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 webnews 08/04/30 (水) <前へ次へindexへ>
ブラジル代表プレチーニャの突進
岡山湯郷、完成度にモノを言わせて、オープニングマッチを制す。
プレナスなでしこリーグ2008 ディビジョン1 第1節 INACレオネッサvs.岡山湯郷Belle

2008年4月13日(土)14:00キックオフ 三木総合防災公園陸上競技場 観衆:620人
試合結果/INACレオネッサ1−2岡山湯郷Belle(前0−2、後1−0)
得点経過/[岡山湯郷]加戸(4分)、城地(28分)、[INAC]那須(46分)


取材・文/西森彰

 勝負の世界では、勝つことによって得るものは大きい。しかし、ごく稀に、負けてようやく得ることができるものもある。岡山湯郷Belleにとってのそれは、シーズン前に行われたBelleカップだった。

 神村学園高校には2対4と破れて、なでしこリーグ所属チームで唯一、グループリーグで敗退。翌日の順位決定リーグでも、吉備国際大学にPK負け。どちらもアンラッキーな敗戦などではなかった。

 前年5位のチームは、今年、大量12名の入団者を迎えた。「去年は怪我人が何人か出るとアウト。選手交代をしようにも、ベンチを振り返ったらひとりしかいなかったこともあったし」と本田監督。確かに、スペアはいくつも増えた。それでも、新選手がチームに溶け込むのは時間がかかる。

 攻守の軸となる宮間あや、福元美穂は、シーズン前に、なでしこジャパンの合宿・大会で長期間、チームを離れていた。彼女たち抜きで練習していたチームは、帰国直後のBelleカップで連携不足を露呈した。ニューカマーがぶっつけ本番でチームコンセプトを理解することは無理だった。

「あの後、選手たちとも話し合って、とりあえずのところは昨年までのチームをベースにすることにした。やっぱり、いきなり半分を取り替えてしまうとチームにならない」(本田監督)

 Belleカップの1週間後に乗り込んだマリーゼフェスタでは、昨年までのメンバーに立ち返った。そこで4連勝を飾って、いちおうの立て直しに成功している。

「痛い目にあったのが先週で良かった」

 宮間あやは安堵の声をもらした。



 それに比べて、INACレオネッサは開幕までのスケジュールを順調にこなしていた。前述のBelleカップでは「ケガ人がいてベストメンバーじゃない」(藤村智美)状態で、白星を4つ並べて優勝。どのチームにも力の違いを見せ付けた。

 GKに海堀あゆみ、CFに鈴木智子。なでしこジャパンクラスが最前線と最後方に揃った。日本体育大学出身の川澄奈穂美は、五指に余るチームが興味を示していたスーパールーキーで「思っていた以上に、いろいろなことができる」(藤村)とチーム内の評価も高い。

「去年までは、まだ私たち自身が『そこ(優勝圏内)までのチームではない』と思っていました。今年はオフの間から優勝を目標に練習してきましたから、そこが違います。それに、オフに辞めた選手たちのためにも、残った選手は彼女たちの分まで頑張らなければいけない」

 なでしこリーグのシーズン開幕プレスカンファレンス終了後、藤村智美は真剣な表情でそう口にした。今年、ユニフォームの袖に腕を通す選手たちにとって、優勝争いは義務なのである。油断などあろうはずがなかった。



先制点を挙げた加戸(中央・白)
 しかし、サッカーはやってみなければわからない。90分間の勝負を終えた時に勝者となっていたのは岡山湯郷だったのである。

 シーズン前に「今年のINACは強い。優勝争いでも良いところまで行くと思う」と宮間あやは話していた。弱者の立場を理解した彼女たちは「失点しなければ負けない」というリーグ戦の鉄則を墨守することにしたのである。とにかく出足が早いし、球際への一歩で上回る。鈴木、川澄が入り、攻撃の形を模索中のINACを、完成度9割以上のディフェンスが迎え撃つわけだから、どうしてもそうなる。

 さらに前半4分、望外の先制点が入った。中野真奈美のシュートがDFに当たって、左サイドハーフで先発していた加戸由佳の前にこぼれたのである。ほとんど角度が無かったし、GKは海堀。とてもゴールが入るとは思えなかったが、なまじミートしなかったのが幸いした。ゴロゴロと転がったボールは、海堀のタイミングを外し、INACゴールに転がり込んだ。

 その後も岡山湯郷の攻撃的守備(日本語として変だが、この表現が妥当だと思う)が、INACの攻め手を消しまくる。前線からの守備が縦に入れるボールを引っ掛け、なかなか自陣ボックス付近まで運ばせない。さらにボールを奪うと、DFラインの裏へ蹴り込み、失った土地を取り返す。28分には、宮間の蹴ったCKに城地泰子が飛び込み、追加点まで転がり込んだ。



 攻撃的布陣で岡山湯郷の守備を圧殺するはずが、逆に2点を奪われてしまったINAC。田渕監督は、ひとまず悪い流れを切ろうと、後半から柳井里奈を投入した。すると、この日、100試合出場を達成した那須麻衣子のスーパーミドルが、岡山湯郷のゴールネットを揺らす。勢いは変わった。

 前半は劣勢だったミッドフィールドの消耗戦で、INACが徐々に主導権を握り始めた。「正直、前半、後ろにいてくれて助かった」(宮間)という原歩が、前にかかり始め、チーム全体に勢いが出た。こうなると、単純に止める、蹴るの部分で個の力差が出てくる。縦に早いボールも入るようになり、岡山湯郷陣内でのプレー時間が増え始めた。

 そして、61分には同点のチャンスを迎える。米津美和が前線でタメを作り、走り込んできた鈴木に流す。完全にフリーの状態になっていた鈴木は思い切って足を振りぬく。崩しも、シュートもパーフェクトだったが、GK・福元のセーブもまたパーフェクトだった。腕に当たったボールは枠を外れていった。これが最後のビッグチャンスだった。

 その後は、前半から相手を押し戻すためにロングボールを蹴り続けた岡山湯郷のジャブが、徐々にINACの足を止め始めた。もちろん、守備に追われていた岡山湯郷もフラフラの状態にはなっている。追いつけばそのまま逆転の流れなのだが、1点のリードを心の糧に粘り強く、耐えしのぐ。

 両チームはほぼ同時に動けなくなった。そしてそのままタイムアップの笛を聞いた。



TASAKIから移籍した鈴木(左)
 INACは痛い敗戦を喫した。

 まず、本来なら1、2点を奪っておかなければいけない時間帯に、逆に先制点、追加点を許した。攻撃的陣形が受けに回されて、無為に足を使わされた。「直前の紅白戦で一番、しっくりくる並びを選んだ」(田渕監督)が、柳井里奈が入って以後にチームは安定感を得た。結果論で言えば、攻守のバランスがとれる柳井を先発し、ジョーカーで川澄のほうが良かった。

 次に、気持ちの部分で受けに回ってしまった。岡山湯郷が沈没したBelleカップでも、余裕の優勝。オフシーズンも海外クラブとのゲーム以外は連勝を続けていた。強くなった自分たちへの自信から、相手に胸を貸すように立ち上がった。これが致命傷になった。笛に恵まれなかったことなど、運不運の部分もあるが、戦いぶりに反省すべき箇所も残っていた。

「まだ競ったゲームになると新しい選手とのコンビネーションが不足しているし、厳しくなっている部分もある。これから、徐々にそれを修正していこうと思います。まだあと20試合ありますので」(田渕監督)

 負けてようやく得るものもある。このゲームが次につながる負けになればいい。



「どうだ、見たか」と笑顔の本田監督に「拝見しました」と頭を下げる。当該週に発売されたサッカーダイジェスト誌の記事である。たまたま、段落の切れ目が、昨年度上位4チームと下位4チームの記述の間にあり、これについて「チクリ」とやられたわけである。

 チームの完成度にモノを言わせた勝利だった。左サイドバックの津波古友美子以外の10人は、昨年からチームに所属している選手。ポジションを変えたのも、加戸だけだ。プレスの掛け方などは、阿吽の呼吸でわかっている。その上に「いつもどおり」(宮間)という福元の完璧なセーブが噛み合ったのだから、そうそう点をとられるものではなかった。

「Belleカップ、マリーゼフェスタが終わった後も、何試合か練習試合をこなして、そこで出た課題を修正している途中です。まあまあです。まだ1試合終わっただけなんでこの後どうなるかわかりませんし、1試合1試合頑張っていきたい」(福元)

 勢いのついたチームは、第2節で浦和レッズレディースからも勝ち点を奪い取り、第3節終了現在2勝1分け。降格争いどころか、優勝戦線をかき回している。


(INACレオネッサ) (岡山湯郷Belle)
GK: 海堀あゆみ GK: 福元美穂
DF: 角田英子、藤村智美、田村奈津枝、ジナ DF: 安田邦子、城地泰子、保手濱理恵、津波古友美子
MF: 那須麻衣子、原歩、川澄奈穂美(H.T/柳井里奈)、米津美和、プレチーニャ MF: 田畑沙由理(88分/有町紗央里)、松田望、加戸由佳、宮間あや
FW: 鈴木智子 FW: 中野真奈美、田中静佳
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