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 webnews 08/02/20 (水) <前へ次へindexへ>
佐々木ジャパン、追い風に乗って出航
東アジア女子サッカー選手権2008 決勝大会 日本女子代表vs.北朝鮮女子代表

2008年2月18日(月)17:00キックオフ 永川スタジアム
試合結果/日本女子代表3−2北朝鮮女子代表(前1−1、後2−1)
得点経過/[日本]安藤(3分)、[北朝鮮]リ・グムスク(38分)、リ・ウンギョン(55分)、[日本]宮間(82分)、澤(90+4分)


写真/早草紀子 文/西森彰

 佐々木則夫新監督が就任したなでしこジャパンは、その初陣として東アジア女子サッカー選手権に乗り込んだ。3年前はひとつの勝ち星も、ひとつの得点も奪えずに終わった同大会だが、その時よりも悪条件が重なっていた。



 静岡合宿当初、短いオフが明けたばかりの選手たちからは、全般に動きの重さが目立っていた。新体制発足後初めての合宿は、今月の4日にようやくスタートしたばかり。約2週間のトレーニングで、この大会へ臨む必要がある。佐々木監督は「本当なら、まだ体作りに充てたい時期ですが、この大会があるので仕方がない。しかし、この大会に勝つための準備ではなく、北京に向けてのステップ1として位置づけたい」。

 慣らし運転を兼ねた、なでしこチャレンジプロジェクトとの合同合宿を経て、チーム戦術に手をつけ始めたのが10日前の金曜日。8月に行われる最大目標・北京オリンピックへ向けてシステムを変更し、チームとしての優先順位も変更した。午前・午後の2部練習をした上で、90分間戦えるだけの体力をつけるため、最後に30分間弱のフィジカルトレーニングも並行した。

 急仕上げの反動から、選手たちの疲労も目に見えて大きかった。1週間前に行われたトレーニングマッチでは、当初45分ハーフの予定が「昨日の選手たちの状況を見て、難しいなと感じていたので、35分ハーフにしました」(佐々木監督)。後半は疲労から、頭の昨日も衰え、判断の遅れるシーンも目立っていた。激しい競争の中で原歩、山岸靖代(以上INACレオネッサ)がケガで合宿を離れ、現地に入ってからも下小鶴綾(TASAKIペルーレFC)が負傷で離脱した。登録人数が少ないレギュレーションの中、戦力は19名に減った。

 その上、初戦で矛先を交えるのが北朝鮮だ。FIFA女子ランキング6位にして、アジア最強のチームに、これまで日本は僅かに2勝しか挙げていない(どちらも日本国内で行われたホームゲームだ)。こちらは、大会出場4カ国中、唯一指揮官の交代もなく、選手たちにしても経験豊富なリ・グムスクなど女子ワールドカップ組の大多数が残っている。しかも国策として国際大会には全力を傾注してくるお国柄。

「相手は早い段階から準備してきているらしく、それが私たちの初戦の相手。すごくタフな戦いになることはわかっていますけれども、楽しみといえば楽しみです。ラクな試合はないですし、大変な試合にはなると思います。でも、準備が不足しているなりに形が見出せれば良いと思います」

 合宿の早い段階で話を聞いた、澤穂希(日テレ・ベレーザ)のコメントからも多くを期待するのは酷だと感じさせられていた。だが、この悲観的な予想は、良い意味で外れた。



 3分の先制点は、日本のストロングポイントであるセットプレーから。宮間あやの正確なキックに安藤梢がピタリと頭を合わせた。これが大きかった。3ラインとボックスの中間に近い日本の4-4-2は、フォワードにボールが渡った時にどこまで人数をかけるかの判断がポイントになる。そして、合宿中はどの場面で誰がフォローするのか整理が間に合わず、所属チームで特徴を知っている澤がボランチから飛び出した時しか、チャンスが生まれていなかった。

 そこに望外の先制点がもたらされ、無理に前へ出る必要がなくなった。ラインは高く保ちつつ、コンパクトな2ラインをキープして前へ出てくる北朝鮮の攻撃を面白いように網にかける。そしてボールを奪うとパスを交換しながらスペースを探り、前後左右に振り回す。ぬかるんだピッチに足をとられながら走る北朝鮮の選手たちは、ももからふくらはぎにかけての筋肉に乳酸を溜め込んだ。

 恐れていたように30分前後から、日本の足が止まり始めた。北朝鮮は、さらに人数をかけてくる。両サイドハーフが守備に追われ、いくつかの決定機を作られたディフェンダーも、ズルズルとラインを下げる。孤軍奮闘する2トップへもボールが渡らない状況を見て、佐々木監督は前線へのリレー地点を作ろうと、フォワードに縦の関係を要求。4-4-1-1へシステムを変更した。

 しかし、北朝鮮の攻勢は続く。38分の失点は、押し込まれる展開に危機感を抱いていただろう、福元美穂がライン裏のボールに飛び出したところを交わされての失点。本人にしてみれば、このボールをディフェンダーに任せていては、試合にならないと考えてのプレーだったろうが、この失点で、さらに最終ラインは裏のスペースを気にして、高いポジションを取れなくなった。



 ハーフタイムを挟んでも試合の流れは変わらない。エースのリ・グムスクにボールを集める北朝鮮にとって、日本は格好のサンドバックになってしまう。そして55分、中盤でボールを奪われ、そこからリ・ウンギョンのミドルシュートで逆転を許す。この場面では攻めあがったこのボランチへのマークを大野忍と宮間が譲り合うようなところも見られた。

 日本は失点直後、安藤梢を下げて荒川恵理子を投入。澤と荒川を2シャドーに置き、阪口夢穂ひとりに舵取りを託す4-1-4-1に移行した。高い位置に移った澤が1本、2本とシュートを放つ。北朝鮮も、ゲームを決定する3点目のチャンスを2度、3度と迎えるが、リ・グムスク、キム・ヨンエのシュートが枠を外れる。この日の日本には運もあった。

 決定機を逃し続けた北朝鮮は攻め疲れから、足を攣る選手が何人も出てきた。それまで防戦一方だった日本は、ここで攻勢に転じた。ドリブルとパスを交えた攻撃がファールを誘い、得意のセットプレーを勝ち取る。82分、左からのFK。宮間の蹴ったボールもGK手前でバウンドするいやらしい弾道だったが、岩清水梓が飛び込んでDFと潰れて援護。これに幻惑されたハン・ヘヨンは無抵抗だった。

 追いついた日本は同点直後に丸山桂里奈を、追いつかれた北朝鮮もチョ・ユンミとラ・ウンシムを1枚ずつ投入。どちらの頭にも引き分けという選択肢はない。そして、ロスタイム、2度のコーナーキックを福元のセーブなどで凌いだ日本は、劇的な澤のゴールが激闘にピリオドを打ったのである。



 佐々木監督は就任初戦で、北朝鮮から勝利を奪う最高のスタートを切った。もちろん、この勝利は「方向性が間違っていない」という自信を選手たち(もちろんスタッフにも)に芽生えさせたはずだ。勝利(状況的には番狂わせに近い)を呼び込んだ要因はいくつか挙げられる。

 最後の時間帯まで足を残した、先制後約30分間のコンパクトな守備。それを差し引いても1週間前とは別人のような日本チームの運動量。ミッドフィールド中央に澤、阪口、荒川、永里と当たり負けしない選手を置いた選手起用。そして前へ出る意識を取り戻させた4-1-4-1へのシステム変更。これまでの日本サッカーを鏡で見るような、北朝鮮の「決定力不足(2点をとっているチームに言うのもおかしいが)」、などなど…。

 ただ、この時期に最も重要なのは佐々木監督自信が口にしているように、ゲームの中から見えてきた課題である。2失点を招いたミスはもちろん、2トップに楔を当ててからの連続したダイレクトプレーでは、パスのズレが目立った。そして、相手のサイドハーフが上がってきた時に、安藤、宮間がつくのか、それとも近賀、柳田に任せるか、プライオリティがボヤけているシーンも多かった。

 この一勝が北京での成功を約束してくれるものではない。私も、次戦以降の課題を反芻しつつ、ついニヤけそうになる表情を引き締めておこう。


(日本女子代表) (北朝鮮女子代表)
GK: 福元美穂 GK: ハン ヘヨン
DF: 近賀ゆかり、岩清水梓、豊田奈夕葉、柳田美幸 DF: ソン・ジョンソン、ソヌ・ギョンソン、ホン・ミョングム、オム・ジョンラン
MF: 安藤梢(55分/荒川恵理子)、澤穂希、阪口夢穂、宮間あや MF: リ・ウンギョン、キム・ギョンファ(77分/チョ・グムスク)、キル・ソンヒ(87分/チョ・ユンミ)、リ・ウンスク
FW: 永里優季(83分/丸山桂里奈)、大野忍 FW: リ・グムスク、キム・ヨンエ(89分/ラ・ウンシム)
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