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 webnews 08/01/13 (日) <前へ次へindexへ>
国内タイトルを独占して津四つを見せ付けた日テレ・ベレーザ
日テレ、元日決戦でライバルを降し、シーズンタイトルを総ナメ。
第29回全日本女子サッカー選手権大会 決勝 TASAKIペルーレFCvs.日テレ・ベレーザ

2008年1月1日(火)10:30キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:11,725人 天候:晴
試合結果/TASAKIペルーレFC0−2日テレ・ベレーザ(前0−1、後0−1)
試合経過/[日テレ]大野(17分)、荒川(55分)


取材・文/西森彰

 女子版の天皇杯として知られる全日本女子サッカー選手権大会。この大会を語るにあたって、TASAKIペルーレFCと日テレ・ベレーザを外すわけにはいかない。何しろ、両チームともに出場していなかった日を資料で紐解くと、9シーズン前のプリマハムFCくノ一(現・伊賀FCくノ一)と日興證券ドリームレディース(消滅)の顔合わせとなった第19回大会までさかのぼる必要がある。過去10年間で日テレは6回出場して4勝、TASAKIは7回出場して4勝している。

 そして、今年も東西の強豪が決勝で「いつものように」顔を会わせた。今シーズンの日テレは、なでしこスーパーカップに始まり、mocなでしこリーグ、なでしこリーグカップとあわせて既に3つのタイトルを勝ち取っている。そして、ここ最近の成績は日テレの後塵を拝しているとは言え、TASAKIもリーグ2位、秋田国体優勝と、決して悪いシーズン成績ではない。岡山湯郷Belleを降して勝ち取った元日女王の座を、1年で明け渡すつもりはない。



4-1-4-1の布陣で組織的な守備を見せたTASAKI。攻撃とのバランスをどうするか、それが来シーズンへの宿題だ。
 日テレと対戦するチームにとって、最大のポイントとなるのは90分間のペース配分である。江戸川区陸上競技場で行われた「リーグの優勝決定戦」では、TASAKIが高いラインと厳しいプレスで、試合途中まで互角に戦っていた。しかし、結局は足が止まった終盤に、一方的な内容で日テレに屈した。ペースを渡すまいとすれば、エンジンを全快にする必要がある。だが、それは、終盤のガス欠につながる。

 この矛盾する命題を突きつけられたTASAKIは後ろの人数を増やすことで対応した。リーグ戦の終盤から、ケガ人が続出していたFWのポジションを1枚に減らし、新システムの4-1-4-1で今大会に臨んできたのである。中盤の底に白鳥綾、その斜め前方に中岡麻衣子と山本絵美。アウトサイドに得点力のある阪口夢穂、大石沙耶香を置くことで、日テレの両サイドバックに無言のプレッシャーがかかる。攻撃力を秘める近賀ゆかりの攻撃参加も制限された。

 後ろ目に位置する酒井は「あまり苦しかったという意識はない。前から追いかけてこなかったので、ボールを回すのは楽だった。ただ、私たちの場合、ボールを回すのが楽しくなってしまって、ゴールへ向かうプレーにつなげられなくなっちゃうことがある」。また、「これまで対戦してきて、前から追いかけてくるというイメージがあった。あまりにも裏を狙おうという意識が強過ぎた」(松田監督)日テレの選手が縦のボールを狙うと、目を細かくしたTASAKIの網に引っかかる。

 そして、自分の懐に相手を呼び込んでおいて、薄くなった最終ラインに、1トップの大谷未央をぶつける。これが開始早々の2分、ビッグチャンスを呼び込む。ペナルティボックス付近で、大谷が飛び出した小野寺ともつれながらボールをキープし、フォローに来た大石につなぐ。大石のループシュートは無人のゴールへと放たれたが枠を外れた。狙い通りにチャンスを作ったTASAKI。これは決めておきたかった。

 最初は戸惑った日テレも反撃に出る。10分、混戦から大野忍がシュート。18分には楔を打ち込みながらTASAKIのバイタルエリアを攻略し、伊藤香菜子がシュート(GK・佐々木香織がセーブ)。19分に混戦から永里が狙い、24分には澤穂希のループシュートが、佐々木の頭越しにゴールバーを襲う。それでも、TASAKIはゴールを許さず、リスクを承知でラインを高く押し上げていた。その一瞬の隙を、日テレが襲う。

 32分、クリアボールを受けた永里優季が裏のスペースへ蹴り、同時に大野忍がトップスピードでこれを追う。必死で戻ろうとしたTASAKIのDFたちに見えるのは自分たちのゴールと、ボール保持者の大野だけ。ペナルティエリア左に侵入した大野が、背後から追いかけていた澤を視界に捉える。ニアサイドに到達するタイミングで大野がマイナスのボールを送る。

「当てるだけで良かった」という澤が、しっかりとTASAKIゴールに蹴り込む。ひとつひとつのプレーを厳しくジャッジする松田監督さえ「澤と大野のふたりの判断が非常に良かった」と口元が緩んだ。ボールの出し手と受け手の呼吸が完全にあった先制ゴールだった。



全日本選手権のタイトルを取り返した選手たちを讃えるサポーターたち。
 後半に入ると、両軍は置かれた状況に対応する。「0−0で後半勝負」というゲームプランが崩れたTASAKIの仲井監督は「ハーフタイムは『プレッシングを強くしよう』という指示を出しました」。4-1-4-1のフォーメーションを変えるのではなく、チェイシングを始めるゾーンを、前半よりも高めに設定して、反撃を画策した。

 一方、日テレの松田監督は「1−0でリードしていましたけれども、後半、それを守るだけの試合にはしたくなかった」という。「球出しが引っかかっていた」豊田から、ロングフィードができる宇津木へのリレーは、相手が引いていればガードの上からアーリークロスを叩き込めるし、前に重心がかかれば長いボールで相手を押し戻せる。荒川の「スピードとキープ力を期待した」(松田監督)もの。これも、少ない枚数でのカウンター、密集地帯でポイントの構築に有効だ。TASAKIが前に出てきても、前半同様に引いた状況をキープしても対応できる、攻守兼用の交代だった。

 こうして双方、戦術面で若干の修正を加えたが、その後はスコアが動かない。膠着状態の55分、TASAKIは運動量が落ち始めた中岡麻衣子に代えて清原万里江を投入。さらに71分、負傷を抱える鈴木智子を前線に入れて、大谷との2トップに変更する。「ケガを抱えている鈴木を『最後までもつ』と信じて投入しました」(仲井監督)。しかし、そうした博打を打っても、戦況を打開するには至らない。

 そして86分、TASAKIの攻勢を受け止めた日テレは、カウンターから伊藤が最終ラインの裏に浮き球を落とす。これを走りこんで受けた荒川が、そのまま独走。きちんとゴールに流し込んで、決定的な2点目を追加。この瞬間、日テレのシーズン4冠達成が確定した。



勝ってもなお上を目指す日テレ・ベレーザ。その強さはゆるぎない。
 試合内容はともかく、勝負を最優先するのであれば、引いて相手の使えるスペースを潰し、ロースコアゲームに持ち込むというTASAKIのゲームプランは正解だった。「ようやく機能し始めた」(仲井監督)4-1-4-1の布陣が、日テレのチャンスを半減させたことは間違いないし、前半にはカウンターから先制のチャンスもあった。だが、後ろに人数をかければ守備は安定するが、前線の枚数が減る。そのバランスがもどかしい。

 フォローを受けられず、孤立した前線の選手には、フラストレーションが溜まる戦術でもあっただろう。「(4-1-4-1の1トップは)確かに負担が多少なりともあったんですけれども、それを打開できる力が自分に欠けていることを痛感した。相手がふたり、三人でも打開できる力を身に付けたいと思います」と大谷は唇を噛んだ。どこまでリスクを負って出て行くのか。これは来シーズン以降に残された冬休みの宿題である。

 そして勝った日テレは、なでしこスーパーカップに始まり、mocなでしこリーグ、なでしこリーグカップとあわせて4冠を達成した。キャプテンの酒井與惠は「『結果だけしか残っていない』と厳しく言われています。ただ最低限の結果で4冠を取れた」とシーズンを振り返ったが、指揮官はまだまだ手綱を緩めようとはしない。

「こうして4つのタイトルをとれましたけれども『このままで良いのか?』という疑問もあります。判断を良くすれば、もっとやれると思いますし、もっともっと高めていきたいです。今日も、ピッチレベルで見ていると不満がたくさんありました。前座試合でしたけれども1万人を超えるお客さんがいましたし、もっと女子サッカーの上手さ、強さをアピールしたかった。もうちょっとやりたかったというのが正直な感想です」(松田監督)


●試合後の監督・選手コメント


(TASAKIペルーレFC) (日テレ・ベレーザ)
GK: 佐々木香織 GK: 小野寺志保
DF: 甲斐潤子、磯ア浩美、下小鶴綾、佐野弘子 DF: 近賀ゆかり、岩清水梓、中地舞、豊田奈夕葉(H.T/宇津木瑠美)
MF: 白鳥綾、中岡麻衣子(55分/清原万里江)、山本絵美、阪口夢穂、大石沙弥香(71分/鈴木智子) MF: 酒井與惠、小林弥生(89分/四方菜穂)、伊藤香菜子、澤穂希
FW: 大谷未央 FW: 大野忍、永里優季(H.T/荒川恵理子)
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