉が聞かれた。

 現実的な話をすれば興行という点でなでしこはまだまだ不安定だ。確かにJリーグは男性の持つ鋼のような肉体が織り成すゲームであり、それに比べればなでしこは「非力」=「つまらない」と思っているサッカーファンも少なくないだろう。けれど私はそんななでしこの評価は少し違うのではないか考えている。言うなればしなやかでそれでいて強かな青竹のようだと。だからどんなに恵まれぬ環境であろう根を張り巡らせ、簡単に折れたり諦めたりせずにゴールという至高の瞬間を目指し、ただひたすらに真っ直ぐ伸びて行く。それがなでしこなのだ。

 オールスターに集った選手達は今日の思い出を胸に9月3日に迫ったリーグ再開へと心を研ぎすませているだろう。もしも人生でなにか心打つものが欲しいと思ったならなでしこリーグに行ってはいかが。きっとそのなにかを彼女達があなたと一緒に見付けてくれるはずだから。


● なでしこEAST 松田岳夫(日テレベレーザ)監督の試合後のコメント
● なでしこWEST 仲井昇(TASAKI)監督の試合後のコメント
● 試合後の選手コメント
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(なでしこEAST) TEPCO、浦和、日テレ、伊賀 (なでしこWEST)  高槻、TASAKI、INAC、岡山湯郷
GK: 山郷のそみ(69分/増田亜矢子) GK: 福元美穂(83分/秋山智美)
DF: 山岸靖代(HT/豊田奈夕葉) 宇野涼子 川上直子 DF: 磯ア浩美 下小鶴綾 佐藤シェンネン 藤村智美(HT/奥田亜希子)
MF: 酒井與惠 安藤梢(69分/村岡夏希) 柳田美幸 澤穂希 中村真美(69分/田代久美子) MF: 庭田亜樹子 山本絵美(61分/中田麻衣子) 原歩(61分/加戸由佳) 宮間あや
FW: 大野忍 北本綾子(HT/永里優季) FW: 大谷未央 鈴木智子(HT/相澤舞衣)
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