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 webnews 08/01/02 (水) <前へ次へindexへ>
歴史に残る大激戦。鹿島が2冠に王手。
第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 川崎フロンターレvs.鹿島アントラーズ

2007年12月29日(土)15:04キックオフ 国立競技場 観衆:22,457人 天候:曇
試合結果/川崎フロンターレ0−1鹿島アントラーズ(前0−0、後0−1)
得点経過/[鹿島]本山(72分)


取材・文/中倉一志

 90分間を戦って生まれたゴールはひとつ。決して守りあっていたわけではない。勝利を目指して、あくなき闘争心とゴールへの強い思いをぶつけ合った試合。互いに持てる力のすべてを発揮し、攻めに攻め、そして水際でゴールを守りあった。すさまじいばかりの闘志がぶつかり合う試合は、両チームのサポーターはもとより、多くの天皇杯ファン、メディアら、いつしか、スタジアムに足を運んだすべての人を引き込んだ。

「リーグチャンピオンと準決勝で戦えて光栄に思います。我々の力を出し切った試合だったんじゃないかと思います。非常に球際も厳しい一戦で、本当に少しのところで決めることができず、鹿島さんに決められた。本当に少しの差で決勝進出を逃してしまったなと思います」(関塚隆監督・川崎F)。両チームの差を戦いの中に見出すのは難しい。ゴールを奪ったチームと、ゴールを奪えなかったチーム。互いの間に確認できた差はそれだけだった。



 立ち上がり、川崎の両WBの位置が低い。サポーターの思いに押されて戦う天皇杯。その気持ちに応えるためには勝ち進むしかない。慎重にと言うよりは、攻めに出るために細心の注意を払った結果。その体制とは裏腹に、心の中ではゴールを求める積極性が隠されていた。そして11分、オフサイドラインぎりぎりから飛び出したジュニーニョがGKと1対1に。最初の決定機を作る。この場面はGK曽ヶ端準のスーパープレーに防がれたが、川崎のタイトルにかける気持ちを見せ付けるには十分だった。

 ここから川崎はボールを支配してゲームを進める。ハーフウェイライン近くに形成する最終ラインをでボールを回し、そこからジュニーニョ、あるいは両WBにボールを供給。縦への力を生かして鹿島ゴールを狙う。低く構えていた川崎に対して前へ出た鹿島だったが、いつしか、リトリートした体制で川崎を待ち受けるようになった。

 しかし、鹿島は受身になっていたわけではない。「川崎は攻撃的なチーム。守備の意識は持たなくてはいけないと選手達には話した。特にジュニーニョをフリーにさせれば危険な選手であるし、危険な状況を作り出す選手なので、そこをまずおさえるということ。そこの部分をおさえていけば、攻撃的なチームというのはどこかに守備のウィークポイントがあるわけで、来たいなら来いという形で構え、できたスペースで今度は我々攻撃陣のスピードとテクニックを考えれば、それを打開できる場面は出てくるはず」

 オリヴェイラ監督の言葉どおり、鹿島はジュニーニョをゲームの中から消し、ペナルティエリアから先に川崎の侵入を許さない。前半のボール支配率は川崎に譲ったが、気がつけば、鹿島の狙い通りにゲームをコントロールした。鹿島が一枚上手か?そんな雰囲気を漂わせながら試合は前半を折り返す。



 ゲームが激しく動き出したのは後半に入ってからだった。小笠原満男からボールを奪った中村堅剛がドリブルでペナルティエリア深い位置まで入って右足を振りぬく。これもGK曽ヶ端準の前に阻まれたが、ここから互いの勝利に対するあくなき執念がぶつかり合う。54分、本山雅志がドリブルから際どいシュートを放てば、11分にはジュニーニョのシュートがゴールを襲う。60分、川崎がカウンターから決定的なシーンを作りだすと、そのこぼれ球を拾って、鹿島がカウンターからゴールチャンスを演出する。

 さらに68分、ジュニーニョのシュートがサイドネットを揺らすと、69分には本山のシュートがポストを左にかすめる。そして守備陣も負けてはいない。相手が作り出した決定的なチャンスを驚異的な粘り越しで跳ね返していく。いつ、どこで、誰がゴールを決めてもおかしくない展開。そして、高い集中力を維持する守備陣は決して得点を許さないように思われる展開。その戦いには壮絶という言葉が似合う。そんな試合に、いつしかスタジアムにいる全員が引き込まれていく。

 しかし、そんな試合もついにゴールネットが揺れた。時間は72分。曽ヶ端が蹴った間接FKを田代有三が頭でゴール方向へ流す。これをクリアしようとした川崎DFだったが、微妙な高さにフワフワと飛ぶボールに頭を合わせるので精一杯。コントロールしきれないボールがふわりとゴール前へと流れた。そこへ飛び込んできたのは、この日、抜群の切れ味を発揮していた本山。落下してくるボールに迷わずに右足を合わせた。「ドン」。ボールの芯を捉える音がスタジアムに響く。次の瞬間、割れんばかりの歓喜の声が鳴り響いた。

 そして、ここから鹿島の守備力が際立つ。守りを固める鹿島は、猛攻を繰り出す川崎に押し込まれながらも、ギリギリのところで跳ね返していく。そして3分間のロスタイムを凌ぎきって決勝進出を決めた。



 あっという間の90分。死力を尽くした90分。サッカーの素晴らしさを余すことなく見せてくれた試合は、間違いなく天皇杯の歴史に残る大激戦だった。そんな試合をオリヴェイラ監督は振り返る。そして決勝戦に迎える相手は広島。心身ともに激戦を制した疲労は残るが、今の鹿島には、それを乗り切る勝負強さがあるように見える。「(この勝負強さは)昨日今日に培ったものではなくて、積み重ねによってできたのではないかと思う」(同)。その勝負強さを武器に鹿島は天皇杯2連覇、通算11個目のタイトルを目指す。

 そして敗れた川崎。サッカーの質、技量、試合の中での駆け引き、集中力。どれも鹿島と互角に渡り合った試合。冒頭にも書いたように敗因を探すことは難しい。あえて違いを見つけるとするならば、それは「勝負強さ」ということ七日もしれない。ナビスコ杯、そして、この日の準決勝と、勝者にふさわしい戦いをしながら敗れたのは偶然ではないかも知れない。

「タイトな試合、ファイナルやセミファイナルというところで戦いながら、培っていく部分が大きいのかなと思う」。足りない何かを手に入れる術は経験を積み重ねることだと関塚監督は語る。しかし、2007シーズンの川崎の戦いを振り返るとき、彼らがビッグクラブにふさわしい実力をつけたことは誰もが認めるところ。大舞台での経験を積む土壌は整っている。川崎が彼岸の初タイトルを手にする日は、そう遠くない未来にやってくることになるだろう。


(川崎フロンターレ) (鹿島アントラーズ)
GK: 川島永嗣 GK: 曽ヶ端準
DF: 箕輪義信 寺田周平 伊藤宏樹 DF: 内田篤人 岩政大樹 大岩剛 新井場徹
MF: 森勇介 中村憲剛 河村崇大(76分/久木野聡) 村上和弘(63分/井川祐輔) マギヌン MF: 青木剛 小笠原満男 本山雅志(87分/中後雅喜) 野沢拓也(75分/ダニーロ)
FW: チョン・テセ(80分/黒津勝) ジュニーニョ FW: マルキーニョス(89分/柳沢敦) 田代有三
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