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 webnews 08/05/31 (土) <前へ次へindexへ>
小気味良い動きを見せていた、有吉佐織だったが無念の負傷リタイアとなった。
アジアの頂点へ、そして北京のメダルへ。
AFC女子アジアカップ ベトナム2008キャンプレポート ニューフェイスの挑戦状


取材・文/西森彰

 美作合宿に参加したなでしこジャパンの延べ29名のうち、五輪とW杯のどちらも経験していない選手は10名に及んだ。実にチームの3分の1を占めている。

 東アジア選手権終了後のキプロス遠征は、若手選手の名前が並んだ。澤穂希(日テレ・ベレーザ)らが抜けた選出リストを見ながら、私は佐々木監督に「『ネクスト・なでしこジャパン』の意味合いが濃かったと思いますが……」と質問した。「いや、先の話じゃなく『現・なでしこジャパン』の底上げですよ」との答えが返ってきた。ユース年代も見てきた指揮官は、若手の潜在能力に相当な手ごたえを感じているのだろう。



 この抜擢に彼女たちもしっかりと応えた。

 年明けのなでしこチャレンジプロジェクトでは、合同練習中の緊張感薄い内容を叱られた選手もいた。しかし、シーズンが開幕し、女子アジアカップ直前のキャンプに呼ばれたということ。そして、絞り込まれた五輪候補のリストに自分の名前が残っていたということ。今回のキャンプでは上田栄治女子委員長をして「常連組ではない選手たちが、チームに良い競争意識を与えている」とまで言わしめた。

 常連組も、後ろから追走する後輩たちを、正々堂々、ピッチの中で迎え撃った。ほとんど初召集となった日本体育大学の有吉佐織(負傷で最後にチームを離脱)は、当初、意思疎通などを含めてピッチ外の部分で難しいところがあるかも知れないと考えていた。だが「自分が考えていた雰囲気とは違った」。

「やっぱり、ここに来る前は『ちょっと怖いところ』というイメージがあったんです(笑)。それが、実際は全然違っていた。私は今回、澤さんと同室にさせていただいたんですが、いろいろわからないことがある私に気を遣ってくれて。それが嬉しかったです」

 逆に言えば、そこが「まだまだ、あなたたちには負けないよ」という余裕の為せる業かもしれない。最終的に23名の枠から漏れたのは天野実咲、長船加奈、永里亜紗乃。負傷した3名を除けば、全て若手組に組み分けられる選手たちだった。



熊谷紗希は、外国人選手の高さにも真っ向勝負を挑む。
 最初のふるい落としに生き残った選手は、モチベーションをさらに上げている。

 北京五輪で日本のグループGには、ニュージーランド、アメリカ、ノルウェーが入ってきた。いずれの国も長身の選手が揃っている。迎え撃つ日本の4バック、特にセンター2枚には高さで簡単に負けないことが要求される。現時点でレギュラー組の池田浩美、岩清水梓は、人に強いタイプの選手だが、連戦を考えるとこのふたりで大会を戦い抜くことは不可能、必然的に「第三の女は誰なのか」がクローズアップされた。

 これまでの実績、序列から言えば、矢野喬子(浦和レッズレディース)になるはずだった。彼女の負傷離脱は、女子アジアカップだけを考えれば痛い。しかし、五輪まで睨めば、新戦力登用の機会が生まれたとも言える。

 代表入りを争うライバルたちにとっては、もちろんチャンスだ。

 チャレンジャーのひとり、熊谷紗希は宮城県・常盤木学園高校に通う高校生。MFで選出されている後藤三知とは高校でもチームメートだ。今年の1月に行われた全国女子ユース選手権では、ふたりのゴールで日テレ・メニーナに逆転勝ちを飾った。

「他のなでしこジャパンの選手に比べて、まだまだ経験不足の面があると思います。でも、自分としては、自分の長所、負けたくない気持ちを見せて、北京に出られる選手になりたいと思います」

 彼女の「長所」は、恵まれた体格だ。今回召集された全フィールドプレーヤーで最高の171センチ。話を聞くために正対してみたが、公式発表されている数値以上にも感じた。

「技術はありませんが、体を張ったり、チームに活気の出るプレー、盛り上げるプレーができる。それが、自分の良いところだと思っています。高さについては、負けたくないです。相手が欧米の選手であっても、高さでは絶対に負けたくない。それくらいの気持ちでやっています」

 20日(火)午後の練習でも「チームを盛り上げるプレー」は見られた。セットプレーでヘディングシュートを外すと大声を上げて悔しがる。そして、次の瞬間、猛ダッシュで自分のポジションに戻る。疲れから、全体的に弛緩した空気の漂っていた時間帯だったので、余計にその姿が目立っていた。



川澄奈穂美には、サイドのスペースでどんどん仕掛けてほしい。
 目新しいメンバーの中では、川澄奈穂美(INACレオネッサ)の動きも目を引いた。代表ではサイドアタッカーの役割を期待されている。膝につけられたバンテージは「ちょうど1年前に前十字靱帯をやったんですが手術も済んで、今は保護的な意味でしているだけ。今では何ともありません」。

「今まで大学サッカーでやっていて、いろいろな部分でレベルの違いがありました。自分の通用する部分を出しつつ戦っていきたいと考えています。体も小さいですが、ウィークポイントを意識しすぎて委縮するよりは、ストロングポイントを出していきたいと思っています。

 川澄が口にするストロングポイントは、自他共に認める、ボールを持った時の仕掛けのスピード。大学時代は、完全に頭ひとつ抜けた存在で、コンディションがまともなら前を向いた時には手がつけられなかった。なでしこリーグで五指に余るクラブがオファーをかけたのも、そのあたりを買ってのこと。

 ルーキーとして臨む今シーズンは、途中出場が多い。相手がバテているところで自ら仕掛けるジョーカー役。INACの田渕径二監督からは、それを期待されている。

「リーグのようにラスト30分から使ってもらうと、相手が疲れていることもあり、自分のスピードを活かせます。ただ、合宿に来てからは(他の選手と同じフルタイムで練習するので)、そういう特徴を出しきれていないというのがあります」

 川澄のようなプレースタイルだと、周りのレベルが上がれば上がるほど、ストロングポイントを出し難くなる。それは本人も感じている。それでも高校から大学、大学からなでしこリーグと、ステージが上がっても輝きは衰えない。ユニバーシアードとは言え、国際舞台のプレーにもあっさりと順応し、結果を出している。もっと自信を持っていい。

「初めて招集されたので、手を抜いていたら絶対にメンバーに入れない。夢で終わらせたくないし、必ず18人に残れるように頑張りたいと思います」

 川澄は、生き残りをかけて、タッチライン際で仕掛ける。



 鮫島彩、海堀あゆみらも含めた士官候補生には、ここから18人に入るための戦いが待っている。矢野ら今回のメンバーを外れた者は、巻き返しのチャンスを狙っているだろう。山口麻美(ウメオIK・スウェーデン)のような「海外組」もいる。アジアカップは、五輪代表の入試会場でもあるのだ。

 はたして、レギュラーに抜擢されるようなシンデレラガールは出現するのだろうか?
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